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第3章
第54話 部屋捜索
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ソイスト侯爵家では、ほとんどの使用人たちがユートリーの密葬の準備に追われていた。密葬をした10日後にお別れの会の日程を発表すること、とりあえず今宵が通夜、明日家族のみで葬式の上埋葬と使用人たちに知らされた。
タラは看病疲れとショックが大きく、また何らかの病が感染っていないか確認するため暫くマベルの元で隔離すると、スチューが使用人たちに説明して。
しかしタラは暗部の者とミイヤの部屋を家探し中だ。部屋の廊下に繋がる所は目立たぬよう衛兵が立ち、誰も迂闊に入り込まないように目を光らせていた。
暗部の者はさすがに手際よく探し回り、掌に収まるほど小さく畳まれた赤と白の油紙の包みを見つけ出した。白い包みは二つつ、赤い包みは五つ残っていた。
それだけではない、読んだら捨てるように書かれたトローザーからの書状も何通か。
「これでいいだろう、片付けよう」
部屋を探った痕跡を見つけられないように、徹底的に元に戻していく。
紙包みの中身を小麦粉と入れ替え、手紙も急いで写しを作らせてその写しを引き出しの底に戻す。
トローザー王子の筆跡に似せたそれは、贋物だとは毎日でも眺めていない限りわからないだろうと、作成したヨイルがニヤリと笑いながら折りたたみ、贋作の封筒に戻し入れた。
「ではそろそろ引き上げようかね」
サルジャンが広間を見渡して誰かを探している。
「誰かミイヤを見なかったか?」
本当はいないと知っているのだが。
「母上がお倒れになって葬儀に出られないかもしれんというのに、こんな時に何処へ行ったんだ」
使用人の一部はミイヤがユートリーの死にどういう反応を見せ、この状況でありながら出かけて行ったことを知っている。
それを見込んだサルジャンは、さらに印象づけるために大きな声でミイヤを探し回ったのだ。
「やっぱりミイヤ様はユートリー様を悼む気持ちもないのね。そうでなければこんな時に出歩いて帰ってこないなんてありえないもの」
「どういう神経かしら!引き取って育ててもらったのに。ユートリー様にはあんなに可愛がって頂いていたというのに」
「本当にね。可愛らしいご令嬢だと思っていたけど恐ろしい方だわ」
いつもならこんな噂話はスチューが注意してまわるところだが、まるでメイドの声が聞こえないかのようにその前を通り過ぎていく。
執事として侯爵一家を守るためにメイドの噂話を広め、屋敷内で自然発生的にミイヤを孤立させる仕事に励んでいるところであった。
使用人たちがミイヤに対して大なり小なり敵対心を持ち始めた頃、帰館したミイヤはその雰囲気が一新したことには気づいたが、葬儀の準備のためだと考えて注意を払わなかった。
使用人たちの控室でまったりとサボっていたミイヤの侍女も似たようなもので、ユートリーが身罷り、葬儀の支度に追われている皆を見ても「ほぼ終わっているから手伝うこともなさそう」とそそくさとミイヤと部屋へ戻ってしまう。
いつしかミイヤとそれに付き従う侍女たちには、古参の使用人たちから呆れや憎しみの籠もった視線が投げつけられていた。
タラは看病疲れとショックが大きく、また何らかの病が感染っていないか確認するため暫くマベルの元で隔離すると、スチューが使用人たちに説明して。
しかしタラは暗部の者とミイヤの部屋を家探し中だ。部屋の廊下に繋がる所は目立たぬよう衛兵が立ち、誰も迂闊に入り込まないように目を光らせていた。
暗部の者はさすがに手際よく探し回り、掌に収まるほど小さく畳まれた赤と白の油紙の包みを見つけ出した。白い包みは二つつ、赤い包みは五つ残っていた。
それだけではない、読んだら捨てるように書かれたトローザーからの書状も何通か。
「これでいいだろう、片付けよう」
部屋を探った痕跡を見つけられないように、徹底的に元に戻していく。
紙包みの中身を小麦粉と入れ替え、手紙も急いで写しを作らせてその写しを引き出しの底に戻す。
トローザー王子の筆跡に似せたそれは、贋物だとは毎日でも眺めていない限りわからないだろうと、作成したヨイルがニヤリと笑いながら折りたたみ、贋作の封筒に戻し入れた。
「ではそろそろ引き上げようかね」
サルジャンが広間を見渡して誰かを探している。
「誰かミイヤを見なかったか?」
本当はいないと知っているのだが。
「母上がお倒れになって葬儀に出られないかもしれんというのに、こんな時に何処へ行ったんだ」
使用人の一部はミイヤがユートリーの死にどういう反応を見せ、この状況でありながら出かけて行ったことを知っている。
それを見込んだサルジャンは、さらに印象づけるために大きな声でミイヤを探し回ったのだ。
「やっぱりミイヤ様はユートリー様を悼む気持ちもないのね。そうでなければこんな時に出歩いて帰ってこないなんてありえないもの」
「どういう神経かしら!引き取って育ててもらったのに。ユートリー様にはあんなに可愛がって頂いていたというのに」
「本当にね。可愛らしいご令嬢だと思っていたけど恐ろしい方だわ」
いつもならこんな噂話はスチューが注意してまわるところだが、まるでメイドの声が聞こえないかのようにその前を通り過ぎていく。
執事として侯爵一家を守るためにメイドの噂話を広め、屋敷内で自然発生的にミイヤを孤立させる仕事に励んでいるところであった。
使用人たちがミイヤに対して大なり小なり敵対心を持ち始めた頃、帰館したミイヤはその雰囲気が一新したことには気づいたが、葬儀の準備のためだと考えて注意を払わなかった。
使用人たちの控室でまったりとサボっていたミイヤの侍女も似たようなもので、ユートリーが身罷り、葬儀の支度に追われている皆を見ても「ほぼ終わっているから手伝うこともなさそう」とそそくさとミイヤと部屋へ戻ってしまう。
いつしかミイヤとそれに付き従う侍女たちには、古参の使用人たちから呆れや憎しみの籠もった視線が投げつけられていた。
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