41 / 41
外伝 ダーマ
ダーマ4
しおりを挟む
「すごい!すごいわ!ドロレスト侯爵家なんて目じゃないくらいよ、おかあさま!」
「ええ、本当に素晴らしいわ。モローダも良くやってくれたわね」
「ええ、本当に。そういえば迎えが来ないわね」
「屋敷が大きすぎて、気づかないのかもしれないわ。私が女主人になったら使用人たちを厳しく躾け直さなくてはいけないわね」
ふふふっと笑ってダーマが言うと、フェリが門扉のベルを鳴らした。
お付きも護衛もなく、到着に先駆けも出さずにふたりだけで来たダーマが下に見られても仕方ないとは気づかない。
「はい」門番が奥から走ってきた。
「ちょっとあなた!門番とは、門の表に立って番をする者ではなくて?なっていないわね」
ダーマがいきなり叱咤すると、あからさまにムッとした顔を見せて訊ねてきた。
「お前は誰だ?」
「まあ、おまえですって?無礼な!私はこちらの女主人となるダーマ・エスカ男爵令嬢ですわ。覚えておきなさい」
「はあ?女主人だと?おまえ頭がおかしいんじゃないか?」
門番が下卑た表情を浮かべて嘲笑う。
かあっと頭に血が上ったダーマが
「無礼者っ!」
手を振り上げた。
「何しやがる!おまえこそ狼藉者だ!」
騒ぎを聞きつけ、駆けつけた他の門番たちに取り押さえられて屋敷の主の元へと連れて行かれる。
「そなたらは何者ぞ?我が手の者に狼藉を働いたと聞いたが」
ダーマと同じ黒髪と黒い瞳を持ち、美しく整った男が現れて訊ねたので、ダーマは身を乗りだして一気に話した。
「わたくしは、貴方様の花嫁になるため遠路をやって来たジャン・エスカ男爵が娘、ダーマでございます。お見知りおきくださいませ。狼藉を働いたのは私ではございませんわ。門番が私に無礼を働いたのです。しかし私が女主人となった暁には、あのような者も躾け直して差し上げますのでご安心くださいませ」
黒髪の男は、ただじっとダーマを見つめている。
─私の美しさに見惚れていらっしゃるのね─
ダーマが蕩けるような視線を男に送ったところ、突然不快そうに眉を寄せて立ち上がった。
「なんだ、この無礼な女は!何が私の花嫁だ!当家の女主人になるだと?私にはおとなしく従順で花のように美しい妻がおるわ。このような下賤な女は側妻にもいらん!送りつけてきた者には厳罰を与え、この女たちを叩き出せ!」
ダーマたちがのんびり旅をしている間に、既に到着した令嬢の中から花嫁は選ばれていた。
ハラ国で面倒見てもらえるからと、着替えも路銀も少ししか持たずに送られて来たので、このまま追い出されたら国にも戻れない。
それに気づいたフェリが屋敷の主に追い縋った。
「お待ちください、どうかどうか!今追い出されては、国に戻ることもできません。何卒路銀をお助けいただけませんでしょうか?」
「そうだわ!こんな遠くまで呼び寄せておいて、そのくらい出してもバチは当たらないわ」
顔色を窺うように言ったフェリはまだしも、ダーマの言動に男は完全に切れた。
「なんだ、今度は物乞いか?無礼な物言いに狼藉を働いた上、金をよこせとは恐るべき女どもだ!」
ジロっと睨まれるとフェリの足が竦む。
「あっ、あの、いえ、も、申し訳ございません。あの路銀はけっこうですので」
そう下がろうとしたが、主の怒りはおさまらない。
「この女どもを不敬罪で捉えて鞭打ちの刑に処したあと・・・そうだな。奴隷商人に売り払え」
にやにやと美しい顔を歪めて笑った。
「ちょっ!ふざけないでよ」怒鳴るダーマ。
「お許しを、どうか!謝りますからそれだけはお許しを」
ぺこぺこと頭を下げるフェリだったが、言い渡した屋敷の主は興味を失ったように手で追い払うジェスチャーを見せ、奥へと引っ込んでしまった。
あのあと、ダーマとフェリはたんまりと鞭で打たれて牢に転がされている。
フェリは黙りこくってひたすら涙を流しているが、ダーマは口汚く何かを罵り続けて。
翌日、奴隷商人が呼ばれて二人を引き取りに来た。
「若い方はまあまあ見られるから買うものがいるかもしれん。年のいった方は、掃除婦を探しているところがあるからそっちになら売れるかもしれんな」
その後、ダーマとフェリの行方を知る者は誰もいない。
完
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
新作『貧乏令嬢は自分の力でのし上がる!後悔?先に立たずと申しましてよ!』もよろしくお願い致します。
