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第19話

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 ─おや?─

 その瞬間アクシミリオは、ゴールディアとビュワードが寄り添う姿がとても似合っていると感じた。このような時でなければ冷やかしたかもしれない。

 大富豪であるミリタス侯爵家のゴールディアと婚約したがる者は多いが、前の学院を辞めさせられてからは、家格に釣り合わないような者から、傷物をもらってやるから持参金と支援をしろなどという失礼な申込みが来るようになり、良い話はとんと消え失せてしまった。
 今すぐどうこうと焦っているわけではないが、今回のことでアクシミリオががっちりとその尾を踏んだスミール伯爵家との縁組なら悪くない、いや素晴らしい考えじゃないか!と僅かな時間で考え、知らぬ間に笑みを浮かべていた。

「トリードもアニタと連れ帰り、謹慎させろ」

 ドレドは自分の護衛を呼ぶと、アニタが乗せられた馬車に一緒に乗せて行くよう指示を出す。

「おまえの今後はこれから考えるが、今までのようにはいかないと覚悟するように」
「い、いやだ父上!私もあの女に騙されて」

 叫ぶトリードを護衛騎士が抱えて出て行くと、食堂に静けさが戻る。


「思っていたより時間がかかったが、冷めてしまったかな?」


 なんとなく間延びしたような、料理を心配するアクシミリオの声にその場の緊張感がやっと緩むと、給仕はにこやかに答える。

「熱々でお出しできるよう、準備しております」






 アクシミリオとゴールディア、そしてドレドとビュワードの四人で静かな晩餐が始められた。

「それにしても君の姿には驚いたよ。その方がいい、ずっといい。これからはいつもそうしていたまえ」
「はい、ありがとうございます」

 アクシミリオから褒められて答えたビュワードのそれは、小さなか細い声だった。

「まず君は自信を取り戻さねばならんな。ふむ、我が領地に来てはどうだ?ゴールディアとふたりでここに置いておくわけにもいかんしな」
「いいと思いますわお父様。ランチの友だちがいなくなるのは寂しくなりますけど」
「い、いえ、そのようなことまでしていただくわけには」

 俯いて聞き逃しそうな小さな声に、アクシミリオはニヤリと返す。

「まずはそういうところだな。顔を上げて堂々と話せるようになってもらいたいのだよ、どうせなら。やはり暫く休学して、我が領地に行こう。休む間は家庭教師をつけるのでよろしいな、スミール伯爵?」
「勿論でございます。どうかビュワードのことをよろしくお願い致します」

 家族から醜いアヒルのようにあしらわれていたビュワードは、こうしてミリタス侯爵家へ連れて行かれることになった。
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