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第28話
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ゴールディアは時折両親から、そしてビュワード本人からの手紙で実家の様子を知る度にため息をついていた。
こちらの学院には未だ友人がいない。
どうやら恐れられているらしい。
父アクシミリオが学長や教師たちの行いを教育省に報告したことで、学長たちはビュワードに慰謝料を払い、学院を去ることを命じられて、学院の教員たちの殆どが入れ替えられた。
学長が離れるにあたり、売りに出された学院はミリタス侯爵家が買い取り、なんと今の学長はアクシミリオ・ミリタスその人となったのだ。
教員はアクシミリオの伝手で掻き集められたミリタス派ばかり。うっかりゴールディアに近寄ってトラブルにでもなったら、大変なことになるだろうと。
それでも腐ったり寂しがったりはしないゴールディアは、好きなことに好きなだけ時間を使えることを楽しんだ。
時々友人たちとの女子会が恋しくなることを除いて。
学長と教員が入れ替わったことで、いいこともあった。
学院に漂っていた澱んだ空気は一掃され、公平公正な評価が受けられるようになったと喜ぶ生徒がかなりいたのだ。爵位の低い者や経済的に恵まれない家の者が多いというのは、ようするにそういうことなのだろう。
「本当に、学長酷かったのね」
成績すら金のある者に融通していたのだから、呆れたものだ。
今まではどれほど抗議しても学長たちが奪い、他の者に渡したものは返してもらえなかった。でももう、そんな不正は誰にも許されなくなったのだ。
学長になったアクシミリオは、元からいた教員の中から任命されて日の浅い者だけを残すことにした。
理由は染まりきっていないから。
そうして弾いていくと僅かな人数しか残らなかったが、ミリタス領で教育を受けて教師になった者たちが駆けつけ、生まれ変わった学院は順調に滑り出した。
トリードと親しくしていた生徒たちが、以前に比べると目立たぬよう大人しく過ごしているくらいで。
壁に張り付かんばかりに隅を歩く、トリードの親友だった男を窓から見ながら、またため息が出た。
「ゴールディア様!」
「ジェラル先生、ごきげんよう」
「ごきげんよう。どうなさったのですか」
「お姿をお見かけしたもので」
用はないらしい。
ジェラルもアクシミリオが支援した者の一人で、実はゴールディアの家庭教師もしていた時期がある。
いくつかの貴族家を掛け持ちし、実入りはいいが、貴族の数人だけの子を見る家庭教師より、たくさんの子供を育てたいと、学校での働き口を探していた。
そんな時、遠い所ではあったが、新たにミリタス侯爵が学長になった学院からの募集が出たのだ。いの一番で手を挙げたと、本人が自慢気にゴールディアに話してくれた。
「またぼっちでランチですか?寂しいなあ。職員室にくれば私もエルミもシルヴィアもゾーラもいるのに。みんなゴールディア様とのランチなら喜びますよ」
「あのね!ただでさえお父様が学長になっちゃって、みんなから引かれてるのに、この上教師たちとつるんでるなんて噂が立ったら、引かれるどころじゃ無くなるわよ!」
ツンツンしながらジェラルに食ってかかった。
「それに別にひとりでランチしたって、寂しくもなんともないんだから、余計なお世話っ!」
こちらの学院には未だ友人がいない。
どうやら恐れられているらしい。
父アクシミリオが学長や教師たちの行いを教育省に報告したことで、学長たちはビュワードに慰謝料を払い、学院を去ることを命じられて、学院の教員たちの殆どが入れ替えられた。
学長が離れるにあたり、売りに出された学院はミリタス侯爵家が買い取り、なんと今の学長はアクシミリオ・ミリタスその人となったのだ。
教員はアクシミリオの伝手で掻き集められたミリタス派ばかり。うっかりゴールディアに近寄ってトラブルにでもなったら、大変なことになるだろうと。
それでも腐ったり寂しがったりはしないゴールディアは、好きなことに好きなだけ時間を使えることを楽しんだ。
時々友人たちとの女子会が恋しくなることを除いて。
学長と教員が入れ替わったことで、いいこともあった。
学院に漂っていた澱んだ空気は一掃され、公平公正な評価が受けられるようになったと喜ぶ生徒がかなりいたのだ。爵位の低い者や経済的に恵まれない家の者が多いというのは、ようするにそういうことなのだろう。
「本当に、学長酷かったのね」
成績すら金のある者に融通していたのだから、呆れたものだ。
今まではどれほど抗議しても学長たちが奪い、他の者に渡したものは返してもらえなかった。でももう、そんな不正は誰にも許されなくなったのだ。
学長になったアクシミリオは、元からいた教員の中から任命されて日の浅い者だけを残すことにした。
理由は染まりきっていないから。
そうして弾いていくと僅かな人数しか残らなかったが、ミリタス領で教育を受けて教師になった者たちが駆けつけ、生まれ変わった学院は順調に滑り出した。
トリードと親しくしていた生徒たちが、以前に比べると目立たぬよう大人しく過ごしているくらいで。
壁に張り付かんばかりに隅を歩く、トリードの親友だった男を窓から見ながら、またため息が出た。
「ゴールディア様!」
「ジェラル先生、ごきげんよう」
「ごきげんよう。どうなさったのですか」
「お姿をお見かけしたもので」
用はないらしい。
ジェラルもアクシミリオが支援した者の一人で、実はゴールディアの家庭教師もしていた時期がある。
いくつかの貴族家を掛け持ちし、実入りはいいが、貴族の数人だけの子を見る家庭教師より、たくさんの子供を育てたいと、学校での働き口を探していた。
そんな時、遠い所ではあったが、新たにミリタス侯爵が学長になった学院からの募集が出たのだ。いの一番で手を挙げたと、本人が自慢気にゴールディアに話してくれた。
「またぼっちでランチですか?寂しいなあ。職員室にくれば私もエルミもシルヴィアもゾーラもいるのに。みんなゴールディア様とのランチなら喜びますよ」
「あのね!ただでさえお父様が学長になっちゃって、みんなから引かれてるのに、この上教師たちとつるんでるなんて噂が立ったら、引かれるどころじゃ無くなるわよ!」
ツンツンしながらジェラルに食ってかかった。
「それに別にひとりでランチしたって、寂しくもなんともないんだから、余計なお世話っ!」
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