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 メンシアでゾロアが見つけ出した土地は、山の中でありながらほぼ平らに拓かれ、パルティアの希望に沿う温泉が近くにある場所だった。
 海が近いため、周囲の温泉はすべて塩を含む、大変に体を温めるものである。

「それで、この土地でも温泉は出るかしら?」
「はい、たぶん大丈夫でしょう」

 アレクシオスとパルティアを連れ、ゾロアが山を案内する。

「景色もほら、海が一望できて素晴らしいですよ」

 少し木を伐り払えば、その眺望はさらに広がる。部屋の窓から見る景色は静養する者を慰めるだろうと、パルティアにもわかった。

「よろしいと思いますけれど、アレクシオス様はどう思われますか?」
「素晴らしいと思う。私はここが良いな」

 にっこりとする、その顔を縁取る白金の髪がさらさらと風に流れて。

 ─アレクシオス様ってきれいすぎてずるい─

 そんなことを考えて、パルティアはまた頬を染めた。

 土地が決まるとまた、ダルディーンとミルツを呼ぶ。大工たちはもちろんゾロアの旧知の者たちで、かなり大きな建物の建築と、今後の永続的なメンテナンスを依頼されて大変な喜びようだったと、ゾロアがうれしそうに語ったのがパルティアの記憶に残った。

 ゾロアが紹介した、町に二つある小さな商会では求めているような上質なリネンやアメニティは手に入らないということで、これもパルティアたちが出資と、競合しないよう分野を分けて王都の商会を取り次いでやり、高級品も施設に納入できるよう道筋をつけてやった。

 物については目処が立ったのだが、人はなかなか見つからない。
 ゾロアに、仕事に就きたい女性を探してくれるよう頼み、集まった一人一人をメニアに面接させた。
平民ならではの言動もあるだろう、しかしそれは訓練でいくらでも直せるのだから、人となりを見るようにとだけ伝えて。
メニアはパルティアの信頼に応えようと、面談者の細部まで見逃すことなく、数名を選び抜いた。
 そこから先はテーミアの出番である。
メニアたちがパルティアに泣きついたように、テーミアの補助としてメニアがメンシアに行く度、女性たちが泣きつく。

「テーミア様が、厳しすぎるんですぅ」

 宥め、甘い菓子をこっそり渡して機嫌を直す。

「あのときのパルティア様って、こんな気持ちだったのね」

 メニアは幼かった自分を思い出し、くすくすと笑うと表情をきりりと引き締めて、また訓練に向かった。

 歯車がうまく回りだすと、事が進むのは早い。
温泉も無事に噴出し、エルシドと同じような施設をメンシアにも建て、無事開業に漕ぎ着けることが出来たのだった。
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