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外伝 リリアンジェラ
可愛いらしい王女はニヤリと笑う15 ─リリアンジェラ─
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「え?そんなことがあったのか?」
テューダーはリュンヌのスイーツを人参にして、同級生だからこそのネタを手に入れた。
「ええ。テルア嬢がメンジャー嬢に作文を盗作されたって先生に訴えたのだけど」
「だけど?」
今度はテューダーが首を傾げる。
「それが、先生は調べもせずにテルア嬢の考えすぎって仰ったんですって」
「本当にそうだったんじゃないのか?」
「私、読みましたけど、あれは気のせいなどではありません!」
「そう、違いますわ。しかも盗作としか思えないのに、何故かメンジャー嬢の作文が文集に採用されたのです。それってどう思われます?」
「え?文集?・・・あ、全国共通の作品が載れば仕事に困らなくなるってやつか?しかし侯爵令嬢はそんなの無くたって困らないんじゃないか?」
ニイナの言う文集とは、毎年全国の各学院の教師たちが推薦した作品を集め、王宮で編纂される「全国から選ばれた優秀な作品」というそのものずばりな名の文集のことだ。
文官を狙う者や文学の研究者になりたい者、そして礼儀や教養の高さが評価されるマナー講師になりたい者たちの登竜門の一つである。
学院のなかで優秀だったとしても、それが他校にまで知られることは稀だが、「全国から選ばれた優秀な作品」の文集に選ばれればその名は全国隅々まで知られるので、ステイタスであり憧れ。特に後ろ盾もなく位の低い貴族の子息子女にとっては金ピカの名刺代わりとなる。
「ええ、あれにそんな力があるなんて知らなかった!」
「まあソグ様、お勉強が足りないのではありませんか?テルア嬢に聞いてみたら如何です?きっとテルア嬢なら文集も、勿論テルア嬢がお書きになられた元の作文もお持ちだと思いますわよ」
ニイナに睨まれながら、テューダーは考え込んでいた。
─盗作か、この話は適当な噂として広まるのは良くない性質のものだ。まずは真偽を確かめて。これが本当だとしたら、何故教師は調べもせずにメンジャー嬢の作文を文集に載せたのかと疑問が湧くな。まずは事実を確認してみよう─
テューダーはそれまでの軽い雑談から少し慎重に、話を進めることにした。
「・・・テルア嬢には連絡取れるかな?」
リュンヌのスイーツを二籠多く作ってもらうことで、ニイナが花嫁修業中のチュリンヌ・テルアに繋いでくれた。
「ごぶさたしておりますわね、ソグ様」
「テルア嬢お時間を頂き、ありがとうございます」
チュリンヌ・テルアはニイナからの手紙で、テューダーが求めるものを用意し、待ち受けていた。
「こちらをどうぞ」
ひとつは分厚い冊子で。
それをチュリンヌがぱらぱらと開いたページと、刷られた文集のページを開き、テューダーの前に比べやすいように並べる。
「読ませて頂いても?」
「ええ、勿論そのつもりで用意しておりましたわ」
チュリンヌは自分が書いたものだと証明するために、テューダーの前でいくつかの文章を書いて、筆跡を示して見せた。
「こちらが文集か」
セラの名がある作文を読むと、本当に途中からまったく同じ文章だ。
「これ、先生は何故考えすぎだなんて言ったんだろうか?」
「・・・わかりませんわ」
「メンジャー令嬢にこの文章を見せたことは?」
「私が見せたことはないですけど、ノートはいつも持ち歩いておりましたから、メンジャー令嬢にというより、先生に見られたかも知れません」
思い出して悔しそうなチュリンヌのノートは、几帳面に1ページごとに日付が記入されており、文集が作られるより一年前に書かれたものだとわかる。
その日付を指で辿るテューダーに、チュリンヌが言った。
「文集には毎年テーマがあります。だから通常前の年に書いたものが掲載されることはありません。このメンジャー嬢の作品は前半と後半の繋ぎが不自然というか、なんとなく辻褄が合わないと思うのに、優秀作品に選ばれたんです。どう思われますか?」
