【完結】虐げられた伯爵令息は、悪役令嬢一家に溺愛される

やまぐちこはる

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第24話

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 その声が聞こえたのだろう、トリードが唇を噛み締めて俯くのを見ていたアクシミリオが、両手を上げながら壇上に飛び乗った。

「静まりたまえ!私はアクシミリオ・ミリタス、ビュワード君の後見人となったミリタス侯爵だ。今その辺で怒鳴った者、手を上げたまえ」

 アクシミリオは正確に声の主を指差した。

「私の娘ゴールディアは、ビュワード君を一目見ておかしいと感じたと申していたが、君らは何年も同じ学舎にいて彼の異変に気づかなかったのかね?ビュワード君は侍従もメイドも付けられず、一人で水で湯浴みをさせられ、服の洗濯や繕い物も自分でやるしかなかったそうだ。ずいぶんと酷い姿に、娘はすぐ調べるよう私に連絡してきたが、君らはビュワード君の姿を見て感じることはなかったのか?あったとしたら、誰か一人でも手を差し伸べた者はいないのか?」

 そう問われると、生徒たちは次々と下を向いてしまう。
 誰も気づかなかった。正確にはトリードの言葉に眩まされて、真実を見ようとしなかったから気づけなかったのだ。


「ひとを責めるのは簡単だが、今君たちがすべきはそれではない。まるで自分は少しも悪くないような顔をしているが、見て見ぬふりをしたことを恥ずべきではないか?弱き者を守るのが貴族だとその胸に刻んでおくがいい」


 アクシミリオの言葉は生徒たちの胸に沁み込んでいく。反論しようもなく、恥ずかしくて顔をあげることができない者も沢山いた。

「スミール伯爵」

 ドレドを再度壇上に立たせると、アクシミリオがポンと背中を押してやる。
 ゆらりと拡声器の前に立ったドレドは、生徒たちに再度語りかけた。


「トリードは・・・罰として学院を辞めさせ、当面謹慎とします。

皆さんよく覚えておいて下さい。
人を尊重しない者は、尊重されない存在となります。人を貶めようとする者は、巡り巡って自ら落ちるものなのです。先程も話したとおり、次男ビュワードには何の罪もありません。復学の際は暖かく迎えてやって下さい」


 ドレドはアニタに操られて道を誤ったトリードを、なんとか更生させることができないかと思案していたが、少なくとも今のところ打つ手はない。廃嫡は免れなくとも貴族に残してやることはことはできないものか、自身が考える時間を設けるために謹慎させることにした。
 しかしそれも、今隣りで項垂れているトリードが真摯に反省しなければどうしようもないが。






 ─懺悔は、まあいいけど─

 生徒たちに交じりトリードの告白劇を見ていたゴールディアは、どうせトリードは誤魔化して話すに違いないと考えていたが、予想よりは正直に話していた。
その様子を見るからに、渋々という態度のトリードをスミール伯爵が抑えているようだ。何をどう話すかは、スミール伯爵が決めたのだろう。

 ─それにしても─

 こんな大事になるまで、何故誰一人手を打たなかったのかと、ゴールディアは首を傾げていた。
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