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第23話

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 学長室での話し合いが終わると、学長に呼び集められた教師たちが生徒を講堂に集合させた。

 壇上には、項垂れたトリード・スミールとよく似た男性が立っており、その横にいるとてつもなく険しい顔をした学長がトリードを睨みつけている。

「なんだ?何があった?」
「さあ?スミール様が何かやってしまったのかな?」
「それならスミール様ではなくて、例の弟のほうじゃないのか」

 ざわめきの中からそんな声が聞こえて、トリードは消えてなくなりたいと言わんばかりに体を縮こませた。


「皆、集まったか?今日はこちらにいるスミール伯爵令息から重大な話があるそうだ。静かに最後まで聞くように」

 それだけ言うと、学長は拡声器の前にトリードを立たせた。

 何を話すのだろうかと皆が凝視するが、トリードはなかなか口を開こうとしない。業を煮やしたドレドが隣りでドンと足を踏み鳴らすと、壇下に居並ぶ生徒たちがビクリと動いた。



「あ、あの、私はトリード・スミールです。私の弟の噂を聞いたことがある人も多いと思うのですが・・・」

「そうそう、暴力振るったり酷い方らしいわよね」

 誰かが囁いた声が小さく響いた。



「その、あの、じ、実はそれは、う、嘘で」


 生徒たちは目を見開いた。


「ぼ、暴力をふ、ふるっ・・のは、わ、私で」

 壇上を見上げる生徒たちの口があんぐりと開いていく。


「何だって?嘘だと?暴力振るったのは弟じゃないのか?」

「「「ええーっ!」」」


 額からダラダラと汗を流し、青を通り越してもはや白くなったトリードは、涙を浮かべながら真実を話した。


「最低だ!なんて奴だ!」
「ひ、酷いわ、優しい方だと憧れていたのにっ」


 様々な罵声が飛び交い収拾がつかない講堂内に、壇上に上がっていたドレドが一際大きな声で注目を集めた。

「私はトリードとビュワードの父、ドレド・スミールと申します。この度は家族がお騒がせし、お詫び申し上げます」

 腰を真直角に折り曲げて礼をすると、トリードも慌てて頭を下げた。

「先程愚息が申しましたことは、お恥ずかしながらすべて真実です、次男は何の咎もないにも関わらず・・・家族から貶められておりました。今回発覚したことで、我が家は激しい誹りを受けることと存じますが、次男が静養から戻り、復学致しましたらどうか暖かくお迎えくださるようお願い致します。
ビュワードは、言われていたことの何一つとしてやっていないのです。無実なんです。私がしっかりと家族を見ていなかったため、可哀想なことをしてしまいました・・・」

 ドレドはほろりと涙を溢し始めた。

 大人の貴族、伯爵ともあろう者が人前で泣いていることに、生徒たちは動揺を隠せないようだ。静寂は破られ、ざわめきが酷くなる。

 生徒たちの声の中から、トリードを怒鳴りつける者がいた。

「この嘘つきめ、よくも私たちを騙したなっ!」
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