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「相談?パルティア様から頼られるのはうれしいな」

 アレクシオスは、並んで置かれた椅子を引いてパルティアを座らせると、隣りに座った。

「メニアたちにがんばってもらうのはもちろんですが、都会から静養に来る貴族が性格のよい者とは限りません。体調が悪く苛立っている者も多くいると思うんです。
護衛と、やはり貴族出身の支配人でもいた方がよろしいのかしらと思いまして」
「うん、そうだね。支配人はうちの執事から一人出しても良いよ。セリアズの者と言えばそれが執事でも歯向かったりしないだろうからね」
「助かりますわ!ではエンダラインからは護衛を数人とメイドを手配することにいたしましょう。護衛は今後ずっと置かねばなりませんが、メイドはメニアたちに仕事を教えたあとは引き上げても良いかもしれませんわね」

 少し考え込むと、言いづらそうにパルティアが続ける。

「メニアたちにはあえて申しておりませんが、彼女たちの例えば掃除一つでも、やはりもう少ししっかりやらねば代金は取れないかと思うのです。でも私が掃除を教えることはできませんから。
内装や料理はアレクシオス様がご手配下さったものがとても素敵で私も気に入っておりますが、掃除とマナーは彼女たちらしさを残しつつ、ある程度のレベルまで引き上げねばなりませんわ」
「ああ、パルティア様。そのほうがいいと私も思う。私たちがここにいればいいが、いないときにつまらないことで貴族に難癖などつけられたら、平民では太刀打ちできないだろうから、文句を言われそうなことは事前に指導してやる方がお互いのためだ」

 アレクシオスが、パルティアの不安を理解して背中を押した。
 すべてをメニアたちにと考えて、責任者もと思っていたがそこは貴族出身者に担ってもらおうと考えを改める。
今更そんなことを言ったらメニアたちはどう思うだろうかと、少し不安を覚えていたが、アレクシオスに促されて少女たちを呼び寄せ事情を話すと・・・。

 怒っただろうかと視線を上げたパルティアの目に写ったのは、ホッとした顔のメニアたち。

「よかったあ!パルティア様に言われて頑張ろうと思っていたのですけど、本当は自信なくて怖かったんです」

 メニアの言葉にパルティアは自分の思い違いに気がついた。
 相手の力量を見て任せるべきだった。力に見合った仕事でなければ、綻びができ、一つ綻びが生まれたらあとは広がるばかりとなっただろう。

「ああ、そんな。メニアごめんなさい、謝るのは私のほうだわ。すべて任せれば喜んでくれると思って。任せることが負担になるとは思っていなかったのよ」

 人を雇い、働かせるということにまた一つ、造形が深くなったパルティアであった。
 もちろんすぐカーライルに手紙を出して、中堅で指導力のあるメイドと、施設に常駐させる護衛を雇いたいので紹介してほしいと依頼した。
 紹介された者を新たに雇うつもりだったが、パルティアの力になりたいと手を挙げた護衛騎士四人が、そしてテーミアという副メイド長がエンダライン家から派遣され、メニアたちの特訓を開始した。

「パルティア様ぁ、テーミア様が怖いんですぅ」

 少女たちは度々パルティアに泣きついたが、パルティアはその度にスイーツを食べさせながら励まし、またテーミアの元に返す。
 これを乗り越えねば、あとで痛い目に遭うのはメニアたちなのだからと、今のパルティアは理解していたから。
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