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第4章
第76話 断罪6
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「沙汰を下す。
平民ミイヤはソイスト侯爵令嬢ユートリーに毒を盛り殺害未遂、また侯爵家乗っ取りを企てた罪により絞首刑とする」
またもミイヤが「ギャッ」と叫んで倒れた。
誰かが助け起こすこともなく、そのまま放置されているが、マーカスもリラもサルジャンも、動揺一つ見せずにそれを見ているだけ。
「キャロラ、トローザー。
第二王子ナイジェルス、ソイスト侯爵令嬢ユートリーの暗殺を企てたことは明白。王族への謀略は命をもって償うしかない。
この場にいないターナル伯爵家も一家連座だ。今後この件に関し、ターナル伯爵家に協力していた家門が判明した場合すべて同罪とし、毒杯を授ける」
「うそ!まさか陛下そんなの嘘ですよね?だって陛下はこのキャロラを愛して下さっておりますもの」
我に返ったキャロラが王に媚びるように小首を傾げて訊ねたが。
「もうおまえの媚びた面は見飽きた。余の大切なナイジェルスに手を出すとは。そうだ!おまえたちがユートリー嬢に飲ませようとした毒、あれを其方らに授けてやろう。残酷な毒と呼ばれているらしいな、その効果のほど、よく知っているだろう?」
トローザーが顔を引き攣らせた。
あの毒を効果を知った上で探したのは、誰あろうトローザーだ。見てわかるほどガクガクと震え出す。
「ち、ちちうぇ、それは、お、おゆるしく、くださ」
拝むように手を合わせ、頭を下げるトローザーにも、王は一切手を緩めることはなかった。
「身の程を弁え、くだらんことをせずに婿にでも行っておけばよかったものを、まったく愚かな者だ」
トローザーはハッとした。
メラルダ・サーブリン公爵令嬢との婚約話が進んでいたのだ。
「あの、サーブリン公爵家にむ、婿に参りますっ!メラルダ嬢との約束を果たしに」
そうだ!メラルダとの、サーブリン家との婚約は無碍に出来るものではない。
嫁に貰うのではなく、婿に行けば助かるかもしれないと、ドローザーは光を掴んだ気がしてうっすら微笑んだが。
「トローザー。おまえはどこまで愚かなのだ?先王妹の血筋であるサーブリン家が、正統な第二王子ナイジェルスを殺そうとしたおまえなど、望むわけがなかろう。
おまえたちの謀略がわかったから、今日まで婚約の調印を交わさずにいたのだ。
サーブリン公爵もメラルダ嬢から婚約について訊ねられていたそうだが、事情を報せたところ、メラルダ嬢もそのような者との婚約は難しいと申したそうだ。
だから安心するが良い、約束を違えることはないのだからな」
想いを通わせていると思っていたメラルダからの掌返しに、トローザーは膝をついた。
「そんな・・・」
可愛がっていたはずの末王子へ、これでもかとその希望を打ち砕いていく王の姿に、王妃は満足気な微笑みを浮かべている。
「ターナル伯爵一族を捕縛し、地下牢に入れろ。一応尋問は行うが、罪状と与える処罰に変更はないと心得よ。
毒杯の準備を。すぐには死ねないらしいから皆共に遠き旅に出られるよう、早めに授けてやるからありがたく思え」
王笏で床をドンドンと二回叩く。
話は終わりという合図だ。
意識のないミイヤと座り込んだトローザー、キャロラに至っては深く項垂れて歩くこともままならないほど。衛兵たちが脇に腕を差し込んで、ずるずると引きずって出て行った。
ふぅ。
誰かのため息が聞こえた。
「いろいろと疲れましたわね。気分直しに、茶でも用意させましょう」
王妃が女官を呼び、庭に茶の用意をさせると、全員で庭園に出て気分の切り替えを図った。
「いい香りですわ」
まだ顔色の悪いリラが、王妃に微笑みかける。
「これで漸く穏やかな毎日が取り戻せましたわね」
