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第51話 手違い

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 ─どういうことだよっ!ソージェ様がオルサガ家の養子にするよう話を進めて、侯爵令嬢になったメリンダ嬢とエルが婚約するんじゃなかったのか?─

 誰にそれを言えばいいんだと、馬を駆りながらテューダーは頭を働かせた。


 ─そりゃあ、エルが落ち込むわけだよ!─



 とりあえずソージェに会おうと城へ駆け戻り、馬を預けるとそのままソージェがいるときはいつも使っている執務室へ向かった。

 ドンドンドン!

 先触れも何もなく、いきなり扉を叩きまくる。

「なんだっ、うるさいぞ」

 開いた扉の隙間からソージェが顔を覗かせると、凄まじい顔をしたテューダーがいた。

「なっ、なんだテューダーではないか、どうしたというんだ?」
「どうしたもこうしたも、それはこっちの台詞です!一体どうなってるんだ」

 テューダーのあまりの剣幕に、ソージェはひとまず執務室へと招き入れ、落ち着かせるために座らせた。

「茶を頼む!」

 侍従に淹れさせた茶をテューダーに渡すと、事情を聞こうと身構えて。

「一体どういうことですか?メリンダ嬢が養子に行って結婚させられるからもう会えないとエルに別れの挨拶を」
「えっ?何だそれは?どうしてそうなったんだ?」
「だからそれはこっちの台詞ですよ!」
「ちょっと待てよテューダー、オルサガ家には相手はエルロール殿下だと言った上で養子にさせたんだ」

 鳩が豆鉄砲を食ったように、テューダーは押し黙った。

「他の男に嫁ぐなんて絶対無いはずだぞ!よし、オルサガ家に行こう!」
「はい」




 ソージェはオルサガ侯爵家に先触れを出したのだが、なんと侯爵一家は外出しており、明日にならないと戻らないと使者が返事を持ち帰った。
 ではイブール男爵だと先触れを出すも、こちらも留守という。

「どうなっているんだ!」

 使者が持ち帰ったオルサガ侯爵家の執事からの書状に目が留まる。

「ん?オルサガ侯爵家の執事からだが、明日侯爵夫妻は養女たちと国王陛下と謁見予定があるから、執務室に寄るよう伝えると書いてある!」
「本当ですか!」
「ああ、ほら見てみろ」

 テューダーは舐めるように文字を拾う。

「では明日なら真実がわかると?」
「そうだ」
「エルには言ったほうがいいでしょうか」

 ソージェも、本当のところがわからないままなため、オルサガ侯爵を信じてはいても不安もあった。

「どんな手違いがあったのか、アランから話を聞いてからにしよう。しかし王妃からの話だからな、他に嫁にやるなんて絶対に有り得ないことだから心配するな」

 沈み込むエルロールを思うと、テューダーは今すぐにでも何とかしてやりたかったが、状況がわからないまま未確認のことを慰めに話せはしない。

「わかりました。それでは・・・明日」
「テューダー、今夜はエルロール殿下のお側についていてやってくれ」
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