【完結】おまえを愛することはない、そう言う夫ですが私もあなたを、全くホントにこれっぽっちも愛せません。

やまぐちこはる

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第17話

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「はあ・・・そんなことなら何故もっと早くに言わなかったんだ?慰謝料払ってでも別れさせてやったのに」
「さすがに夫婦となれば、もう少し、せめて領地経営の相談くらいはできるようになると思ってましたの。でもいつまでもそうならなくて。今は婚約を解消すべきだったと後悔してますけど、そんなことより本題ですわ」

 ソリトスは一喜一憂しながらエリーシャの話を聞き、最後にはアレンソアに激怒していた。

「あのゴミムシめ、捻り潰してやりたい」
「ええ、お兄様が手の者を貸してくださればそうできると思いますわ。貸してくださる?」
「もっちろんだ!それであいつの鼻を明かし、ギッタンギッタンにしてやろうではないか!」

 ソリトスが探索を得意としている者をひとり貸してくれることになり、エリーシャは口角を上げた。

「あとワインを数本頂きたいわ。ねえお兄様、一本だけでいいの。エメリヨンの瓶とラベルで中身は安物に入れ替えるってできるかしら?」
「なんだ、物騒なこと言って。物理的には可能だが流出したら困るからやらん」
「それをあえてやってほしいの。アレンソア様に渡すから流出は絶対にないわ!あのケチ野郎なら一本しかないエメリヨンを人にあげるとは思えないもの」
「おま・・・ケチ野郎って、どこでそんな言葉覚えたんだ?」
「ふふ。アレンソア様がね、自分の執務を私に押し付けようとするから断ったらそう罵られましたのよ」
「なっ、なんだとぉぉぉ!」

 比較的穏やかな性格の、ソリトスの憤怒の顔は珍しい。
 エリーシャが家族が自分を思い、怒ってくれている事実に胸を暖めている間に、ソリトスはシャトーイグラルドへと走っていった。

「エリーシャ。ソリトス様がものすごい剣幕で走って行ったけど、何があったの?」

 早くも庭でティータイムを楽しんでいた兄嫁が目を丸くしている。

「あれは兄妹愛の為せる技ですわ」

 ぱちんとウインクをして、エリーシャは誤魔化した。

 余計なことを知る必要のない義姉とは、のほほんと美味しい茶菓子の話題だけを楽しみ、日が傾く前に、ソリトスがたんと持たせてくれたワインを馬車に積み込んでツィージャー伯爵家へと家路を急ぐ。

 偽物のエメリヨンを飲んでもきっと気づくことなく、うまいうまいと騙されて飲むだろうアレンソアを思い、帰りの馬車の中でエリーシャは笑いが止まらない。

「はあ、考えただけですっごく楽しいわ!あのケチ野郎がどんな顔で偽物エメリヨンを飲み、褒め称えるのか!この目で見ることができないのが本当に残念だわ」
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