大切なこどもたちを失うかもしれなかった二人の母は、手を携えて、今度こそ本当に心の底から朗らかに笑いあった。
平民ミイヤはソイスト侯爵令嬢ユートリーに毒を盛り殺害未遂、また侯爵家乗っ取りを企てた罪により絞首刑とする」
またもミイヤが「ギャッ」と叫んで倒れた。
誰かが助け起こすこともなく、そのまま放置されているが、マーカスもリラもサルジャンも、動揺一つ見せずにそれを見ているだけ。
「キャロラ、トローザー。
第二王子ナイジェルス、ソイスト侯爵令嬢ユートリーの暗殺を企てたことは明白。王族への謀略は命をもって償うしかない。
この場にいないターナル伯爵家も一家連座だ。今後この件に関し、ターナル伯爵家に協力していた家門が判明した場合すべて同罪とし、毒杯を授ける」
「うそ!まさか陛下そんなの嘘ですよね?だって陛下はこのキャロラを愛して下さっておりますもの」
我に返ったキャロラが王に媚びるように小首を傾げて訊ねたが。
「もうおまえの媚びた面は見飽きた。余の大切なナイジェルスに手を出すとは。そうだ!おまえたちがユートリー嬢に飲ませようとした毒、あれを其方らに授けてやろう。残酷な毒と呼ばれているらしいな、その効果のほど、よく知っているだろう?」
トローザーが顔を引き攣らせた。
あの毒を効果を知った上で探したのは、誰あろうトローザーだ。見てわかるほどガクガクと震え出す。
「ち、ちちうぇ、それは、お、おゆるしく、くださ」
拝むように手を合わせ、頭を下げるトローザーにも、王は一切手を緩めることはなかった。
「身の程を弁え、くだらんことをせずに婿にでも行っておけばよかったものを、まったく愚かな者だ」
トローザーはハッとした。
メラルダ・サーブリン公爵令嬢との婚約話が進んでいたのだ。
「あの、サーブリン公爵家にむ、婿に参りますっ!メラルダ嬢との約束を果たしに」
そうだ!メラルダとの、サーブリン家との婚約は無碍に出来るものではない。
嫁に貰うのではなく、婿に行けば助かるかもしれないと、ドローザーは光を掴んだ気がしてうっすら微笑んだが。
「トローザー。おまえはどこまで愚かなのだ?先王妹の血筋であるサーブリン家が、正統な第二王子ナイジェルスを殺そうとしたおまえなど、望むわけがなかろう。
おまえたちの謀略がわかったから、今日まで婚約の調印を交わさずにいたのだ。
サーブリン公爵もメラルダ嬢から婚約について訊ねられていたそうだが、事情を報せたところ、メラルダ嬢もそのような者との婚約は難しいと申したそうだ。
だから安心するが良い、約束を違えることはないのだからな」
想いを通わせていると思っていたメラルダからの掌返しに、トローザーは膝をついた。
「そんな・・・」
可愛がっていたはずの末王子へ、これでもかとその希望を打ち砕いていく王の姿に、王妃は満足気な微笑みを浮かべている。
「ターナル伯爵一族を捕縛し、地下牢に入れろ。一応尋問は行うが、罪状と与える処罰に変更はないと心得よ。
毒杯の準備を。すぐには死ねないらしいから皆共に遠き旅に出られるよう、早めに授けてやるからありがたく思え」
王笏で床をドンドンと二回叩く。
話は終わりという合図だ。
意識のないミイヤと座り込んだトローザー、キャロラに至っては深く項垂れて歩くこともままならないほど。衛兵たちが脇に腕を差し込んで、ずるずると引きずって出て行った。
ふぅ。
誰かのため息が聞こえた。
「いろいろと疲れましたわね。気分直しに、茶でも用意させましょう」
王妃が女官を呼び、庭に茶の用意をさせると、全員で庭園に出て気分の切り替えを図った。
「いい香りですわ」
まだ顔色の悪いリラが、王妃に微笑みかける。
「これで漸く穏やかな毎日が取り戻せましたわね」
大切なこどもたちを失うかもしれなかった二人の母は、手を携えて、今度こそ本当に心の底から朗らかに笑いあった。
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