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第20話

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 ミリタス侯爵アクシミリオは、早馬で妻メルダに先触れを出すと、ビュワードを馬車に乗せてさっさと本邸に送り出し、自分はスミール伯爵とトリードが学院で謝罪を行う場に足を向けた。
 金さえ積めば、他の学院が嫌がったゴールディアも引き受けるような学長なのだ。裏があることに気づくべきだったと、密かに自分の詰めの甘さも反省しており、大切なゴールディアをこのまま預けていて良いものかを見極める為にも行かなくてはと考えていた。





 そのゴールディアはビュワードがおらず、学院の中庭でひとりポツンとランチを食べているが、何となく物足りない。
 早くいろいろと解決し、また楽しく・・・いや、ビュワードは全然話さずひたすらもぐもぐと食べ続けていたから、楽しかったかはよくわからないのだが、友人が一人もいない今の学院では、ビュワードとランチを食べるようになって気が紛れることも多かったのだ。

 ─スミール様、びっくりするほどきれいな方だったわね─

 隅々まで汚れを落とし、髪を切り、清潔で仕立ての良い服を纏って現れたビュワードは、キラキラとして天使のようだった。
 背筋を伸ばして、父の言うように堂々と歩いたら、学院の令嬢たちが群がるかもしれない。
だってあんなに素敵なのだもの!



「やだ私ったら!何を考えているのよ、もう」


 何となく気温が上がってきたような気がして、パタパタと手のひらで顔を扇ぐ。
風が火照った顔を冷ましてくれたようで、ホッとした表情を浮かべた。






 アクシミリオはスミール伯爵とトリードと、学院前で待ち合わせてともに学長と主要な教師たちに面会した。

「これはミリタス侯爵様まで、一体どういうことですかな」

 予定外の訪問者に副学長が訊ねたが。

「話はスミール伯爵から申す」

 アクシミリオはただ見守るために来ているのだ、話す必要はない。
視線でドレドを促してやると、ドレドが重い口を開いた。

「本日は愚息トリードと謝罪に伺いました」

 スミール伯爵がその手でトリードの頭を押し下げ、ふたりで深々と頭を下げる。

「はて?スミール様のご令息に謝って頂くようなことはなかったと存じますが。何しろ優しい弟思いのご令息として学内では人気も高い!ご両親にとってさぞ自慢のご子息でしょう」

 教師の一人に褒められて、居心地悪く体を竦めるトリードをドレドが睨みつけ、先を促す。

「トリード!自らすべてを先生方に話しなさい。包み隠さず正直に」

 青褪め小さく震えるトリードの様子に、教師たちも漸く楽観的な状況ではないのかもしれないと気がついた。
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