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第21話
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「あのベレル様」
執事から降格されたルイードが書状を持って食堂に現れた。
「イグラルド子爵家から訪問の先触れが来ております」
「イグラルド子爵家だと?」
ベレルがエリーシャを見ると、トルソーに抱きしめられてまだ震えている。
「今日の午後の訪問をご希望だそうです」
「取り込み中だ。急ぎなら明日予定を空けると使者に伝えろ。くれぐれも今日は遠慮してもらいたいと丁寧にな」
このタイミングでイグラルド子爵がやって来る、思いつく用件がひとつ。
アレンソアの不貞がバレたのではないかと思い至ったベレルは、最悪のタイミングだと頭を抱えた。
「アレンソアを北の部屋に入れ、謹慎させろ。こいつは窓から抜け出すからな、窓に格子を打ち付けてから閉じ込めろ。トルソーはエリーシャについていてやってくれ。レイカは支度をしなさい、メイカ家に行くぞ。私の再三の忠告を無視したのがこの結果だ、おまえが自身でこの責任を取るがいい。ルイード、メイカに先触れを出せ」
矢継ぎ早に指示を飛ばす。
「そうだ!ルイード、先触れは我らよりほんの少しだけ早く着くようにしてくれ。逃げられないようにな。それと警邏隊に連絡し、この件でメイカを調査するよう依頼しろ。
トルソー!」
まだエリーシャを抱きしめているトルソーには、殊更優しく声をかけた。
「エリーシャを頼むぞ。エリーシャ、もう大丈夫だ。明日はイグラルドの皆様もいらっしゃるそうだから、それまではトルソーに守らせる。いいね?」
こくりと頷くエリーシャに、にこりと微笑むとベレルはレイカを伴い、メイカ准男爵家へと馬車を走らせた。
「こんな朝早くからどうなさったのです?」
あからさまに迷惑顔のメイカ准男爵ユンディが迎えに出てくると、ベレルはすぐイニエラを出すよう詰め寄った。
「はあ?いくら伯爵様だとて失礼ではありませんか!娘はまだ寝ております」
「それなら叩き起こせ!私に逆らうなら不敬を問う」
「え!」
妻が親しくしていたので軽く文句を言ったが、ユンディはまさか不敬を問うと言われるとは思わなかった。
「も、申し訳ございません、娘を連れてまいりますので」
「寝ているようなら支度などさせずにそのまま連れてこい!我らを一瞬でも待たせたら容赦はせんと心得よ」
凄まじい怒りっぷりのベレルに怯えたユンディは、自らイニエラの部屋へと駆け上がった。
ドンドンと扉を叩くと、寝ぼけたイニエラがガウンを羽織って扉を開ける。
「なあにぃ?まぁだ寝ていたのにぃ」
「イニエラっ、おまえ何をしたんだっ!」
ベレルの怒りは異常なものだった。
ちょっとの行き違いなどではない、大変なことが起きていると。
そしてそれはイニエラが仕出かしたのだろうとわかるが。
「来いっ、ツィージャー伯爵がお待ちだ!」
ユンディが言うとイニエラが変な顔をして言った。
「ツィージャー伯爵?うそ!なんで生きてるの?」
執事から降格されたルイードが書状を持って食堂に現れた。
「イグラルド子爵家から訪問の先触れが来ております」
「イグラルド子爵家だと?」
ベレルがエリーシャを見ると、トルソーに抱きしめられてまだ震えている。
「今日の午後の訪問をご希望だそうです」
「取り込み中だ。急ぎなら明日予定を空けると使者に伝えろ。くれぐれも今日は遠慮してもらいたいと丁寧にな」
このタイミングでイグラルド子爵がやって来る、思いつく用件がひとつ。
アレンソアの不貞がバレたのではないかと思い至ったベレルは、最悪のタイミングだと頭を抱えた。
「アレンソアを北の部屋に入れ、謹慎させろ。こいつは窓から抜け出すからな、窓に格子を打ち付けてから閉じ込めろ。トルソーはエリーシャについていてやってくれ。レイカは支度をしなさい、メイカ家に行くぞ。私の再三の忠告を無視したのがこの結果だ、おまえが自身でこの責任を取るがいい。ルイード、メイカに先触れを出せ」
矢継ぎ早に指示を飛ばす。
「そうだ!ルイード、先触れは我らよりほんの少しだけ早く着くようにしてくれ。逃げられないようにな。それと警邏隊に連絡し、この件でメイカを調査するよう依頼しろ。
トルソー!」
まだエリーシャを抱きしめているトルソーには、殊更優しく声をかけた。
「エリーシャを頼むぞ。エリーシャ、もう大丈夫だ。明日はイグラルドの皆様もいらっしゃるそうだから、それまではトルソーに守らせる。いいね?」
こくりと頷くエリーシャに、にこりと微笑むとベレルはレイカを伴い、メイカ准男爵家へと馬車を走らせた。
「こんな朝早くからどうなさったのです?」
あからさまに迷惑顔のメイカ准男爵ユンディが迎えに出てくると、ベレルはすぐイニエラを出すよう詰め寄った。
「はあ?いくら伯爵様だとて失礼ではありませんか!娘はまだ寝ております」
「それなら叩き起こせ!私に逆らうなら不敬を問う」
「え!」
妻が親しくしていたので軽く文句を言ったが、ユンディはまさか不敬を問うと言われるとは思わなかった。
「も、申し訳ございません、娘を連れてまいりますので」
「寝ているようなら支度などさせずにそのまま連れてこい!我らを一瞬でも待たせたら容赦はせんと心得よ」
凄まじい怒りっぷりのベレルに怯えたユンディは、自らイニエラの部屋へと駆け上がった。
ドンドンと扉を叩くと、寝ぼけたイニエラがガウンを羽織って扉を開ける。
「なあにぃ?まぁだ寝ていたのにぃ」
「イニエラっ、おまえ何をしたんだっ!」
ベレルの怒りは異常なものだった。
ちょっとの行き違いなどではない、大変なことが起きていると。
そしてそれはイニエラが仕出かしたのだろうとわかるが。
「来いっ、ツィージャー伯爵がお待ちだ!」
ユンディが言うとイニエラが変な顔をして言った。
「ツィージャー伯爵?うそ!なんで生きてるの?」
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