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第6話
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「あれ?今日も義姉上だけですか?」
翌日、久しぶりの帰省だからと暫く滞在することになったトルソーが、執務室に顔を出して首を傾げた。
「・・・兄に渡したいものがあったんですが」
「申し訳ないけど、預かることはできませんわ」
エリーシャたちは互いになるべく顔を合わせないようにしているのだ。
食事の時間も仕事が終わらなかった体であえてずらしている。預かりものなど、いつ渡せるかわからないのだから、自分で渡してもらったほうが早いだろう。
「そうですか」
「ええ、ごめんなさいね。部屋にでも行ってご覧になっては?」
謝る義姉に仕事の邪魔をしたことを詫び、トルソーは勧められたとおりに、兄の部屋へ行くことにしたが。
手に持っているのは兄へ土産だ。
新婚夫婦の部屋には行きづらいと思い、食事のときに持って行ったのだが、昨日の夕飯にも朝飯にも兄は姿を見せなかった。
二日のうち、二日とも執務室にいなかった兄アレンソア。
それを預かることはできないと言う義姉。
「偶々なのかな」
エリーシャの態度も相当素っ気なかった。
年若くまだ婚約者もいないトルソーが見ても、新婚の甘やかさなど微塵も感じないのは政略結婚のせいだろうか?
「いや、あんなに美しい人が妻なら、政略でもうれしいに決まってるよな」
義姉への憧れが無意識に口から漏れ、ハッとして辺りを見回すも、誰もいないことにちょっとホッとする。
執務室にいなかったのはきっと偶々だろうと気を取り直し、トルソーは兄の部屋へと足を早めた。
コンコン
ノックに対する返事はない。
不在かと思い、土産だけ置いて戻ろうと少しドアを開けて驚いた。
カーテンが閉められた室内に寝息が響いているのだ。しかも室内が微かに酒臭い。
トルソーは何故か勢いよくドアを開けてはだめだと、そんな気がして手を止める。
そっと音を立てないようにドアを開け、足音を忍ばせて室内に入ると、無防備に寝入る兄の様子を観察した。
側に寄るとやはり酒の臭いがする。
髭の様子から朝、顔髭剃りもしていないとわかり、まさかの寝坊かと気がついた。
不快感から鼻に皺を寄せたトルソーは、土産を持ったまま踵を返した。
「酒?あんなに臭うほど、一体いつ飲んだんだ?」
ツィージャー伯爵家は、酒は社交に付き合える程度は皆嗜むが、トルソーの記憶でも、両親が翌日臭うほど飲んだことはない。
まして屋敷の夕飯なら尚更、多すぎるほどの飲酒は給仕が止めるはずだ。
湧いてくる疑問にトルソーは混乱していた。
翌日、久しぶりの帰省だからと暫く滞在することになったトルソーが、執務室に顔を出して首を傾げた。
「・・・兄に渡したいものがあったんですが」
「申し訳ないけど、預かることはできませんわ」
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食事の時間も仕事が終わらなかった体であえてずらしている。預かりものなど、いつ渡せるかわからないのだから、自分で渡してもらったほうが早いだろう。
「そうですか」
「ええ、ごめんなさいね。部屋にでも行ってご覧になっては?」
謝る義姉に仕事の邪魔をしたことを詫び、トルソーは勧められたとおりに、兄の部屋へ行くことにしたが。
手に持っているのは兄へ土産だ。
新婚夫婦の部屋には行きづらいと思い、食事のときに持って行ったのだが、昨日の夕飯にも朝飯にも兄は姿を見せなかった。
二日のうち、二日とも執務室にいなかった兄アレンソア。
それを預かることはできないと言う義姉。
「偶々なのかな」
エリーシャの態度も相当素っ気なかった。
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「いや、あんなに美しい人が妻なら、政略でもうれしいに決まってるよな」
義姉への憧れが無意識に口から漏れ、ハッとして辺りを見回すも、誰もいないことにちょっとホッとする。
執務室にいなかったのはきっと偶々だろうと気を取り直し、トルソーは兄の部屋へと足を早めた。
コンコン
ノックに対する返事はない。
不在かと思い、土産だけ置いて戻ろうと少しドアを開けて驚いた。
カーテンが閉められた室内に寝息が響いているのだ。しかも室内が微かに酒臭い。
トルソーは何故か勢いよくドアを開けてはだめだと、そんな気がして手を止める。
そっと音を立てないようにドアを開け、足音を忍ばせて室内に入ると、無防備に寝入る兄の様子を観察した。
側に寄るとやはり酒の臭いがする。
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不快感から鼻に皺を寄せたトルソーは、土産を持ったまま踵を返した。
「酒?あんなに臭うほど、一体いつ飲んだんだ?」
ツィージャー伯爵家は、酒は社交に付き合える程度は皆嗜むが、トルソーの記憶でも、両親が翌日臭うほど飲んだことはない。
まして屋敷の夕飯なら尚更、多すぎるほどの飲酒は給仕が止めるはずだ。
湧いてくる疑問にトルソーは混乱していた。
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