【完結】虐げられた伯爵令息は、悪役令嬢一家に溺愛される

やまぐちこはる

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第22話

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「おわかりになったでしょう。人気者?それはトリードがビュワードから奪い取った物に過ぎません。出来の良い弟を、ろくでなしの出来損ないに貶めて、自分がそれを掠め取ったのです」

 苦しそうにドレドが告げた。

「そして学長、教師の皆様もその共犯者だ」

 アクシミリオは、その場に居合わせたすべての者から未来を奪うだろう一言を放った。



「い、いや、共犯とは人聞きが悪いのではございませんか」

 保身がチラつく学長が異を唱えたが、アクシミリオがその手を緩めることはない。

「いいえ、皆さんは実に悪質な共犯者ですよ。私の娘ゴールディアは一目で彼が異常な状況に置かれていると察知し、私に調べてやってくれと言ってきたのですから。
未成年の娘にでもわかるようなことを、皆さんがわからないわけがないでしょう?
今後は私がビュワード君を後見し、彼の社会復帰を手伝うと決めましたから、もう二度と彼がこんな目に遭わされることもなくなりますがね」


 教師たちは嫌な予感しかない。
 ミリタス侯爵家が後見人となったら、この件を追及するのは、後ろめたい気持ちを持つスミール伯爵ではなく、ホワイトナイトとしてビュワードに手を差し伸べたミリタス侯爵となる。
 ミリタス一族が正義感の強いお節介なのは有名だ。


 ─厄介なことになった─

 学長は嘘を吐き続けたトリードを睨みつけた。



「暫くは我がミリタス侯爵家にてビュワード君を静養させると、スミール伯爵とは覚書も交わしておりますが、勉強が遅れることがないよう最高の家庭教師をつけるので、そこはご心配なく。
ではスミール伯爵、生徒たちにも説明を」

 学長はハッとした。
 生徒たちにこんな話をされたら、内々で済ませることはできなくなってしまう。

「侯爵様、どうかそれだけはご勘弁ください、お願いします!」

 こんなところにゴールディを編入させた調査不足、自身の甘さをいつにもまして痛感したアクシミリオは頷こうとはしなかった。

「学長たちはご自身の子息次女が同じ目に遭ったとして、その学長や教師たちを許してやるのかね?」
「いや、私のこどもはこんな目には決して遭わせたりしませんよ!」

 つい反論してしまった学長にはツッコミどころが満載だ。

「ほおお、自分の子には決して遭わせたくないようなことなのですな。それなのに余所の子息ならよいとでも仰るのですか?」

 蛇に睨まれた蛙のように学長は固まった。今更失言だったと気づいても、口から放たれた言葉を消すことはできない。

「とにかく、貴族のこどもの虐待は王宮に届けることが決められている犯罪・・だ。くれぐれも隠蔽など期待しないように」

 アクシミリオの最後通牒に、トリードやビュワードと関わりがあった学長、教師たちはがっくりと項垂れた。
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