【完結】ドケチ少女が断罪後の悪役令嬢に転生したら、嫌われ令息に溺愛されました。

第２話 けろりと詫びる神

『我ら神世の者は、それぞれが受け持つ世界の中で魂を輪廻させ続けている。
ただ時折新しい魂を入れねばならぬために、他の神と交換をすることがあるのだ。体の寿命尽きたものを互いに差し出し、新しき子として新たな世界に生み出すことで、輪廻の輪を活性させる。そうして貰い受けるはずだったのが、先ほどの男の魂なのだがあちらで手違いが起きたらしい』

　─そんな！ひどいひどいひどい！せっかく貯めた金もまだ全然使ってないのに！こんなことなら貸すより使えばよかった─

　李依紗は金を貯めて豊かな老後を送ることを目指していたので、おしゃれひとつすることなく死んでしまった。当然貯めていた金は親が見つけて家族で使ってしまうだろう。金を貸したばかりの学生たちは返さずに済んでしめしめとしか思わないに違いない。
　そう思うと口惜しくて唇が切れそうなほどに噛み締め・・・ようとしたが、実体がないのでうまくできなかった。

『其方にはまだ寿命があったが、その輝きを男に与えてしまった。それはこちらに来てしまった以上取り返すことはできぬのだ。あちらも手違いに気づいたようだが、どうにもできぬと言うておる。
我の責任ではないことに詫びと言うのもなんだが、我が作った世界の一つで其方の残りの寿命を全うさせてやろう』

　なんと李依紗は異世界へ転生させられることになったらしい。

『それはいちから我が作り上げたもの。以前飛ばされてきた魂が握りしめておった物語ものかたりが面白うて、その世界を手慰みに作ってみたのじゃ。そこなら問題なく溶け込ませることができる。其方が元の世界に未練を残した物質も十分以上に手にできるよう加護を与える故、そう嘆かずに新たな人生を楽しめ。では行くがよい』

　─ふざけるなーっ！─

　怒鳴りつけてやろうとしたのだが、李依紗はまたどこかへ飛ばされた。すごい勢いで何が起きてどこに向かうのかわからないまま、ただ何かに吸い込まれるような感覚だけを感じていた。



「お嬢様っ！リイサお嬢様がっ！」

　耳元で声が聴こえる。

　─うるさいわね、頭に響くわ！うう痛い、かち割れそう！─

　うっすらと目を開けると、たくさんの女性たちが顔が自分を覗き込んで。

「きっ、気がつかれたわっ！急いで旦那様と奥様を呼んできてっ」

　きゃあきゃあと女性たちが騒いでいたが。

「リィ！意識が戻ったのか？ああリイサ！よかった」

　女たちを掻き分けて現れた青い瞳に金髪の男が、李依紗リイサを見て破顔した。

「あああ！本当だ！ミラ！リィが目を開けた！助かったんだ」