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第39話 長い付き合いですからね
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「何言ってるんだエル!ダメだろう」
「いや、ダメじゃない。ここで教師をさせると考えたらもちろんダメだけど、次の教室の補欠採用もするだろう?」
「ん?ああ、押さえておけば何度も募集しなくていいしな」
「いつか教室ができるまでの間、押さえられている者はどう生活するんだ?」
「え?そりゃ今の仕事を続けながら待っていればいいだろう?」
エルロールの意図はまったく違っていた。
「いいやダメだ、そんな当てどもない話で人々の時間を無駄にはできない。そこでだ、補欠採用は止める」
「え?」
「今住んでいる地域の孤児院をそれぞれに調査させて、どこに読み書き教室を開くべきかを報告させるんだよ。もちろん俸給は出す。私たちは報告が正しいものか精査し、間違いないとわかったら建設の手配などはしてやるが進捗管理も任せるんだ」
「なるほど、そうすれば遠方の地域でも我らが往復をくり返さなくて済みますね」
ソージェが先に気づいてくれ、エルロールがそうなんだ!とこくこく頷いてみせた。
「わかった。ではそのように」
2対1のテューダーは黙って引っ込む。
ただ不満はなく、エルロールの言うことはもっともだと納得して引いた。
「では当初より多めで、遠方の者はエリアが散らばるように見ていこう。それから教師仲間で推薦したい者がいるかも確認しておこう」
そうすれば実際に教室を開くとき、教師の採用が楽になるかもしれないからと、エルロールは続けた。
「なんだか今日は、すごく頭がよく回転している気がするな」
エルロールはドヤったが、今日はテューダーもソージェも認めてくすりと笑った。
「教師たちの転居が整ったら、しばらくソージェに様子を見てもらって、一月くらいで始められるかな?」
「いや、それは厳しくないでしょうか?」
「え?ダメか?」
「教師の資格はあっても実践経験のない者もおりますからね。少し研修が必要でしょう」
「そういうものなのか?」
「そういうものですよ」
すぐにでも教室を開き、メリンダを喜ばせたかったのに。
当てがはずれてがっかりしたエルロールにテューダーが思い出して訊ねた。
「なあ、こんなにがっちり教師の予定が入っていたら、メリンダ孃の出番がないぞ」
「メリンダ孃とは?」
「もともとこの孤児院で奉仕活動に読み書きを教えている令嬢」
「ほお、今後も奉仕活動にきてくださるなら、もちろん希望のときに研修致しますよ。来てくださるときは教師の補佐役をして頂けばよろしい」
それならメリンダのことはソージェ任せておけばいいなとテューダーは考えたが、エルロールはまだ続けた。
「あのっソージェ、メリンダ孃にはまだ私が王子だとは話していないんだ」
「え?なぜ」
「え、いや、あの」
カァーっと真っ赤になっていくエルロールを見て、テューダーと同じく付き合いの長いソージェはニヤリとした。
「あっ!まさかとうとう?おお、そうでしたか!それでどうしてまだご身分を明かさないのです?サプライズを狙っているのですか?」
「あー、いや、あの、メリンダ孃は違うんだ。憧れっていうか」
テューダーが首を横に振るのが見え、ソージェはそれ以上追及するのはやめた。
「いや、ダメじゃない。ここで教師をさせると考えたらもちろんダメだけど、次の教室の補欠採用もするだろう?」
「ん?ああ、押さえておけば何度も募集しなくていいしな」
「いつか教室ができるまでの間、押さえられている者はどう生活するんだ?」
「え?そりゃ今の仕事を続けながら待っていればいいだろう?」
エルロールの意図はまったく違っていた。
「いいやダメだ、そんな当てどもない話で人々の時間を無駄にはできない。そこでだ、補欠採用は止める」
「え?」
「今住んでいる地域の孤児院をそれぞれに調査させて、どこに読み書き教室を開くべきかを報告させるんだよ。もちろん俸給は出す。私たちは報告が正しいものか精査し、間違いないとわかったら建設の手配などはしてやるが進捗管理も任せるんだ」
「なるほど、そうすれば遠方の地域でも我らが往復をくり返さなくて済みますね」
ソージェが先に気づいてくれ、エルロールがそうなんだ!とこくこく頷いてみせた。
「わかった。ではそのように」
2対1のテューダーは黙って引っ込む。
ただ不満はなく、エルロールの言うことはもっともだと納得して引いた。
「では当初より多めで、遠方の者はエリアが散らばるように見ていこう。それから教師仲間で推薦したい者がいるかも確認しておこう」
そうすれば実際に教室を開くとき、教師の採用が楽になるかもしれないからと、エルロールは続けた。
「なんだか今日は、すごく頭がよく回転している気がするな」
エルロールはドヤったが、今日はテューダーもソージェも認めてくすりと笑った。
「教師たちの転居が整ったら、しばらくソージェに様子を見てもらって、一月くらいで始められるかな?」
「いや、それは厳しくないでしょうか?」
「え?ダメか?」
「教師の資格はあっても実践経験のない者もおりますからね。少し研修が必要でしょう」
「そういうものなのか?」
「そういうものですよ」
すぐにでも教室を開き、メリンダを喜ばせたかったのに。
当てがはずれてがっかりしたエルロールにテューダーが思い出して訊ねた。
「なあ、こんなにがっちり教師の予定が入っていたら、メリンダ孃の出番がないぞ」
「メリンダ孃とは?」
「もともとこの孤児院で奉仕活動に読み書きを教えている令嬢」
「ほお、今後も奉仕活動にきてくださるなら、もちろん希望のときに研修致しますよ。来てくださるときは教師の補佐役をして頂けばよろしい」
それならメリンダのことはソージェ任せておけばいいなとテューダーは考えたが、エルロールはまだ続けた。
「あのっソージェ、メリンダ孃にはまだ私が王子だとは話していないんだ」
「え?なぜ」
「え、いや、あの」
カァーっと真っ赤になっていくエルロールを見て、テューダーと同じく付き合いの長いソージェはニヤリとした。
「あっ!まさかとうとう?おお、そうでしたか!それでどうしてまだご身分を明かさないのです?サプライズを狙っているのですか?」
「あー、いや、あの、メリンダ孃は違うんだ。憧れっていうか」
テューダーが首を横に振るのが見え、ソージェはそれ以上追及するのはやめた。
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