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 ソダルと部下は、ソダルがピックアップした二つの情報を追い始めた。
 ひとつはすぐハズレだと判明したが、もうひとつの情報は真偽がなかなかはっきりしない。

「こいつら尻尾を掴ませそうでいて、ぎりぎり掴ませないんですよ」

 数日追った部下の一人がそう愚痴ったので、ソダルはすぐ配置転換し、探索捜査からその者を外した。

「もし奴らがぎりぎり尻尾を掴ませずに交わしたとしたら、気づいて逃げられたかも知れんぞ。己の能力の低さをひとのせいにするような奴はいらん」
「申し訳ございません、態勢を見直します」
「いい、私が直接選び、しばらくは極秘裏に動く。連絡方法は・・・」

 小声で何かを伝えると、上着を肩に掛けて部屋を出て行った。
 置いていかれた第二班の班長スキラーは項垂れる。ソダルは自分にも部下にも厳しいが、失敗は誰にでも起こり得ることと考えており、失敗したからダメと言うことはない。但し、その失敗がなぜ起きてしまい、どうしたら次からは防げるかという対策がなされていればである。
彼に一番やってはいけないことは、言い訳とその責任を誰かになすりつけること。
スキラーのミスは、部下にそれを叩き込んでおかなかったこと。

「汚名返上しなければ、私もここに居られなくなる」

 次の機会を貰えるだろうか、重い足どりで部屋の灯りを消した。

 猟犬の鼻は、実によく匂いを嗅ぎ分けた。
 狙いを定めた二人。
ソダルが率いた部下たちに素性を洗い出されたのはその二日後。
わざわざ今のふたりを知る絵師を探し出し、似顔絵を描かせたことも功を奏した。

「ふうん、支援している者がいたのか」

 報告書に目を通すソダルの口から、呟きが漏れる。

「ベンベロー侯爵家の三男エイリズ。なんか腹黒そうだな。こいつがオートリアスに接触するところを狙いたい」

 なぜエイリズの関与が知れたかというと、金を届けに来た使いを尾行し、辿り着いた先に待ち受けていたのがエイリズだったから。

「これが知れたら、ベンベロー家は大変だろうな」

 思いやっての言葉ではない。にやにや笑いながらニュースを楽しんでいるだけ。

「よし、みんな聞いてくれ。今日金を届けたということは、次の動きはしばらく先になるだろう。一班はオートリアスとライラを引き続き見張る。スイーズを呼んでくれ」

 最初の追跡調査を失敗した二班長である。

「お呼びと伺いました」
「うむ、チャンスをやろう。ベンベロー家のエイリズを見張れ。どんな小さなことも見逃すなよ、あ、あいつは使わないことが条件だ。一班と情報を共有しろ」
「はいっ!」

 スイーズは自分の手の者をベンベロー侯爵家の近隣に張り込ませまくる。
 数日後、たまたまスイーズが見張りについていたとき、ラフな姿でふらりと出かけたエイリズを影のように追いかけた。
場末の汚らしい酒場に入るエイリズを確認すると、髪を解き、ぼさぼさにかき乱してからスイーズも酒場に潜り込んだ。

「ここだ」

 既に数杯酒を煽っていそうなだらしなさ、しかし身につけた上物のシャツを見るに、貴族らしき男が手を上げてエイリズを呼んだ。
 スイーズが酒を買ってさり気なく近くに座り、耳を澄ますと、集中していないと聞き漏らしそうな小さな声が聞こえた。
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