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第14話
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「トルソーが帰ってきてから、密かに父上からいろいろと指導を受けているようなんだが、どう思う?」
アレンソアはまたもイニエラに話していた。
基本、イニエラはアレンソアを全肯定し、他の者はアレンソアの側か、そうでないかしか見ない。
「そうねえ、まずどうしてトルソー様が戻ってきたのかはわかったの?」
「あ、ああ。誰に聞いても私の補佐のためだと言うんだ」
「それならそうなんじゃない?」
「でも怪しいと思わないか?あいつは次男だから好きに生きていいって、継がせるものがない代わりに、学者になりたいならと父上が留学させてやってたんだぞ!それを今更私の補佐?別にトルソーに補佐してもらわんでもいくらでも文官はいるのに」
そう言われると、イニエラも不安になってくる。
「じゃあなぜかしら?」
「それがわからないから気持ち悪いんだよ。ここのところ私の執務もトルソーに回しているらしいし」
さすがに積まれる書類が目に見えて減ってきたことには気がついていた。
「まあでもあまり考えすぎないで!だってアレンが次期伯爵なことは間違いないのだもの。そういえば伯爵様はまだアレンに爵位を譲るって言わないの?」
核心をついた質問、アレンソアはそれを訊かれたくなかったのだが、無自覚なのか、確信犯なのか、ふわふわ笑いながらイニエラは答えをねだった。
「それどころか、数年は次期伯爵として父上の補佐をするように言われたよ」
ギギギと音が聞こえそうなほどに歪な動きで、イニエラの眼球がアレンソアを捉える。
「え?なにそれ?数年ってどういうこと?だって伯爵様も十代で伯爵になったのでしょ?それならアレンが十代のうちに伯爵を譲らなくちゃおかしいじゃない!」
言葉よりその様子にイニエラの怒りを感じ、見間違いかと目を瞬いたあと、恐ろしくなったアレンソアは目を背ける。
「ん。ああ、まあそうなんだが」
いつもならアレンソアもイニエラに同調し、父や妻がどれほどひどいか、早く爵位を渡せなどと盛り上がるのだが、何故だか今はそうしないほうがいいと感じていた。
「だが、実際に今日伯爵にしてやると言われたら、準備が出来ていないのも本当のことだから・・・」
アレンソアは初めてイニエラに言い訳をする。そうしたほうがいいような気がして。
しかしイニエラには聞こえていない。
「伯爵様もあの女も、いつも私の邪魔ばかりして!見てなさいよ」
アレンソアには聞こえないくらい、低い小さな声で独り言を呟くイニエラだった。
アレンソアはまたもイニエラに話していた。
基本、イニエラはアレンソアを全肯定し、他の者はアレンソアの側か、そうでないかしか見ない。
「そうねえ、まずどうしてトルソー様が戻ってきたのかはわかったの?」
「あ、ああ。誰に聞いても私の補佐のためだと言うんだ」
「それならそうなんじゃない?」
「でも怪しいと思わないか?あいつは次男だから好きに生きていいって、継がせるものがない代わりに、学者になりたいならと父上が留学させてやってたんだぞ!それを今更私の補佐?別にトルソーに補佐してもらわんでもいくらでも文官はいるのに」
そう言われると、イニエラも不安になってくる。
「じゃあなぜかしら?」
「それがわからないから気持ち悪いんだよ。ここのところ私の執務もトルソーに回しているらしいし」
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「まあでもあまり考えすぎないで!だってアレンが次期伯爵なことは間違いないのだもの。そういえば伯爵様はまだアレンに爵位を譲るって言わないの?」
核心をついた質問、アレンソアはそれを訊かれたくなかったのだが、無自覚なのか、確信犯なのか、ふわふわ笑いながらイニエラは答えをねだった。
「それどころか、数年は次期伯爵として父上の補佐をするように言われたよ」
ギギギと音が聞こえそうなほどに歪な動きで、イニエラの眼球がアレンソアを捉える。
「え?なにそれ?数年ってどういうこと?だって伯爵様も十代で伯爵になったのでしょ?それならアレンが十代のうちに伯爵を譲らなくちゃおかしいじゃない!」
言葉よりその様子にイニエラの怒りを感じ、見間違いかと目を瞬いたあと、恐ろしくなったアレンソアは目を背ける。
「ん。ああ、まあそうなんだが」
いつもならアレンソアもイニエラに同調し、父や妻がどれほどひどいか、早く爵位を渡せなどと盛り上がるのだが、何故だか今はそうしないほうがいいと感じていた。
「だが、実際に今日伯爵にしてやると言われたら、準備が出来ていないのも本当のことだから・・・」
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