「ええ、本当に素晴らしいわ。モローダも良くやってくれたわね」
「ええ、本当に。そういえば迎えが来ないわね」
「屋敷が大きすぎて、気づかないのかもしれないわ。私が女主人になったら使用人たちを厳しく躾け直さなくてはいけないわね」
ふふふっと笑ってダーマが言うと、フェリが門扉のベルを鳴らした。
お付きも護衛もなく、到着に先駆けも出さずにふたりだけで来たダーマが下に見られても仕方ないとは気づかない。
「はい」門番が奥から走ってきた。
「ちょっとあなた!門番とは、門の表に立って番をする者ではなくて?なっていないわね」
ダーマがいきなり叱咤すると、あからさまにムッとした顔を見せて訊ねてきた。
「お前は誰だ?」
「まあ、おまえですって?無礼な!私はこちらの女主人となるダーマ・エスカ男爵令嬢ですわ。覚えておきなさい」
「はあ?女主人だと?おまえ頭がおかしいんじゃないか?」
門番が下卑た表情を浮かべて嘲笑う。
かあっと頭に血が上ったダーマが
「無礼者っ!」
手を振り上げた。
「何しやがる!おまえこそ狼藉者だ!」
騒ぎを聞きつけ、駆けつけた他の門番たちに取り押さえられて屋敷の主の元へと連れて行かれる。
「そなたらは何者ぞ?我が手の者に狼藉を働いたと聞いたが」
ダーマと同じ黒髪と黒い瞳を持ち、美しく整った男が現れて訊ねたので、ダーマは身を乗りだして一気に話した。
「わたくしは、貴方様の花嫁になるため遠路をやって来たジャン・エスカ男爵が娘、ダーマでございます。お見知りおきくださいませ。狼藉を働いたのは私ではございませんわ。門番が私に無礼を働いたのです。しかし私が女主人となった暁には、あのような者も躾け直して差し上げますのでご安心くださいませ」
黒髪の男は、ただじっとダーマを見つめている。
─私の美しさに見惚れていらっしゃるのね─
ダーマが蕩けるような視線を男に送ったところ、突然不快そうに眉を寄せて立ち上がった。
「なんだ、この無礼な女は!何が私の花嫁だ!当家の女主人になるだと?私にはおとなしく従順で花のように美しい妻がおるわ。このような下賤な女は側妻にもいらん!送りつけてきた者には厳罰を与え、この女たちを叩き出せ!」
ダーマたちがのんびり旅をしている間に、既に到着した令嬢の中から花嫁は選ばれていた。
ハラ国で面倒見てもらえるからと、着替えも路銀も少ししか持たずに送られて来たので、このまま追い出されたら国にも戻れない。
それに気づいたフェリが屋敷の主に追い縋った。
「お待ちください、どうかどうか!今追い出されては、国に戻ることもできません。何卒路銀をお助けいただけませんでしょうか?」
「そうだわ!こんな遠くまで呼び寄せておいて、そのくらい出してもバチは当たらないわ」
顔色を窺うように言ったフェリはまだしも、ダーマの言動に男は完全に切れた。
「なんだ、今度は物乞いか?無礼な物言いに狼藉を働いた上、金をよこせとは恐るべき女どもだ!」
ジロっと睨まれるとフェリの足が竦む。
「あっ、あの、いえ、も、申し訳ございません。あの路銀はけっこうですので」
そう下がろうとしたが、主の怒りはおさまらない。
「この女どもを不敬罪で捉えて鞭打ちの刑に処したあと・・・そうだな。奴隷商人に売り払え」
にやにやと美しい顔を歪めて笑った。
「ちょっ!ふざけないでよ」怒鳴るダーマ。
「お許しを、どうか!謝りますからそれだけはお許しを」
ぺこぺこと頭を下げるフェリだったが、言い渡した屋敷の主は興味を失ったように手で追い払うジェスチャーを見せ、奥へと引っ込んでしまった。
あのあと、ダーマとフェリはたんまりと鞭で打たれて牢に転がされている。
フェリは黙りこくってひたすら涙を流しているが、ダーマは口汚く何かを罵り続けて。
翌日、奴隷商人が呼ばれて二人を引き取りに来た。
「若い方はまあまあ見られるから買うものがいるかもしれん。年のいった方は、掃除婦を探しているところがあるからそっちになら売れるかもしれんな」
その後、ダーマとフェリの行方を知る者は誰もいない。
完
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
新作『貧乏令嬢は自分の力でのし上がる!後悔?先に立たずと申しましてよ!』もよろしくお願い致します。
56
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
