27 / 42
第27話
しおりを挟む
トーソルドは、驚いて戸惑いを隠せない。
「フィーどうしたんだ?私はフィーを心から愛している。フィーだってそう言ってくれただろう?」
「私が愛していたのは、伯爵令息でみんながうらやましがる近衛騎士よ。辺境騎士団なんて落ちぶれるから、私まで笑い者にされたわ!」
「そ、そんな・・・」
トーソルドは愕然とする。しかし歩けないのでルイーフに詰め寄ることもできなかった。
「あの、こちらにお荷物を運んでもよろしいでしょうか?」
御者が気まずそうに二人の口論に口を挟むと
「冗談じゃないわ!絶対に入れさせない!私の家に一歩だって踏み込ませるものですか」
そう言って、ルイーフは玄関のドアをバタンと音を立てて閉め、ガチャリと鍵を締めた。
困り果てた御者がドアを叩いてみるも、うんともすんとも言わない。しばらくドアを叩き続けたが、ルイーフは徹底的に無視を決め込むことにしたのだ。
「あの、どう致しましょうか」
トーソルドは今自分に起きていることが信じられなかった。
学院時代から蕩けるように愛しあってきたルイーフが、汚らわしいゴミでも見るような目で自分を見たことも、罵られたことも。
『私が愛していたのは、伯爵令息でみんながうらやましがる近衛騎士よ。辺境騎士団なんて落ちぶれるから、私までいい笑い者にされたわ!』
ルイーフの怒鳴り声が頭の中に蘇る。
辺境にやられてからも、年に2回の長期休暇にはルイーフの元に戻っていた。移動に時間がかかるため2日しか居られないが、そのときは何も変わらずに愛しあって。
─愛しあっていると思っていたが、違ったのだろうか?近衛でなくなった私のせいで笑い者にされ・・た?─
「ううう・・・」
みっともなく涙がこみ上げてくる。
ルイーフを選び続けたからこそ、近衛の地位を失ったのだ。辺境にやられ、この体になってしまった。
だというのにルイーフは・・・。
「あの、申し訳ないのですが、本当にそろそろどうなさるか決めてもらえないでしょうか」
溢れんばかりに涙をためた目で御者を見たトーソルドは、アニエラのいる自分の屋敷へ連れて行くよう呟いた。
「フィーどうしたんだ?私はフィーを心から愛している。フィーだってそう言ってくれただろう?」
「私が愛していたのは、伯爵令息でみんながうらやましがる近衛騎士よ。辺境騎士団なんて落ちぶれるから、私まで笑い者にされたわ!」
「そ、そんな・・・」
トーソルドは愕然とする。しかし歩けないのでルイーフに詰め寄ることもできなかった。
「あの、こちらにお荷物を運んでもよろしいでしょうか?」
御者が気まずそうに二人の口論に口を挟むと
「冗談じゃないわ!絶対に入れさせない!私の家に一歩だって踏み込ませるものですか」
そう言って、ルイーフは玄関のドアをバタンと音を立てて閉め、ガチャリと鍵を締めた。
困り果てた御者がドアを叩いてみるも、うんともすんとも言わない。しばらくドアを叩き続けたが、ルイーフは徹底的に無視を決め込むことにしたのだ。
「あの、どう致しましょうか」
トーソルドは今自分に起きていることが信じられなかった。
学院時代から蕩けるように愛しあってきたルイーフが、汚らわしいゴミでも見るような目で自分を見たことも、罵られたことも。
『私が愛していたのは、伯爵令息でみんながうらやましがる近衛騎士よ。辺境騎士団なんて落ちぶれるから、私までいい笑い者にされたわ!』
ルイーフの怒鳴り声が頭の中に蘇る。
辺境にやられてからも、年に2回の長期休暇にはルイーフの元に戻っていた。移動に時間がかかるため2日しか居られないが、そのときは何も変わらずに愛しあって。
─愛しあっていると思っていたが、違ったのだろうか?近衛でなくなった私のせいで笑い者にされ・・た?─
「ううう・・・」
みっともなく涙がこみ上げてくる。
ルイーフを選び続けたからこそ、近衛の地位を失ったのだ。辺境にやられ、この体になってしまった。
だというのにルイーフは・・・。
「あの、申し訳ないのですが、本当にそろそろどうなさるか決めてもらえないでしょうか」
溢れんばかりに涙をためた目で御者を見たトーソルドは、アニエラのいる自分の屋敷へ連れて行くよう呟いた。
25
お気に入りに追加
3,202
あなたにおすすめの小説
必要ないと言われたので、元の日常に戻ります
黒木 楓
恋愛
私エレナは、3年間城で新たな聖女として暮らすも、突如「聖女は必要ない」と言われてしまう。
前の聖女の人は必死にルドロス国に加護を与えていたようで、私は魔力があるから問題なく加護を与えていた。
その違いから、「もう加護がなくても大丈夫だ」と思われたようで、私を追い出したいらしい。
森の中にある家で暮らしていた私は元の日常に戻り、国の異変を確認しながら過ごすことにする。
数日後――私の忠告通り、加護を失ったルドロス国は凶暴なモンスターによる被害を受け始める。
そして「助けてくれ」と城に居た人が何度も頼みに来るけど、私は動く気がなかった。
【完結】離縁の理由は愛されたいと思ったからです
さこの
恋愛
①私のプライバシー、プライベートに侵害する事は許さない
②白い結婚とする
③アグネスを虐めてはならない
④侯爵家の夫人として務めよ
⑤私の金の使い道に異論は唱えない
⑥王家主催のパーティー以外出席はしない
私に愛されたいと思うなよ? 結婚前の契約でした。
私は十六歳。相手は二十四歳の年の差婚でした。
結婚式に憧れていたのに……
ホットランキング入りありがとうございます
2022/03/27
婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~
春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。
6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。
14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します!
前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。
【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】
二人の妻に愛されていたはずだった
ぽんちゃん
恋愛
傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。
二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。
アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。
アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。
何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。
全二十八話。
十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)
(完)僕は醜すぎて愛せないでしょう? と俯く夫。まさか、貴男はむしろイケメン最高じゃないの!
青空一夏
恋愛
私は不幸だと自分を思ったことがない。大体が良い方にしか考えられないし、天然とも言われるけれどこれでいいと思っているの。
お父様に婚約者を押しつけられた時も、途中でそれを妹に譲ってまた返された時も、全ては考え方次第だと思うわ。
だって、生きてるだけでもこの世は楽しい!
これはそんなヒロインが楽しく生きていくうちに自然にざまぁな仕返しをしてしまっているコメディ路線のお話です。
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。転生者の天然無双物語。
妹に人生を狂わされた代わりに、ハイスペックな夫が出来ました
コトミ
恋愛
子爵令嬢のソフィアは成人する直前に婚約者に浮気をされ婚約破棄を告げられた。そしてその婚約者を奪ったのはソフィアの妹であるミアだった。ミアや周りの人間に散々に罵倒され、元婚約者にビンタまでされ、何も考えられなくなったソフィアは屋敷から逃げ出した。すぐに追いつかれて屋敷に連れ戻されると覚悟していたソフィアは一人の青年に助けられ、屋敷で一晩を過ごす。その後にその青年と…
【完結】本当に私と結婚したいの?
横居花琉
恋愛
ウィリアム王子には公爵令嬢のセシリアという婚約者がいたが、彼はパメラという令嬢にご執心だった。
王命による婚約なのにセシリアとの結婚に乗り気でないことは明らかだった。
困ったセシリアは王妃に相談することにした。
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる