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恋は迷路の中
閑話 神殿vs王家
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本編には影響ない、回収のお話です。
これが本当の最終話となります。
最後にあとがきがございますので、長いですがお読みいただけるとうれしいです。
■□■
メクリム王国では二つの宗教が信仰されている。
ひとつは今王家と反目するコルグス教。
メクリムの辺境にあるコルグス山に神が降臨したという伝説に基づき、その地に大神殿を。
そして国内には中~小規模な神殿を建て、信者から布施を集めている。
神官たちは大なり小なり治療魔法が使える者が多く、貴族たちに支持されたことでどんどんと力を拡げたコルグス教は、長い年月を過ごすうちに、神のみ名のもとに増長してしまった。
もうひとつは土着というのだろうか。
大神殿などの大仰な施設も組織もない。
彼らが敬う神は、その土地であり、海や山や湖、川や大気。または火であったり闇であったりと、ようは身近にある大自然のすべてが信仰の対象である。
地域の民がそれぞれに建てた教会で、教会員が奉仕活動をしているが、残念ながら神殿のように治療魔法が使える者は殆どいない。
その代わり、地域の草むしりから家の補修、収穫の手伝いなど、皆で力を合わせ、神の庭である土地を守っている。
エザリア・サリバーを解呪してほしいという国王の依頼は、呪いに対応する力を持つコルグス教になされたが。
大神殿長を動かすなど例え国王であろうととんでもないと、副神殿長チルマの一存で断りの回答を送り返していた。
圧倒的な治療魔法の遣い手として大神殿長まで駆け上がったワーシュリンは、実はコルグス教を正道に戻したいと考えている。
それに対し、貴族からも頭を下げられるほどの地位に甘んじ、権威主義に染まった副神殿長一派は王族より神に仕える自分たちが上だと。
コルグス教に腐敗を感じる者も実際いるのだが、既得権益を手放すことはなかなかできず、ワーシュリンの力がなければ、あっという間にチルマに支配されてしまうことだろう。
但しその事情を知る者は上層部だけ。
セメンティスとチューグは、神殿に魔導具が持ち込めるか不安だったが、蓋を開けてみれば、守衛はいても魔術や呪術に対する守りは施されていなかった。
自分たちの地位を神殿外部から脅かすものがいるとは考えもしないようだ。
信徒を装い、参拝に紛れて神殿内に魔導具を取り付けて。
とはいえ奥深くには忍び込めそうにないと、魔導師団で副団長を務めるメスト・ソルンが神殿の庭から建物を見上げていたところ、神殿内から視線を感じた。
と思うと気配が消える。
ワーシュリンである。
執務室からふと外を見ると、怪しげな動きをする男を発見した。
しかし見ていても不思議と悪意を感じない。
その矛盾が気になり、ひとつも見逃さないよう凝視していたのだ。
神殿にはチルマの手の者が多く、見張られているのはワーシュリンも気づいているが、何故か声をかけねばならないという予感がした。
部屋を出て早足で庭を目指すと、緊張感を漂わせた男が木陰に身を潜めていた。
「其の方」
気配もなくいきなり声をかけられて、思わず「ひゃい」と答えてしまったメスト。
「ふっ」
その慌てぶりは間者ではなかろうと、ワーシュリンは笑いをふくんだ。
一応間者なのだが。
「庭で何をしているのだね?」
メストは答えに窮した。ペラペラと適当に答えればいいのに、何故かそれができないのだ。
嘘は許さないとワーシュリンが心理的な圧力をかけていた。
「あ、あ、神殿の内部をさ、さ、さぐ・・っぐぅっ」
言ってしまいたくなるのを、なんとか堪えるメストに、ワーシュリンは何故か吹き出す。
サッと周囲に目配りをすると、メストの袖を掴み、引き寄せた。
「こちらへきたまえ」
裏庭の物置小屋に連れて行かれ、メストの緊張は一気に高まる。
庭の片隅にある物置だというのに、埃ひとつない不思議な物置に、メストは思わず見回していた。
「まあそこに座りなさい。私は大神殿長を務めるワーシュリンだ。名は?」
「大神殿長・・さま?」
「さまはいらん。して、名は?どこの者か答えたまえ」
ワーシュリンに答えたまえと言われた瞬間、メストは今度こそ抗うことができなくなった。
「国王陛下にそのようなことを?それは大変な失礼をしました」
すべて聞かれるままに話してしまったメストは、その答えに心底驚かされていた。
「え?」
「知らなかったとは言え、掌握していないことも私の手落ち」
「知らなかった?」
「さよう」
ワーシュリンはメストの目を覗き込んだ。
─まずい!─
第六感がメストの目をなんとか逸らそうとするのだが、まるで頭の中を覗かれているようだ。
「ふうむ。国王陛下と私は利害が一致しているようだ。服に隠した魔導具を取り付けるのを私が手伝ったら、副神殿長一派だけを一掃する手を貸してもらえるだろうか?
