78 / 99
外伝 リリアンジェラ
可愛いらしい王女はニヤリと笑う8 ─リリアンジェラ─
しおりを挟む
「リリ様、双子殿下に厳しすぎませんかぁ」
ふわぁと出かかった欠伸を飲み込みながら、カテナが訊ねると、決然とした顔でリリアンジェラは首を横に振る。
「とんでもない!足りないくらいよ、この前の試験結果見たでしょ?そういえばカティももう少し頑張ったほうがいいわ!私が見てあげるから一緒に勉強しましょ!」
「えっ⁉」
ヤブから蛇を突いてしまったカテナは、ぶんぶんと首を振って固辞しまくった。
「ぷっ」
「え?ああ、冗談ですか?も~リリ様のって全然笑えないんですけど」
「同じ言葉でも、その場の雰囲気や、相手の反応に寄って冗談で流したり、真面目な話として対応したりできるように練習しておかないとね」
十ニ歳の令嬢の言うこととは思えないが、リリアンジェラにすっかり慣れているカテナはハイハイと聞き、肩を竦めた。
「私には難しすぎーっ」
双子王子をせめて20番以内になるようにとしごきながら、リリアンジェラは王女の庭で茶会を開催するようになっていた。
いずれ兄たちや自分も婚約しなくてはならない。王族貴族の避けられない宿命だ。
恋愛小説をたくさん読んだリリアンジェラは、「真実の愛」とか「浮気」「不貞」という言葉に敏感だ。忌むべきものと感じているのがリリアンジェラらしいところ。
「ねえカティ、エル兄様は想い合う方と出逢って結婚したいそうなのよ。どう思う?」
「えー、エルロール殿下はロマンチストなんですね」
「ロマンチスト?王族にはそんな言葉は不要よ。でも愛を捧げる令嬢を見つけるまではって、縁談も絶対嫌だって引かないらしいわ」
「うわぁ・・・。でも、エルロール殿下なら出逢ったら浮気なんかしなさそう」
「まあ、そうね。きっと真面目に一途にお相手を愛するとは思うけど。王族の義務と責任を誰より理解されているから、意外と見合いの相手でも誠実に愛されると思うのよね」
エルロールならそうだろうなと、リリアンジェラとカテナ、女官たちは優しく慈悲深く、真面目な第一王子を思い浮かべていた。
ふと、リリアンジェラの脳裡に何かがかすめる。
「義務と責任を重く受け止めているエル兄様がそこまで言うのだから、それだけが譲れないこと、ということかしらね」
いつでも国と国民のためと、自分の希望は後回しにし、自分に割り当てられた予算さえ民の金だと使いたがらない。スキップして卒業できるほど勉強し、王太子教育と執務もこなしている素晴らしい兄王子のただ唯一の望みであり、夢。
俯き考え込んでいた王女が、顔を上げたと思うと一際大きな声で言った。
「でもやっぱり馬鹿らしいわそんな夢。王族には相応しくない!権力を安定させ、利益を生む婚姻こそが王族の結婚なのよ!でも、それなら利益となる令嬢と出逢えればいいのよ!そうだわ」
可愛いのは見た目だけだと陰口を言われる自分にも、分け隔てのない兄王子がリリアンジェラは大好きだ。その夢を叶え、皆が幸せになる相手を探し出せばいいのだと王女は閃いた。
「カティ、伯爵家以上で兄上と釣り合う年齢の令嬢を調べてくれないかしら?」
幼馴染の伯爵令嬢は、王女の腹の中を理解してニッと笑う。
「お任せを!リリ姫様」
ふわぁと出かかった欠伸を飲み込みながら、カテナが訊ねると、決然とした顔でリリアンジェラは首を横に振る。
「とんでもない!足りないくらいよ、この前の試験結果見たでしょ?そういえばカティももう少し頑張ったほうがいいわ!私が見てあげるから一緒に勉強しましょ!」
「えっ⁉」
ヤブから蛇を突いてしまったカテナは、ぶんぶんと首を振って固辞しまくった。
「ぷっ」
「え?ああ、冗談ですか?も~リリ様のって全然笑えないんですけど」
