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閑静な湖畔に広がる町エルシド。
ランバルディ・セリアズ公爵は未だのんびりと、アレクシオスと別邸で過ごしていた。
「父上、そろそろお帰りになられたほうがいいのではありませんか?」
「いや、思いの外立派にイルドレイドが領主代行を努めているし、このまま様子を見ていてよかろうて」
「兄上はそれでよいと?」
「いや、言うてはおらんが」
「きっと兄上お困りだと思いますが」
ランバルディはじっとりした瞳でアレクシオスを見つめ、問うた。
「・・・私を帰らせたいのか?」
本音を言えばそうだ。
ランバルディがもっと早くに帰還していてくれれば、いや、それよりこちらへ来なければ、あと数日パルティアと過ごせたというのに、父と三人で過ごす羽目になった。
しかし、父にそんな正直には言えない。
「そんなこと、思ったこともこざいません。こうして親子二人で過ごせるなど、幼少より初めてのこと。兄上には悪いのですが、私はうれしく思っております」
─我がことながら、よくもまあぺらぺらと滑りの良い舌だな─
アレクシオスは、父に悟られないようくすりと笑った。
─しかし、じきにまたパルティア様がこちらにいらっしゃるのだから、早く帰ってもらわねば─
また邪魔される・・・と頭に浮かんだ言葉を、まるで聞かれていると気づいたかのように、自分の心から追い出して素知らぬ顔をする。
「パルティア嬢は次はいつこちらへ来られるのだ?」
─この勘の良さ!だから父上は侮れない─
アレクシオスはまた感情を隠すように満面の笑みを浮かべ、問いに答える。
「今、あちらで設計士を探していらっしゃるそうで、まだ少しかかると便りが参りました」
本当はもう見つけたから、数日でこちらに向かえると書いてあったのだが。
「ふうん、そうか。見つからないようなら誰か紹介してやらないでもないが」
「いえ、そこはパルティア様が気に入った者を見つけるとおっしゃられたので」
「ふうん。・・・なあアレクシオス」
ランバルディの強烈な視線を感じるが、アレクシオスは決してそちらを見ない。
「なあアレクシオス、婚約破棄してよかったな」
「なっ!何を」
「あのままライラと結婚していたら、パルティア嬢とは出会えなかったぞ。まあ、お前のことだからライラを疑うこともせずに結婚したかもしれんが、いずれあの娘はお前を裏切っただろうからな。ベンベローの息子も下手を打ったものだ」
髭を何度か撫で揃えてから、話を続ける。
「アレクシオス、今はまだわからないかもしれないが、そうして人を裏切り略奪する者はまた略奪をくり返すし、略奪されもするのだ。ベンベローの息子ともいつまで続くか、見物だな」
─そう、そうなったらシリドイラもベンベローも見ていろよ、セリアズに泥を塗ったことを後悔させてやる!─
ランバルディは想像してニヤリと笑った。
ランバルディ・セリアズ公爵は未だのんびりと、アレクシオスと別邸で過ごしていた。
「父上、そろそろお帰りになられたほうがいいのではありませんか?」
「いや、思いの外立派にイルドレイドが領主代行を努めているし、このまま様子を見ていてよかろうて」
「兄上はそれでよいと?」
「いや、言うてはおらんが」
「きっと兄上お困りだと思いますが」
ランバルディはじっとりした瞳でアレクシオスを見つめ、問うた。
「・・・私を帰らせたいのか?」
本音を言えばそうだ。
ランバルディがもっと早くに帰還していてくれれば、いや、それよりこちらへ来なければ、あと数日パルティアと過ごせたというのに、父と三人で過ごす羽目になった。
しかし、父にそんな正直には言えない。
「そんなこと、思ったこともこざいません。こうして親子二人で過ごせるなど、幼少より初めてのこと。兄上には悪いのですが、私はうれしく思っております」
─我がことながら、よくもまあぺらぺらと滑りの良い舌だな─
アレクシオスは、父に悟られないようくすりと笑った。
─しかし、じきにまたパルティア様がこちらにいらっしゃるのだから、早く帰ってもらわねば─
また邪魔される・・・と頭に浮かんだ言葉を、まるで聞かれていると気づいたかのように、自分の心から追い出して素知らぬ顔をする。
「パルティア嬢は次はいつこちらへ来られるのだ?」
─この勘の良さ!だから父上は侮れない─
アレクシオスはまた感情を隠すように満面の笑みを浮かべ、問いに答える。
「今、あちらで設計士を探していらっしゃるそうで、まだ少しかかると便りが参りました」
本当はもう見つけたから、数日でこちらに向かえると書いてあったのだが。
「ふうん、そうか。見つからないようなら誰か紹介してやらないでもないが」
「いえ、そこはパルティア様が気に入った者を見つけるとおっしゃられたので」
「ふうん。・・・なあアレクシオス」
ランバルディの強烈な視線を感じるが、アレクシオスは決してそちらを見ない。
「なあアレクシオス、婚約破棄してよかったな」
「なっ!何を」
「あのままライラと結婚していたら、パルティア嬢とは出会えなかったぞ。まあ、お前のことだからライラを疑うこともせずに結婚したかもしれんが、いずれあの娘はお前を裏切っただろうからな。ベンベローの息子も下手を打ったものだ」
髭を何度か撫で揃えてから、話を続ける。
「アレクシオス、今はまだわからないかもしれないが、そうして人を裏切り略奪する者はまた略奪をくり返すし、略奪されもするのだ。ベンベローの息子ともいつまで続くか、見物だな」
─そう、そうなったらシリドイラもベンベローも見ていろよ、セリアズに泥を塗ったことを後悔させてやる!─
ランバルディは想像してニヤリと笑った。
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