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第1章
第34話 決行の日
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その朝、浅い眠りだったせいか、マーカスはいつになく早い時間に目が覚め、隣に眠るリラをぼんやりと見つめていた。
ユートリーの蝋人形ほどではないが、リラも酷くやつれて目の下にクマが出ている。
本当のことを話したらどれほど怒るだろうと不安もあるが、ユートリーを守るためには仕方がなかったときっとわかってくれる。そうすべてうまく行くと信じて、ベッドから起き出すと窓辺で神に祈りを捧げた。
マーカスとは違い、サルジャンはやるべきことはやったと心配せずによく眠った。
目覚めもすっきり、気力は満ち溢れていて、きっと上手くいくと自信を持つことができた。
ミイヤが出かけたらすぐ、屋敷に残ったミイヤの侍女たちも使いに出す。茶会からミイヤが帰るまで何かを気取られて、連絡などされては困るから。
そこは侍女長と相談済だ。
─大丈夫、上手くいくから心配するなよ。やりきるんだサルジャン!─
次期侯爵は、絶対に失敗できない重大な任務に自分を鼓舞していた。
その日ミイヤはいつになく丁寧に髪を巻いてもらった。
今日は「あと少しですべてうまくいく」と、トローザー殿下に話す日なのだ。
─きっとすごく喜んでくださるわ!姉様、いえユートリーが死ねば、いよいよ私は王子の婚約者!─
意気揚々と馬車に乗り込む姿をサルジャンはその目で確かめた。
「よしっ、行ったな」
あとは侍女長がミイヤについている侍女とメイドを使いに出せば。
「では頼みますよ。あ、そうだわ。ミイヤ様もお出かけされていることだし、いつも頑張ってくれているから夜までに帰ってくればいいわ。ミイヤ様のお帰りも遅いそうだし。でも他の者たちには秘密よ」
そう言って侍女長が侍女とメイドを裏口から送り出している。
「ルイーサ、手筈はどうだ?」
「サルジャン様もう大丈夫ですわ。日暮れまでは戻りません」
「よし、では母上をトリーの部屋へお連れしてくれ」
いつもは屋敷の中を走るなんてとんでもないと口うるさい侍女長ルイーサが、スカートを摘んで走り出し、リラの部屋の扉をノックした。
「リラ様、よろしいでしょうか!至急ご対応頂きたいことがございます」
「どうぞ」と返事が聞こえると、部屋に飛び込む。
「ルイーサ、どうしたの?そんなに慌てて、まさかユートリーに何か?」
「ユートリー様は大丈夫ですがリラ様、本当に時間がないのです、お急ぎ下さいまし」
不審げなリラを座り心地の良いソファから引きずり出すようにして着替をさせ、髪を手早くまとめて薄く化粧を施すと手を引くように廊下に出す。
「ねえ、ルイーサってばどうしたの!」
「いいから私を信じてついてきてください!時間がないのですよリラ様」
ずんずんと先を歩くルイーサに仕方なくついていくと、途中、マーカスの執務室に寄ってユートリーの部屋へと誘った。
「おお、リラ!今行く」
「貴方、一体どうなっているの!ねえトリーに何か」
「詳しいことはトリーの部屋で話すから、今は急ごう」
マーカスまで急げ急げとリラを追い立てる。
「ねえっ!トリーは本当に大丈夫なの?」
パニックを起こしたリラが立ち止まって叫ぶと、マーカスも足を止めた。
「トリーは本当に無事だ、会えばわかる。しかし時間がないのも本当だ。重大なことが起きているんだよ、頼むから急いでくれ」
ユートリーの蝋人形ほどではないが、リラも酷くやつれて目の下にクマが出ている。
本当のことを話したらどれほど怒るだろうと不安もあるが、ユートリーを守るためには仕方がなかったときっとわかってくれる。そうすべてうまく行くと信じて、ベッドから起き出すと窓辺で神に祈りを捧げた。
マーカスとは違い、サルジャンはやるべきことはやったと心配せずによく眠った。
目覚めもすっきり、気力は満ち溢れていて、きっと上手くいくと自信を持つことができた。
ミイヤが出かけたらすぐ、屋敷に残ったミイヤの侍女たちも使いに出す。茶会からミイヤが帰るまで何かを気取られて、連絡などされては困るから。
そこは侍女長と相談済だ。
─大丈夫、上手くいくから心配するなよ。やりきるんだサルジャン!─
次期侯爵は、絶対に失敗できない重大な任務に自分を鼓舞していた。
その日ミイヤはいつになく丁寧に髪を巻いてもらった。
今日は「あと少しですべてうまくいく」と、トローザー殿下に話す日なのだ。
─きっとすごく喜んでくださるわ!姉様、いえユートリーが死ねば、いよいよ私は王子の婚約者!─
意気揚々と馬車に乗り込む姿をサルジャンはその目で確かめた。
「よしっ、行ったな」
あとは侍女長がミイヤについている侍女とメイドを使いに出せば。
「では頼みますよ。あ、そうだわ。ミイヤ様もお出かけされていることだし、いつも頑張ってくれているから夜までに帰ってくればいいわ。ミイヤ様のお帰りも遅いそうだし。でも他の者たちには秘密よ」
そう言って侍女長が侍女とメイドを裏口から送り出している。
「ルイーサ、手筈はどうだ?」
「サルジャン様もう大丈夫ですわ。日暮れまでは戻りません」
「よし、では母上をトリーの部屋へお連れしてくれ」
いつもは屋敷の中を走るなんてとんでもないと口うるさい侍女長ルイーサが、スカートを摘んで走り出し、リラの部屋の扉をノックした。
「リラ様、よろしいでしょうか!至急ご対応頂きたいことがございます」
「どうぞ」と返事が聞こえると、部屋に飛び込む。
「ルイーサ、どうしたの?そんなに慌てて、まさかユートリーに何か?」
「ユートリー様は大丈夫ですがリラ様、本当に時間がないのです、お急ぎ下さいまし」
不審げなリラを座り心地の良いソファから引きずり出すようにして着替をさせ、髪を手早くまとめて薄く化粧を施すと手を引くように廊下に出す。
「ねえ、ルイーサってばどうしたの!」
「いいから私を信じてついてきてください!時間がないのですよリラ様」
ずんずんと先を歩くルイーサに仕方なくついていくと、途中、マーカスの執務室に寄ってユートリーの部屋へと誘った。
「おお、リラ!今行く」
「貴方、一体どうなっているの!ねえトリーに何か」
「詳しいことはトリーの部屋で話すから、今は急ごう」
マーカスまで急げ急げとリラを追い立てる。
「ねえっ!トリーは本当に大丈夫なの?」
パニックを起こしたリラが立ち止まって叫ぶと、マーカスも足を止めた。
「トリーは本当に無事だ、会えばわかる。しかし時間がないのも本当だ。重大なことが起きているんだよ、頼むから急いでくれ」
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