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 エルシドでやったように、メンシアでもプレオープンで旧知の貴族・・・セリアズ公爵やエンダライン侯爵夫妻、パルティアの友人ニーチェルたちを招待した。

「ああ!なんて素敵なのかしら!」

 窓からの景色にニーチェルから感嘆の声が漏れる。
テラスへの扉を開けると、全身で潮風を受けることもできるのだ。

「いつまででも眺めていられそうだわ」

 パルティアの母スーラも、うっとりとそう言った。

 料理はエルシドとは違い魚貝が中心。
新鮮な素材を使った様々なメニューに皆舌鼓を打つ。

「こんなに美味しいものばかり出されたら、私のような死にたがりももっと食べずには死ねないと思うようになるかも知れないな」

 そんなことを言うアレクシオスに、パルティアは驚愕する。

「う・・そ・・・、アレクシオス様、貴方まだそんなことを・・・」
「ん?ち、違う違う、今はもうそんなことこれっぽっちも思っていないよ!本当だ。私ではなく、あのときの私のような者でもこんな美味いものを食べたら、もっと食べたくなって死ぬ気が無くなりそうだと言いたかっただけなんだ!言葉が足りなかった」
「ああ、なんだもう!心配しちゃったわ」

 珍しいパルティアの砕けた言葉に、より近しさを感じたアレクシオスは愛おしさが募る。
その手に触れ、無意識に。
本当に無意識に心のうちを呟いた。

「パルティア様、これからもこうしてふたりで歩いていきたい」

 まるでプロポーズのような言葉に、パルティアは油が切れた車輪のように、カクカクと不自然な動きでアレクシオスに視線を向ける。

 ─えっ?今のは・・・─

 反応できずにいるパルティアと、自分の言葉が何を意図し、何をもたらしているか気づかぬアレクシオスに痺れを切らしたコーズが

「ゴホッゴホッゴホッ」

しつこく咳を繰り返して。

「ん?どうしたコーズ、おまえも喉の調子が悪いのか?」

 ─まったくまったくアレクシオス様ときたら、天然かあっ!!─

 コーズはぶんぶんと首を横に振って、懸命にパルティアに視線をやって見せては、アレクシオスに合図を送る。

「なんだ?首でも痛いのか?」

 ─ちっがーうっ!─

 とは言えないコーズが絶望の視線をアレクシオスに送った。
 きっとほぼ完璧なアレクシオスがライラに振られたのは、こういう鈍感さに違いないと思いながら。

「お茶が冷めますから、私淹れ直してもよろしいでしょうか」

 とうとう見かねたニーナが場面を切り替えにかかった。

 ハッとするパルティアの顔は赤い。

「そ、そうね。冷たいお茶もいいかもしれないけれど、熱いものを飲んでシャキッとしたいわ。ニーナお願い」

 その時のコーズのホッとした顔きたら。
のちのちまでニーナは、面白がってこの話を持ち出しては笑うのであった。
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