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第27話
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メルダ夫人のビュワードへの献身のおかけで、二ケ月ほどで体調は回復した。窶れていた顔もそれに伴い、健康そうな肌色に変化している。
勉強の家庭教師の他、マナーや常識、剣術など今までアニタに取り上げられていたことを片っ端からメルダが提供し、ビュワードは貪欲に吸収していく。
授業が終わる度に家庭教師たちの礼賛にあうビュワードは、照れくさそうにもじもじするがとてもうれしそうだと、ビュワードに付いている侍従のボレンがメルダに囁いた。
「ビュワード様って本当に優秀なのね。療養が終わっても手放したくないくらい」
アクシミリオとメルダは、家庭教師たちが提出した成績表を見て、その素晴らしさにため息を漏らしていた。
「いっそゴールディアの婿に迎えるか?」
「それっ!すっごく素敵だわ!あの子には私、もっとしてあげたいことがたっくさんあるのよ」
「ははは、すごい気に入りようだな」
「あら、それは貴方もでしょう?そうじゃなければうちで静養させるなんて言わないと思うもの」
ふふふと笑いあう、それは腹の底を見せない笑いだった。
─こんなにも優秀なんだ、私の右腕として育てたい─
アクシミリオはそう考えて。
─あの美しい少年にお母様って呼ばれたいわ!想像しただけで蕩けそう!─
メルダはそう考えて。
それぞれの思惑を秘め、にっこり微笑んだ。
侯爵夫妻の考えなど露ほども知らず、ビュワードはミリタス侯爵家での時間を堪能している。
ここに来たばかりの頃はよく悪夢にうなされていたが、その度に侯爵夫妻が代わる代わる寝室に来ては、手を握り頭を撫で、時には抱きしめてくれた。
食事も服も勉強も必要最低限ではなく、思いのままに与えてくれる。
遠慮していたらメイドのランが、侯爵夫妻は領内の恵まれないこどもたちに多くの支援をしているから気にするなと教えてくれた。
そうか。みんなにもやっているのか・・・
自分が特別なわけではないと知って、ほっとしたような寂しいような気がしたので、預かってもらっているだけの身だと自分を戒めた。
それでも優しいメルダに褒められるとうれしくてたまらなくなり、アクシミリオがビュワードにどう成長してほしいかと話すのを聞くと、期待に応えてアクシミリオに喜んでもらえるようになりたいと頑張ることができるのだ。
「ゴールディア様が羨ましいな」
あの別れ際。
実父ドレドも、それまでになく気にかけてくれ、ミリタス家の馬車をいつまでも見送っていてくれた。
しかし、こう言ってはなんだが、ビュワードは父にまったくなんの感情も湧かないのだ。
むしろ、ミリタス侯爵夫妻のほうが生き別れた親に再会したような気持ちを抱かせた。
「いつかは帰らねばならないんだな、スミールに・・・」
勉強の家庭教師の他、マナーや常識、剣術など今までアニタに取り上げられていたことを片っ端からメルダが提供し、ビュワードは貪欲に吸収していく。
授業が終わる度に家庭教師たちの礼賛にあうビュワードは、照れくさそうにもじもじするがとてもうれしそうだと、ビュワードに付いている侍従のボレンがメルダに囁いた。
「ビュワード様って本当に優秀なのね。療養が終わっても手放したくないくらい」
アクシミリオとメルダは、家庭教師たちが提出した成績表を見て、その素晴らしさにため息を漏らしていた。
「いっそゴールディアの婿に迎えるか?」
「それっ!すっごく素敵だわ!あの子には私、もっとしてあげたいことがたっくさんあるのよ」
「ははは、すごい気に入りようだな」
「あら、それは貴方もでしょう?そうじゃなければうちで静養させるなんて言わないと思うもの」
ふふふと笑いあう、それは腹の底を見せない笑いだった。
─こんなにも優秀なんだ、私の右腕として育てたい─
アクシミリオはそう考えて。
─あの美しい少年にお母様って呼ばれたいわ!想像しただけで蕩けそう!─
メルダはそう考えて。
それぞれの思惑を秘め、にっこり微笑んだ。
侯爵夫妻の考えなど露ほども知らず、ビュワードはミリタス侯爵家での時間を堪能している。
ここに来たばかりの頃はよく悪夢にうなされていたが、その度に侯爵夫妻が代わる代わる寝室に来ては、手を握り頭を撫で、時には抱きしめてくれた。
食事も服も勉強も必要最低限ではなく、思いのままに与えてくれる。
遠慮していたらメイドのランが、侯爵夫妻は領内の恵まれないこどもたちに多くの支援をしているから気にするなと教えてくれた。
そうか。みんなにもやっているのか・・・
自分が特別なわけではないと知って、ほっとしたような寂しいような気がしたので、預かってもらっているだけの身だと自分を戒めた。
それでも優しいメルダに褒められるとうれしくてたまらなくなり、アクシミリオがビュワードにどう成長してほしいかと話すのを聞くと、期待に応えてアクシミリオに喜んでもらえるようになりたいと頑張ることができるのだ。
「ゴールディア様が羨ましいな」
あの別れ際。
実父ドレドも、それまでになく気にかけてくれ、ミリタス家の馬車をいつまでも見送っていてくれた。
しかし、こう言ってはなんだが、ビュワードは父にまったくなんの感情も湧かないのだ。
むしろ、ミリタス侯爵夫妻のほうが生き別れた親に再会したような気持ちを抱かせた。
「いつかは帰らねばならないんだな、スミールに・・・」
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