【完結】虐げられた伯爵令息は、悪役令嬢一家に溺愛される

やまぐちこはる

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第4話

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 ゴールディア・ミリタス侯爵令嬢は、本宅から遠く離れた学院に通うため、新たに買い求めたこじんまりとした屋敷に使用人たちと住んでいる。
 両親たちは領地の本宅にいて、今はまとまった休みのときしか会うことが出来ないのが寂しいが、使用人がいても初めての一人暮らし!ということで浮かれてもいた。

「ねえアダミー」

 父が北部行きに同道させてくれた執事に訊ねてみる。

「すごく痩せてて、服も頭もボロボロな令息ってどう思う?裾や袖が汚れていて擦り切れているのよ」
「そんなの貴族ではございませんでしよう、見間違い、または平民と存じます」
「見間違えなんかじゃないわ!それにランチも食べずにいるみたいなのよ、おかしいと思わない?」

 アダミーを覗き込むように訊ねてくるゴールディアは、いつになく真剣な目をしていた。

「そうですね。その方が本当に貴族だというなら・・・虐待の可能性もあるかもしれませんが」
「やっぱりそう思うわよね。お父様に頼んだら調べてくれるかしら」
「ゴールディア様のお願いでしたらすぐお調べになることでしょう。そのご令息を気に入られたのでございますか?」
「・・・あんまり見窄らしくて気の毒になってしまったのよ。それにね、手首に痣が見えたからてっきり学院の中でいじめられているのかと思ったのだけど、家族がしているとしたら、誰かが手を差し伸べなければ逃げようがないと思わない?」
 
 執事は注意深く、美しい主を見つめた。
前の学院で同級生を虐めたという不祥事を起こしたゴールディアだが、正義感がとても強く面倒見も良い。ただ加減がわからずにやり過ぎてしまっただけであったと、アダミーのみならず幼少からゴールディアを知る者は理解している。あの事件でゴールディアは加減を覚えたので、得難い機会だったと温かく見守っていた。


「ゴールディア様、まさかそのご令息をいじめに立ち向かえるよう、鍛えてやろうなんて考えてはいないでしょうね?」
「い、いやあね。そんなこと考えもしなかったわ。ただあまりに痩せこけていて、あんな姿なのに家族も学校も放置しているなんておかしいと思っただけ」
「・・・左様でございますか。では旦那様にお願いしてみましょうか」
「ええ、そうしてみて。あと明日からランチのサンドイッチを二人分いえ三人分くらい持たせてほしいの。目立たないように小ぶりな袋にたくさん詰めてね」

 そう言ったゴールディアに、やはり面倒見るつもりかとため息は出たが、まずは侯爵に調べてもらおうと一人で暴走しなかったことは大きな成長だと、アダミーはにっこりと微笑んで礼をした。
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