詰め寄るようにチュリンヌに訊かれてタジタジしたテューダーは、調べてみるので文集やノートを預からせてもらいたいと頼み込み、城へ戻って行った。
テューダーはリュンヌのスイーツを人参にして、同級生だからこそのネタを手に入れた。
「ええ。テルア嬢がメンジャー嬢に作文を盗作されたって先生に訴えたのだけど」
「だけど?」
今度はテューダーが首を傾げる。
「それが、先生は調べもせずにテルア嬢の考えすぎって仰ったんですって」
「本当にそうだったんじゃないのか?」
「私、読みましたけど、あれは気のせいなどではありません!」
「そう、違いますわ。しかも盗作としか思えないのに、何故かメンジャー嬢の作文が文集に採用されたのです。それってどう思われます?」
「え?文集?・・・あ、全国共通の作品が載れば仕事に困らなくなるってやつか?しかし侯爵令嬢はそんなの無くたって困らないんじゃないか?」
ニイナの言う文集とは、毎年全国の各学院の教師たちが推薦した作品を集め、王宮で編纂される「全国から選ばれた優秀な作品」というそのものずばりな名の文集のことだ。
文官を狙う者や文学の研究者になりたい者、そして礼儀や教養の高さが評価されるマナー講師になりたい者たちの登竜門の一つである。
学院のなかで優秀だったとしても、それが他校にまで知られることは稀だが、「全国から選ばれた優秀な作品」の文集に選ばれればその名は全国隅々まで知られるので、ステイタスであり憧れ。特に後ろ盾もなく位の低い貴族の子息子女にとっては金ピカの名刺代わりとなる。
「ええ、あれにそんな力があるなんて知らなかった!」
「まあソグ様、お勉強が足りないのではありませんか?テルア嬢に聞いてみたら如何です?きっとテルア嬢なら文集も、勿論テルア嬢がお書きになられた元の作文もお持ちだと思いますわよ」
ニイナに睨まれながら、テューダーは考え込んでいた。
─盗作か、この話は適当な噂として広まるのは良くない性質のものだ。まずは真偽を確かめて。これが本当だとしたら、何故教師は調べもせずにメンジャー嬢の作文を文集に載せたのかと疑問が湧くな。まずは事実を確認してみよう─
テューダーはそれまでの軽い雑談から少し慎重に、話を進めることにした。
「・・・テルア嬢には連絡取れるかな?」
リュンヌのスイーツを二籠多く作ってもらうことで、ニイナが花嫁修業中のチュリンヌ・テルアに繋いでくれた。
「ごぶさたしておりますわね、ソグ様」
「テルア嬢お時間を頂き、ありがとうございます」
チュリンヌ・テルアはニイナからの手紙で、テューダーが求めるものを用意し、待ち受けていた。
「こちらをどうぞ」
ひとつは分厚い冊子で。
それをチュリンヌがぱらぱらと開いたページと、刷られた文集のページを開き、テューダーの前に比べやすいように並べる。
「読ませて頂いても?」
「ええ、勿論そのつもりで用意しておりましたわ」
チュリンヌは自分が書いたものだと証明するために、テューダーの前でいくつかの文章を書いて、筆跡を示して見せた。
「こちらが文集か」
セラの名がある作文を読むと、本当に途中からまったく同じ文章だ。
「これ、先生は何故考えすぎだなんて言ったんだろうか?」
「・・・わかりませんわ」
「メンジャー令嬢にこの文章を見せたことは?」
「私が見せたことはないですけど、ノートはいつも持ち歩いておりましたから、メンジャー令嬢にというより、先生に見られたかも知れません」
思い出して悔しそうなチュリンヌのノートは、几帳面に1ページごとに日付が記入されており、文集が作られるより一年前に書かれたものだとわかる。
その日付を指で辿るテューダーに、チュリンヌが言った。
「文集には毎年テーマがあります。だから通常前の年に書いたものが掲載されることはありません。このメンジャー嬢の作品は前半と後半の繋ぎが不自然というか、なんとなく辻褄が合わないと思うのに、優秀作品に選ばれたんです。どう思われますか?」
詰め寄るようにチュリンヌに訊かれてタジタジしたテューダーは、調べてみるので文集やノートを預からせてもらいたいと頼み込み、城へ戻って行った。
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