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第11話

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 会議が終わったあと、テューリンとトリアはすぐにジャブリックと帰って行ったが、ジュールはのんびりと茶を飲んでいる。

「アニエラはこのままでいいのかい?」
「と申しますと?」
「まだ若いのだから、嫌なら弟と別れて新しい暮らしをしてもいいと思うんだが」
「・・・」

 小首を傾げて考える仕草が小鳥のように可愛らしいと、ジュールは見惚れていた。

「でも帰ったらまたどこかに嫁がされますわ。次はすごーく年上の再婚のお方になるでしょうし、それくらいならトーソルド様のお金でこのまま気楽に暮らします」

 ふふっと笑ったアニエラは、楽しげにそう答える。

「それもそうだな、ではここでのんびりと暮せばいい。私たちロイリー家がついている」


 ─こんなにも可愛らしいアニエラを、トーソルドはなぜここまで蔑ろにするんだろうか。私でさえ大切にしてやりたいと思うのに─


 ジュールはアニエラのくるくると変わる表情を楽しげに見つめながら、気づくとそんなことを考えていた。

 ─あ!いやいや私は何を考えているんだ!─

 ジュールはしばらく前に婚約者を病で亡くし、今は喪に服している。
10代で婚約してすぐ病に倒れた婚約者は侯爵令嬢で、見かけたジュールを気に入った令嬢からの申し入れだった。
長い闘病で交流がもともと少なかったこともあり、ふたりの成人を控えた頃にさすがに婚姻継続は困難では?とロイリー家から解消を打診したこともあったのだが。
「ジュール様との結婚は生きる希望、取り上げられたら死ぬしかない」とまで言われて破談することができなかった。
 なまじ財力のある侯爵家は莫大な金をかけて医療の手を尽くし、令嬢は行きつ戻りつをくり返して、ジュールは二十代後半を迎えてしまう。
 結局最期までしがみつかれたまま今年の春先に亡くなり、今に至っていた。


 ─こんなにも可愛らしく、健康な妻がいると言うのに一体何が不満なのだ!私なら─

 ジュールは妻を顧みない愚かな弟に、怒りを溜めていた。
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