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外伝
第62話 サリー・シュレンクス ─王妃とテューダー─
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奥の扉が開き、制服を着たひとりの美しい女官が歩いてくる。テューダーの目は釘付けになった。
可愛らしかったアリスとはまったく違う個性の持ち主で、何故か胸がスッとすくような気持ちよさを感じさせる。
「テューダー、こちらは私の宮の女官、サリー・シュレンクスよ」
「テューダー・ソグです」
「サリー・シュレンクスと申します」
ふたりが挨拶を交わすのを見ていたパリス王妃が続けた。
「実はね、サリーの婚約者は半年前に流行り病で亡くなられて、婚約者を探しているところなの」
若くして侍女見習いから宮付き女官に抜擢されたパリスお気に入りのサリーは、シュレンクス伯爵家の次女で、元婚約者も伯爵家の嫡男だった。
しかし領地視察中に土着の流行り病にかかり、命を落としてしまったのだ。
半月後に結婚式を控えていたサリーは一時仕事ができないほどだったが、パリスは手放さずにゆっくり休ませ、テューダーの婚約騒動を耳にして、いずれふたりをくっつけようと考えていたのである。
「サリー、テューダーはごく普通の容姿に過ぎないけど、そうそう、エルロールの婚約についても最後のいいところは私に取られてしまったけど」
ふふふっとおかしそうに笑った王妃は、ちらりとテューダーの恨めしそうな顔を見た。
「でもね、主に忠実で、いざと言う時は諫言だって厭わない忠臣ってやつね。それに誠実で、信頼に値する私おすすめのひとりよ」
思いもかけないパリスからの褒め言葉に、びっくりしたような顔を上げたテューダーは、自分を見つめたサリーと視線を交わした。
「テューダー、サリーは私のお気に入りよ。そういえば貴方ならわかるわよね」
こくこくこくと高速でテューダーが頷くのを見て、満足そうにパリスが締めくくった。
「ふたりともいろいろあったばかりだし、今すぐという話ではないけど、しばらく一緒に過ごしてみたらいいんじゃないかしら。そうね、期限は4ヶ月としましょう。良い報告を聞かせて頂戴ね。
はいっ!それじゃふたりで庭園でも歩いてきて!」
─王妃肝いりの見合いを断れる者はいない。
シュレンクス令嬢の気持ちがどうであろうと婚約はしなくてはならないだろう、気の毒に─
婚約者を亡くして半年では、まだそんな気になれないだろうと考えていたテューダーだが、サリーは違った。
「ソグ様、お気遣いなさらずとも大丈夫ですわ。私から少しお話してもよろしいですか?」
「ええ、もちろん」
ガゼボのベンチにサリーをエスコートすると、自分のハンカチを敷いてサリーを座らせ、自身は少し離れたフェンスに寄りかかる。
サリーはテューダーの人柄に触れた気がして、ほんわりと微笑んだ。
可愛らしかったアリスとはまったく違う個性の持ち主で、何故か胸がスッとすくような気持ちよさを感じさせる。
「テューダー、こちらは私の宮の女官、サリー・シュレンクスよ」
「テューダー・ソグです」
「サリー・シュレンクスと申します」
ふたりが挨拶を交わすのを見ていたパリス王妃が続けた。
「実はね、サリーの婚約者は半年前に流行り病で亡くなられて、婚約者を探しているところなの」
若くして侍女見習いから宮付き女官に抜擢されたパリスお気に入りのサリーは、シュレンクス伯爵家の次女で、元婚約者も伯爵家の嫡男だった。
しかし領地視察中に土着の流行り病にかかり、命を落としてしまったのだ。
半月後に結婚式を控えていたサリーは一時仕事ができないほどだったが、パリスは手放さずにゆっくり休ませ、テューダーの婚約騒動を耳にして、いずれふたりをくっつけようと考えていたのである。
「サリー、テューダーはごく普通の容姿に過ぎないけど、そうそう、エルロールの婚約についても最後のいいところは私に取られてしまったけど」
ふふふっとおかしそうに笑った王妃は、ちらりとテューダーの恨めしそうな顔を見た。
「でもね、主に忠実で、いざと言う時は諫言だって厭わない忠臣ってやつね。それに誠実で、信頼に値する私おすすめのひとりよ」
思いもかけないパリスからの褒め言葉に、びっくりしたような顔を上げたテューダーは、自分を見つめたサリーと視線を交わした。
「テューダー、サリーは私のお気に入りよ。そういえば貴方ならわかるわよね」
こくこくこくと高速でテューダーが頷くのを見て、満足そうにパリスが締めくくった。
「ふたりともいろいろあったばかりだし、今すぐという話ではないけど、しばらく一緒に過ごしてみたらいいんじゃないかしら。そうね、期限は4ヶ月としましょう。良い報告を聞かせて頂戴ね。
はいっ!それじゃふたりで庭園でも歩いてきて!」
─王妃肝いりの見合いを断れる者はいない。
シュレンクス令嬢の気持ちがどうであろうと婚約はしなくてはならないだろう、気の毒に─
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「ソグ様、お気遣いなさらずとも大丈夫ですわ。私から少しお話してもよろしいですか?」
「ええ、もちろん」
ガゼボのベンチにサリーをエスコートすると、自分のハンカチを敷いてサリーを座らせ、自身は少し離れたフェンスに寄りかかる。
サリーはテューダーの人柄に触れた気がして、ほんわりと微笑んだ。
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