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第9話 王家の男たち

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 茶会が終わる頃、今度は国王陛下までが姿を見せた。

「へ、陛下!!」

 ミラ夫人が驚きに目を瞠る。

「ああ、リイサ嬢、ミラ夫人!此度は本当にすまなかった」
「畏れ多いことでございます」

 ミラに合わせて、リイサもバネのように跳ね起きカーテシーをしようとすると、やはりズキズキと頭が痛む。
顔に出さないよう、不自然と思われないくらいにゆっくりと体を起こしたのだが。

「ねえ、リイサ嬢まだ痛むのじゃない?客間を用意させるから今日はミラ夫人と一緒に城に泊まっておいきなさい」
「体調がまだ悪かったのか!それは呼び立ててすまなかった。医師を手配するゆえ王妃が言うように城に泊まっていくがよいぞ」
「いえ、そんな大丈夫でこざいます」
「いや、だめだ!これ以上リイサ嬢に何かあっては王家の者は皆メルトニウスに殺されてしまう、是非泊まっていってくれ!」

 ガルシアが叫ぶ。

 サレンドラ公爵家は代々優れた武人を輩出している。中でもリイサの兄メルトニウスは歴代最高の天才騎士と誉れ高く、剣聖の二つ名を手にする日も近いと言われる若き騎士団長である。

「そ、そうだ!メルトニウスをこれ以上怒らせないためにも、どうかリイサ嬢!頼みを聞き入れて泊まっていってくれ」

 メルトニウスの怒りから身を守りたい一心で国王陛下と立太子を控えた第一王子がぺこぺこと頭を下げるなど、決してあってはならないことだが、相手はニーラスが死なせかけたリイサなのだ。
 戸惑うリイサの背を押したのはミラ。

「お心遣いを賜り、畏れ多いことでございます。謹んでお受けいたします」

 ミラは感謝の意は述べなかったが、それでもわかりやすくホッとした国王とガルシアは、ぱっと叫んで走って消えた。



「では私はサレンドラ公爵家に報せを出そう!」
「では私は医師と部屋と食事の準備をさせてきます!」



「まったく我が家の男たちときたら・・・」

 ドタドタと足音を立てながら遠ざかるふたりを見ながらそう呟いて、王妃はハッとする。

「・・・ニーラスのことなのだけれど」

 言いにくそうではあるが、リイサの視線が王妃を捉えたのを確認して先を続ける。

「ニーラスは今は北の塔にて謹慎しているわ。たぶんこれからもずっと・・・幽閉になるでしょうね、リイサ嬢に与えたことすべてを償うにはそれでも足りないと私でも思うもの。あと、あの子爵令嬢は今は地下牢に入れてあるの。城の地下に行かない限り会うことはないから、安心して滞在してね」

 リイサを不安にしないように、王妃はリイサとミラに城内の安全について説明をした。

「それでは部屋に案内させるわ。あの侍女はメルズ、リイサ嬢を。ミラ夫人にはこちらのツィーランよ。ではふたりとも頼むわね」

 痛む頭にこめかみを押さえたリイサは、メルズに支えられて王妃が整えさせた部屋の寝台に転がり込むと早速体を横たえる。
国王が自ら呼びつけた医師があたふたと現れ、いくつかの薬を飲ませると痛みが引き、すぅっと眠りに吸い込まれていった。





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いつもお読みくださり、ありがとうございます。
12月31日から1月3日まで一日3回(8時、12時、19時)更新します。
ちなみに元旦は4回更新予定です。
よろしくお願い致します。
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