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外伝 ちいさなこどもたち

ちいさなロリー2 ─こどもたち─

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 ロリーが言った孤児院や読み書き教室の手伝いは本当のことだ。
 しかし言わなかったこともある。

 孤児院や読み書き教室には今もなお時折エルロール王太子とメリンダ王太子妃が顔を出すと。


 ロリーはやさしく絵本を読み聞かせてくれるメリンダが大好きだった。
メリンダが来た日は、一日中あとをついて回って、同じくメリンダ大好きなマーサとその座を奪い合うこともあったほど。
 といっても体が小さかったロリーは、走っても引っ張ってもいつもマーサに負けていた。神父たちは泣いているロリーを愚図っているくらいにしか思わなかったようだが、メリンダは違う。
 ちゃんとそばに来て泣いている理由を聞いてくれ、マーサの本を読んだら次はロリーの番ねと約束し、それを守ってくれたのだ。



 ある日、弱々したお兄さんがやって来るようになった。

 お兄さんはエルさまと言って、美味しいお菓子をくれ、新しいたくさんの絵本を!文具を!そして読み書き教室を作ってくれたすごくいい人!



 ロリーは運動が苦手で、孤児院の中でこどもたちが大好きな鬼ごっこなどが嫌いだった。
孤児院には数冊の本しかなく、しかも絵を見るだけ。それでも鬼ごっこよりずっと楽しめたが、エル・ヨルスから与えられた本や文具、教室はロリーの世界を一気に広げたのだ。

「ねえロリー!エルさまがおうじさまで、メリンダさまをおよめさんにして、ふたりがいつかおうさまとおうひさまになるって知ってた⁉」

 マーサからその話を聞かされたとき、ロリーはまだよく理解できなかったが、読み書き教室で学び、たくさんの書物が読めるようになって、事の大きさがわかるようになると、それでも時々孤児院に来てくれるメリンダとエルロールをもっともっと好きになり、強く憧れ、尊敬するようになった。








「平民の孤児でも城の文官ってなれるのでしょうか?」

 時々巡回している読み書き教室の責任者ソージェ・ゴルマス侯爵は、一番最初の生徒たちに殊の外目をかけている。
特にロリーのような優れた才を持ち、奨学金で勉学を続ける者が謂れなき差別に合わないよう、定期的に話をする機会を設けていた。

「ロリーは文官になりたいのかね?」
「・・・やっぱり無理でしょうか?」
「城はアレだ、危険人物を排除するために出自身上を大切にするが、ロリーが望むなら私が後見人になってもいい。そうだ!なんなら我が家の養女になってもいいぞ」
「えっ!」

 驚くべきソージェの発言に、ロリーは驚いて口が閉まらない。

「ロリーなら小さな頃からその心根もよく知っておるしな。我が家は息子も孫も男ばかりだから、妻は娘を欲しがっていたんだ」

 それにと、口の中で飲み込んだ続きがあった。

 エルロールの養子を推進する施策が動き出した。
誰でも彼でもではないが、貴族が庶子ではなく、血の繋がりのない平民または平民の孤児を後見する、または養子にした場合、毎年国に納める税が軽減される。

 養子政策を推し進めるにあたり、相続権を持つ実子の反対も考えられたので、養育養子と言う相続権を与えない選択もできた。
 その政策によって、貴族たちは優秀な平民の孤児たちを捜しては養育養子を迎え入れるようになっていたのだ。

 自分の庶子を有利に迎えるため、わざわざ孤児院に預けさせて引き取った貴族も現れたが、エルロールは不正を見逃すようなことはしなかった。
 孤児院の子を養子にするときは、孤児院で預かった際の記録を、孤児院から直接国に提出させていたのだ。
 勿論記録の改竄ができないよう、帳面には通し番号を振り、定期的に国の査察を受けさせる。その記録には預けられた経緯と、子の出自や親の出自や髪の色瞳の色など、親についてもわかる限り詳細な記録も求められている。
 国は提出された記録が監査のあとで改竄されたりしていないか別途調査するので、すぐにわかるようになっていた。




「ロリーなら我が家の皆が諸手を挙げて賛成する!安心して後見でも養子でも任せたまえ」

 ロリーは話が大きすぎて戸惑いを隠せなかったが、大きなチャンスが開けたと知ってうれしそうに頷いた。
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