「同じ言葉でも、その場の雰囲気や、相手の反応に寄って冗談で流したり、真面目な話として対応したりできるように練習しておかないとね」
十ニ歳の令嬢の言うこととは思えないが、リリアンジェラにすっかり慣れているカテナはハイハイと聞き、肩を竦めた。
「私には難しすぎーっ」
双子王子をせめて20番以内になるようにとしごきながら、リリアンジェラは王女の庭で茶会を開催するようになっていた。
いずれ兄たちや自分も婚約しなくてはならない。王族貴族の避けられない宿命だ。
恋愛小説をたくさん読んだリリアンジェラは、「真実の愛」とか「浮気」「不貞」という言葉に敏感だ。忌むべきものと感じているのがリリアンジェラらしいところ。
「ねえカティ、エル兄様は想い合う方と出逢って結婚したいそうなのよ。どう思う?」
「えー、エルロール殿下はロマンチストなんですね」
「ロマンチスト?王族にはそんな言葉は不要よ。でも愛を捧げる令嬢を見つけるまではって、縁談も絶対嫌だって引かないらしいわ」
「うわぁ・・・。でも、エルロール殿下なら出逢ったら浮気なんかしなさそう」
「まあ、そうね。きっと真面目に一途にお相手を愛するとは思うけど。王族の義務と責任を誰より理解されているから、意外と見合いの相手でも誠実に愛されると思うのよね」
エルロールならそうだろうなと、リリアンジェラとカテナ、女官たちは優しく慈悲深く、真面目な第一王子を思い浮かべていた。
ふと、リリアンジェラの脳裡に何かがかすめる。
「義務と責任を重く受け止めているエル兄様がそこまで言うのだから、それだけが譲れないこと、ということかしらね」
いつでも国と国民のためと、自分の希望は後回しにし、自分に割り当てられた予算さえ民の金だと使いたがらない。スキップして卒業できるほど勉強し、王太子教育と執務もこなしている素晴らしい兄王子のただ唯一の望みであり、夢。
俯き考え込んでいた王女が、顔を上げたと思うと一際大きな声で言った。
「でもやっぱり馬鹿らしいわそんな夢。王族には相応しくない!権力を安定させ、利益を生む婚姻こそが王族の結婚なのよ!でも、それなら利益となる令嬢と出逢えればいいのよ!そうだわ」
可愛いのは見た目だけだと陰口を言われる自分にも、分け隔てのない兄王子がリリアンジェラは大好きだ。その夢を叶え、皆が幸せになる相手を探し出せばいいのだと王女は閃いた。
「カティ、伯爵家以上で兄上と釣り合う年齢の令嬢を調べてくれないかしら?」
幼馴染の伯爵令嬢は、王女の腹の中を理解してニッと笑う。
「お任せを!リリ姫様」
0
お気に入りに追加
740
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
花婿が差し替えられました
凛江
恋愛
伯爵令嬢アリスの結婚式当日、突然花婿が相手の弟クロードに差し替えられた。
元々結婚相手など誰でもよかったアリスにはどうでもいいが、クロードは相当不満らしい。
その不満が花嫁に向かい、初夜の晩に爆発!二人はそのまま白い結婚に突入するのだった。
ラブコメ風(?)西洋ファンタジーの予定です。
※『お転婆令嬢』と『さげわたし』読んでくださっている方、話がなかなか完結せず申し訳ありません。
ゆっくりでも完結させるつもりなので長い目で見ていただけると嬉しいです。
こちらの話は、早めに(80000字くらい?)完結させる予定です。
出来るだけ休まず突っ走りたいと思いますので、読んでいただけたら嬉しいです!
※すみません、100000字くらいになりそうです…。
【完結】政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる