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第14話

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 ミリタス侯爵家別邸、ゴールディアの屋敷に到着したアクシミリオは、すぐにビュワードを湯浴みさせるようにメイドに手配させ、医者と仕立て屋を呼ぶよう伝えた。
この数日着るために出来合いの服もサイズや枚数を多めに持ち込むように伝えて。
 ビュワードのすべてが整ったら晩餐にすると決めると、次は怒りに目を血走らせたドレドと執務室で今後の取り決めを行う。

「ご令息は私が後見しよう、文句はないな?」
「はい・・・」

 もうドレドはアクシミリオの言葉にイエスしか答えられなくなった。

「こちらが帰してもよいと判断するまでお預かりするが、その間の生活にかかる費用は」
「それは勿論スミール伯爵家にて支払いますので、漏れなくご請求下さい」
「うむ。まあ当然だ。それで、彼を虐待しておった者たちはどうするのだね?」

 ゴクリ!

 ドレドが喉を鳴らした。

 ─ここで間違えると大変なことになる─

 緊張のために汗を浮かべたドレドは、自身を落ち着かせるために一呼吸し、考えをまとめた。

「まず妻は離縁致します。妻が雇い、ビュワードに酷い行いをした使用人たちは全員解雇し、ビュワードに心を寄せてくれていた使用人たちを可能な限り呼び戻したいと考えております」
「何を今更。手遅れではないか?これほどの時が経っていては、皆他の職についているだろう?」
「は、はいっ。あの・・・その場合は、たぶん急に辞めさせられたと思いますので、詫びの金を払いたいと考えております」
「ふうむ。まあいいだろう」

 嫡男トリードに対しては、ドレドにはまだ迷いがあった。
腹違いの弟を虐待し、謂れなき汚名を着せ、暴力を振るっていたが、それは義母のせいでもある。そしてスミール伯爵家の正式な跡取り息子なのだ。

「して、長男にはどのような処罰を与えるのだね?」
「はい・・・。学院を休ませて、暫くは謹慎させようかと」

 それはアクシミリオの怒りに触れるに十分な甘い処置だった。

「では時を過ごしたら、そのろくでなしの出来損ないにスミール伯爵家を継がせるおつもりか?」

 低い低い声が部屋に響くと、ドレドはびくりとした。

 ─ろくでなしの出来損ない─

 それはいつも自分たちがビュワードに投げつけていた言葉だが、国内有数の富豪侯爵であるアクシミリオ・ミリタスが口にするととてつもなく重い。
 レッテルを貼られたのはビュワードではなく、自分たちが可愛がってきたトリードだと言うことも、見る目がないと指摘されているようで居た堪れなかった。
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