18 / 63
第18話
しおりを挟む
アニタが使用人たちに、ビュワードの湯浴みも洗濯もさせなくなり、どんどん薄汚れていっても、アニタとトリードの言葉を信じた者たちは、ビュワードが悪いのだから仕方がないと都合よく思い込んだ。
ドレドも。
編入してきたゴールディア・ミリタスだけがビュワードに起きている異変を見つけ出したのは、先入観なくその姿を見ることができたからかもしれない。
「おまえがやったことは、ビュワードを貶め、深く傷つけただけでなく、我がスミール伯爵家がこどもを虐待する貴族だと知らしめた。貴族学院の教師も生徒たちも綿密に騙し、ビュワードの偽の姿を信じ込ませるなど、とんでもないことをしてくれたものだ。もちろんおまえの実家にも知らせるから覚悟しておけ!」
見たことがないほどの怒りを秘めたドレドに、今更だがアニタはガクガクと震え始めた。
「侯爵家の皆様はおまえのように不愉快な者と晩餐などなさりたくないだろう。一足先に屋敷に戻り、実家から迎えが来るまで謹慎とする」
「そ、そんな」
ドレドの合図で、普段ドレドと商談に回っている部下たちがアニタを連れて出て行った。
見送ったドレドがアクシミリオとゴールディアに頭を下げると、今度はトリードと向き合う。
「ち、父上、違うんです私は、はは、母上にそうしろと言われて」
なんとか上手く言い逃れようとしている長男に、ドレドは悲しそうな残念そうな顔をした。
「最初はそうだったかもしれない。しかし、既におまえは自分自身で物を考えることができる年齢だ・・・。屋敷で弟に暴力を振るい虐めていた上に、学院でその罪を被せて貶め、成績と友人を奪うのは楽しかったか?」
逃げられないと感じ取ったトリードは、拳を握りしめ微動だにしない。
「おまえにはまず、学院で本当のことを明らかにしてもらう。勿論その場には私も立ち会おう。私とともに、学院の皆様を謀ったことを謝罪するんだ」
「そ、そんなことをしたら今度は私がみんなから酷く言われてしまいます」
思わず口走ったトリードに、ドレドの怒りが爆発した。
「おまえはっ!それを恐れるのか?無実の弟をそういう立場に追い込んだおまえが?どの口でそれを言うのだ!」
叫んだと思うと駆け寄り、トリードの顔に拳を叩きつけた。
ドスン!
いきなり殴られたトリードは、そのまま吹っ飛び、壁に顔を打ちつけて転がった。
起き上がると額が切れて、血が流れ始めている。
感情に任せて手が出てしまったが、侯爵家の食堂だったことに気づいてハッとしたドレドは、青い顔で謝罪した。
「も、申し訳ありません、侯爵閣下の御前でしたのについ自制できず」
「ああ、私は気にしないが」
アクシミリオが娘を見ると、目の前で起きた暴力に驚いたゴールディアが、ビュワードの腕にしがみついていた。
ドレドも。
編入してきたゴールディア・ミリタスだけがビュワードに起きている異変を見つけ出したのは、先入観なくその姿を見ることができたからかもしれない。
「おまえがやったことは、ビュワードを貶め、深く傷つけただけでなく、我がスミール伯爵家がこどもを虐待する貴族だと知らしめた。貴族学院の教師も生徒たちも綿密に騙し、ビュワードの偽の姿を信じ込ませるなど、とんでもないことをしてくれたものだ。もちろんおまえの実家にも知らせるから覚悟しておけ!」
見たことがないほどの怒りを秘めたドレドに、今更だがアニタはガクガクと震え始めた。
「侯爵家の皆様はおまえのように不愉快な者と晩餐などなさりたくないだろう。一足先に屋敷に戻り、実家から迎えが来るまで謹慎とする」
「そ、そんな」
ドレドの合図で、普段ドレドと商談に回っている部下たちがアニタを連れて出て行った。
見送ったドレドがアクシミリオとゴールディアに頭を下げると、今度はトリードと向き合う。
「ち、父上、違うんです私は、はは、母上にそうしろと言われて」
なんとか上手く言い逃れようとしている長男に、ドレドは悲しそうな残念そうな顔をした。
「最初はそうだったかもしれない。しかし、既におまえは自分自身で物を考えることができる年齢だ・・・。屋敷で弟に暴力を振るい虐めていた上に、学院でその罪を被せて貶め、成績と友人を奪うのは楽しかったか?」
逃げられないと感じ取ったトリードは、拳を握りしめ微動だにしない。
「おまえにはまず、学院で本当のことを明らかにしてもらう。勿論その場には私も立ち会おう。私とともに、学院の皆様を謀ったことを謝罪するんだ」
「そ、そんなことをしたら今度は私がみんなから酷く言われてしまいます」
思わず口走ったトリードに、ドレドの怒りが爆発した。
「おまえはっ!それを恐れるのか?無実の弟をそういう立場に追い込んだおまえが?どの口でそれを言うのだ!」
叫んだと思うと駆け寄り、トリードの顔に拳を叩きつけた。
ドスン!
いきなり殴られたトリードは、そのまま吹っ飛び、壁に顔を打ちつけて転がった。
起き上がると額が切れて、血が流れ始めている。
感情に任せて手が出てしまったが、侯爵家の食堂だったことに気づいてハッとしたドレドは、青い顔で謝罪した。
「も、申し訳ありません、侯爵閣下の御前でしたのについ自制できず」
「ああ、私は気にしないが」
アクシミリオが娘を見ると、目の前で起きた暴力に驚いたゴールディアが、ビュワードの腕にしがみついていた。
応援ありがとうございます!
11
お気に入りに追加
536
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる