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第3章
第51話 ユートリーの決意
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「これを父から預かりましたわ」
屋敷の小ぶりな執務室に入ると、マーカスがここまでの状況と今後の計画を書いて寄越したものを、ユートリーが手渡してやる。
すぐに開いて読み出したナイジェルスの額に皺が寄せられた。
「ミイヤ嬢がまさかこんなことを考えていたなんて。トリー、君は大丈夫か?」
「ええ。私はもうとうに気持ちを切り替えましたわ。でもお母様は今日初めて知らされたので」
「そう・・か。可愛がっていらしたからな、お気の毒なことだ。そのことについて話はしたのかい?」
「いえ・・・。でもミイヤに対して相当怒っていらっしゃるのはわかりました」
「そうか、悲しむより激しく怒るほうが良いかもしれないな。その方が力になる。我らは労ってやろう」
そう言ってから暫く黙り込む。
考え事だろうと見守ったユートリーに、ナイジェルスは驚くようなことを告げた。
「私と婚約したばかりに・・・すまなかった」
「な、何を仰いますの!私はどんなことが起きたとしてもナイジェルス様に寄り添って生きると決めておりますの、謝ったりなさらないで!これは私たちが婚約したからではなく、ミイヤが不心得者だから起きたことで、ナイジェルス様にも私にも殺されねばならないような落ち度はこれっぽっちだってございませんわ」
そう断言したユートリーは、それまでのナイジェルスが知る楚々とした令嬢とは思えないほどの力強さで、ナイジェルスは一瞬呆然とした。
しかしユートリーの自分への強い想いに触れて、心の奥底に熱いものが湧き上がってくる。
「トリー、私もこれから先何があろうとトリーと生きる!生き抜いて、そしてトリーを守り抜いてみせると約束する」
「はい、私も。ナイジェルス様を私なりのやり方でお守りしお支えすると誓います。一生を賭して」
一度失ったものを奇跡的にもう一度取り戻せたのだ。
ユートリーは二度と誰にも手出しをさせてなるものかと、自分とナイジェルスを害そうとする者はどんな手段を使ってでも、どんな相手であったとしても、取り除いてみせると決めていた。
─奇跡・・・。時が戻ったなんて、やっぱり信じられない。あまりに不条理な殺され方だったから神様がかわいそうに思って下さったのかしら?それでもいい。私もナイジェルス様も今生きてここにいる、私たちを害そうとしたすべてがまさか夢だったなんてこと・・・ないわよね─
ミイヤが自分に毒を盛り、ナイジェルスが殺されかけたのは実際に起きたこと。確かめるよう、ユートリーは自分の手の甲をつねってみた。
─守られるだけの令嬢でいては、大切な人を守れない。今度は自分も大切な人々も守ってみせるわ!─
死線を乗り越えてきたユートリーは、今なら鬼にもなってみせようと。今度は自分たちを死に至らしめた者たちがその恐怖に怯える番だと、白く小さな掌を握りしめた。
屋敷の小ぶりな執務室に入ると、マーカスがここまでの状況と今後の計画を書いて寄越したものを、ユートリーが手渡してやる。
すぐに開いて読み出したナイジェルスの額に皺が寄せられた。
「ミイヤ嬢がまさかこんなことを考えていたなんて。トリー、君は大丈夫か?」
「ええ。私はもうとうに気持ちを切り替えましたわ。でもお母様は今日初めて知らされたので」
「そう・・か。可愛がっていらしたからな、お気の毒なことだ。そのことについて話はしたのかい?」
「いえ・・・。でもミイヤに対して相当怒っていらっしゃるのはわかりました」
「そうか、悲しむより激しく怒るほうが良いかもしれないな。その方が力になる。我らは労ってやろう」
そう言ってから暫く黙り込む。
考え事だろうと見守ったユートリーに、ナイジェルスは驚くようなことを告げた。
「私と婚約したばかりに・・・すまなかった」
「な、何を仰いますの!私はどんなことが起きたとしてもナイジェルス様に寄り添って生きると決めておりますの、謝ったりなさらないで!これは私たちが婚約したからではなく、ミイヤが不心得者だから起きたことで、ナイジェルス様にも私にも殺されねばならないような落ち度はこれっぽっちだってございませんわ」
そう断言したユートリーは、それまでのナイジェルスが知る楚々とした令嬢とは思えないほどの力強さで、ナイジェルスは一瞬呆然とした。
しかしユートリーの自分への強い想いに触れて、心の奥底に熱いものが湧き上がってくる。
「トリー、私もこれから先何があろうとトリーと生きる!生き抜いて、そしてトリーを守り抜いてみせると約束する」
「はい、私も。ナイジェルス様を私なりのやり方でお守りしお支えすると誓います。一生を賭して」
一度失ったものを奇跡的にもう一度取り戻せたのだ。
ユートリーは二度と誰にも手出しをさせてなるものかと、自分とナイジェルスを害そうとする者はどんな手段を使ってでも、どんな相手であったとしても、取り除いてみせると決めていた。
─奇跡・・・。時が戻ったなんて、やっぱり信じられない。あまりに不条理な殺され方だったから神様がかわいそうに思って下さったのかしら?それでもいい。私もナイジェルス様も今生きてここにいる、私たちを害そうとしたすべてがまさか夢だったなんてこと・・・ないわよね─
ミイヤが自分に毒を盛り、ナイジェルスが殺されかけたのは実際に起きたこと。確かめるよう、ユートリーは自分の手の甲をつねってみた。
─守られるだけの令嬢でいては、大切な人を守れない。今度は自分も大切な人々も守ってみせるわ!─
死線を乗り越えてきたユートリーは、今なら鬼にもなってみせようと。今度は自分たちを死に至らしめた者たちがその恐怖に怯える番だと、白く小さな掌を握りしめた。
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