政略結婚の指南書
編端みどり
恋愛
【完結しました。ありがとうございました】
貴族なのだから、政略結婚は当たり前。両親のように愛がなくても仕方ないと諦めて結婚式に臨んだマリア。母が持たせてくれたのは、政略結婚の指南書。夫に愛されなかった母は、指南書を頼りに自分の役目を果たし、マリア達を立派に育ててくれた。
母の背中を見て育ったマリアは、愛されなくても自分の役目を果たそうと覚悟を決めて嫁いだ。お相手は、女嫌いで有名な辺境伯。
愛されなくても良いと思っていたのに、マリアは結婚式で初めて会った夫に一目惚れしてしまう。
屈強な見た目で女性に怖がられる辺境伯も、小動物のようなマリアに一目惚れ。
惹かれ合うふたりを引き裂くように、結婚式直後に辺境伯は出陣する事になってしまう。
戻ってきた辺境伯は、上手く妻と距離を縮められない。みかねた使用人達の手配で、ふたりは視察という名のデートに赴く事に。そこで、事件に巻き込まれてしまい……
※R15は保険です
※別サイトにも掲載しています
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
皆が望んだハッピーエンド
木蓮
恋愛
とある過去の因縁をきっかけに殺されたオネットは記憶を持ったまま10歳の頃に戻っていた。
同じく記憶を持って死に戻った2人と再会し、再び自分の幸せを叶えるために彼らと取引する。
不運にも死に別れた恋人たちと幸せな日々を奪われた家族たち。記憶を持って人生をやり直した4人がそれぞれの幸せを求めて辿りつくお話。
売られたケンカは高く買いましょう《完結》
アーエル
恋愛
オーラシア・ルーブンバッハ。
それが今の私の名前です。
半年後には結婚して、オーラシア・リッツンとなる予定……はありません。
ケンカを売ってきたあなたがたには徹底的に仕返しさせていただくだけです。
他社でも公開中
結構グロいであろう内容があります。
ご注意ください。
☆構成
本章:9話
(うん、性格と口が悪い。けど理由あり)
番外編1:4話
(まあまあ残酷。一部救いあり)
番外編2:5話
(めっちゃ残酷。めっちゃ胸くそ悪い。作者救う気一切なし)
歴史から消された皇女〜2人の皇女の願いが叶うまで終われない〜
珠宮さくら
恋愛
ファバン大国の皇女として生まれた娘がいた。
1人は生まれる前から期待され、生まれた後も皇女として周りの思惑の中で過ごすことになり、もう1人は皇女として認められることなく、街で暮らしていた。
彼女たちの運命は、生まれる前から人々の祈りと感謝と願いによって縛られていたが、彼らの願いよりも、もっと強い願いをかけていたのは、その2人の皇女たちだった。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~
朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。
婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」
静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。
夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。
「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」
彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ありがとうございます。とっても恥ずかしいです。自分に厳重注意を与えました。また誤字脱字おかしなコピペがございましたらお知らせくださいませ。
マリエンザ様が格好良くて素敵でした!これは同性でも惚れますわ!
感想ありがとうございます。
ストーリーは、面白くって、一気にに全話読んでしまいました。
楽しく、最後まで読ませていただきました。
ありがとうございます。
ただ、ひとつだけ、気になったのが、マリ様の父親の名前が、毎回毎回、間違えています
正しいのは、どちらでしょうか?
ザンガル? ガンザル?
ご指摘ありがとうございます。
お恥ずかしい、の一言でございます。
すべて訂正致しました。