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第27話

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 トーソルドは、驚いて戸惑いを隠せない。

「フィーどうしたんだ?私はフィーを心から愛している。フィーだってそう言ってくれただろう?」
「私が愛していたのは、伯爵令息でみんながうらやましがる近衛騎士よ。辺境騎士団なんて落ちぶれるから、私まで笑い者にされたわ!」
「そ、そんな・・・」

 トーソルドは愕然とする。しかし歩けないのでルイーフに詰め寄ることもできなかった。

「あの、こちらにお荷物を運んでもよろしいでしょうか?」

 御者が気まずそうに二人の口論に口を挟むと

「冗談じゃないわ!絶対に入れさせない!私の家に一歩だって踏み込ませるものですか」

 そう言って、ルイーフは玄関のドアをバタンと音を立てて閉め、ガチャリと鍵を締めた。
 困り果てた御者がドアを叩いてみるも、うんともすんとも言わない。しばらくドアを叩き続けたが、ルイーフは徹底的に無視を決め込むことにしたのだ。

「あの、どう致しましょうか」

 トーソルドは今自分に起きていることが信じられなかった。
学院時代から蕩けるように愛しあってきたルイーフが、汚らわしいゴミでも見るような目で自分を見たことも、罵られたことも。

『私が愛していたのは、伯爵令息でみんながうらやましがる近衛騎士よ。辺境騎士団なんて落ちぶれるから、私までいい笑い者にされたわ!』

 ルイーフの怒鳴り声が頭の中に蘇る。

 辺境にやられてからも、年に2回の長期休暇にはルイーフの元に戻っていた。移動に時間がかかるため2日しか居られないが、そのときは何も変わらずに愛しあって。

 ─愛しあっていると思っていたが、違ったのだろうか?近衛でなくなった私のせいで笑い者にされ・・た?─

「ううう・・・」

 みっともなく涙がこみ上げてくる。
ルイーフを選び続けたからこそ、近衛の地位を失ったのだ。辺境にやられ、この体になってしまった。
 だというのにルイーフは・・・。

「あの、申し訳ないのですが、本当にそろそろどうなさるか決めてもらえないでしょうか」

 溢れんばかりに涙をためた目で御者を見たトーソルドは、アニエラのいる自分の屋敷へ連れて行くよう呟いた。
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