さすればコルグス教は本来の教義に立ち返り、暮らしに困る民への治療奉仕などに従事すると約束しよう」
「そ、それは私の一存では」
「ああそうだな。では確認してくるといい。但し私は副神殿長の一派に見張られているんだ。今のように私が執務中、奴らが治療中の時でもなければ、奴らに気づかれずに私に接触するのは難しいだろう」
そう言うと、紙とペンを出して何かをかきつけ、メストに手渡す。
「そこに連絡を。私の弟で今のコルグス教を憂いているひとりでもある」
扉についた小さな蓋を開けて辺りを確認して。
「よし、今なら誰もいない。庭を大回りすると信徒用の遊歩道に出る。そこから外に出るように」
そう告げてメストを物置から放り出した。
それからのメストは魔導師団にすっ飛んで帰り、大神殿長ワーシュリンとの出会いを興奮しながら報告。
「おいメスト!おまえそれ、見つかっちまっただけだろうがっ!大神殿長が本当に副神殿長と反目していればいいが、そうでなかったらどうする?」
「いや、団長も大神殿長に会えばわかりますよ。何ていうか、あの方は嘘は言いません」
「ん?心酔してるのか?」
「違いますよ。見張られているって言ってましたし、連絡係に実弟を教えてくれました。ほら」
もらった紙を確認したチューグが、すぐにワーシュリンの弟を調べるよう指示を出した。
「まったくおまえというやつは。セメンティスの手の者ならこんなヘマしないと思うぞ」
「いや団長、あの方ならきっと誰が忍んでも必ず見つけ出しますよ!絶対に!賭けてもいい」
「あーわかったわかった。で、大神殿長は今のコルグスのやり方をよく思わず、金儲けに熱心な副神殿長一派を一掃したいんだな」
「そう仰ってました」
「それが本当ならな、渡りに船なんだが。セメンティスのところに行ってくる」
メストの失態をセメンティスに報告しなければならないと、チューグは城の奥にある秘密の通路から暗部の控室へと向かっていた。
「気が重いな」
「何だ?何があった?」
突然背後から声をかけられて、チューグは飛び上がった。
壁のはずが扉のように開き、セメンティスが顔を出していたのだ。
「驚いたか?隠し扉だよ。ところで私に何か用かね」
「ああ。神殿のことで報告と相談だ」
「メストも笑えるな、確か相当意気込んで行ったと思ったが」
「ああ、お恥ずかしい限りだ。ところで大神殿長の話だが」
「うむ。メストの話には信憑性がある。というのも、こちらが調べた中でも大神殿長が孤立しているという話があったんだ」
「ほお!」
「その弟について調査は?」
「出したが」
「うちが重ねて調べても?」
「構わん」
ふたりは互いのやることをしっかり確認しあった。
それからのセメンティスは流石の素早さで、魔導師団ではとても太刀打ちできないと、チューグは張り合うのを止めた。
しかもセメンティスの手下が調べ上げたそれは、精度も高く詳細。暗部の仕事はこういうものと見せつけるような報告書に、メストは恥ずかしそうに顔を赤く染めていた。
国王の音頭の元、視察に出ていた副神殿長が拘束されたのはそれから十日も経たないうちのことだ。
手っ取り早く不敬罪である。
国王から大神殿長宛ての親書を勝手に開けたばかりか、勝手な回答をしたことで国王の意向を踏み躙ったと。
「なーんかこじつけ臭いな」
チューグがくすりと笑ったが、セメンティスはすましたものだ。
「不敬罪などこんなものさ。そんなことで不敬に問われるのか?とよく訊ねられるが、陛下が思えばそうなるんだよ。こじつけではない、陛下こそがルールだからな」
「まあ、これで副神殿長という旗頭を失くした一派は、ワーシュリンが片付けることだろう」
「うむ。大神殿長の名で、陛下に謝罪があったそうだぞ」
「早いな」
「ふふっ、何を言うか。皆示し合わせているのだから当たり前だろう」
日当たりの悪い暗部の執務室で、セメンティスがホイと報告書を投げて寄越す。
さらりと目を通したチューグは満足そうに頷いた。
書状を受け取っていない大神殿長の罪は、当然問われることはなく。
今後コルグス教は驕りを捨て、メクリム王国と王家、国民のために奉仕すると陛下に申し入れたと書かれていた。
このあと、醜聞を盾に副神殿長派に強権を発動したワーシュリンは、残った神官たちに、信じる神がどれほどの高みにいても、仕える我らは皆ただの人の子に過ぎないと説いて心根を改めさせる。
メクリムの王家と民のため、真摯な奉仕活動を行うコルグス教として、生まれ変わったのだった。
■□■
いつもお読みいただき、ありがとうございました。
これにて閑話も含めた完結となります。
現在、ゆるふわファンタジー「神の眼を持つ少年です」(日曜更新)と、ちょっぴりサスペンス要素ありの恋愛ジャンル「あなたを忘れたい」(毎日更新)を更新中です。
作者のページをご覧いただくと、上記更新中以外のすべて、完結済でサクっと最後まで一気読みして頂けるものがございます。
GWにいかがでしょうか(´∀`*)ウフフ
あとがきになりますが。
昨年暮れ、地元で地域猫活動されている方が、手術すると野良の母猫を連れて行った時、取り残された子猫たちがごろごろ・・・。寒波の襲来などもあり、急遽私が保護することとなりまして。
うちのねこたんたちに加え、子猫たちの食べること食べること・・・。
さらに風邪引いたの去勢だのと、医療費倍増で財布がますます軽くなる中、「子猫も一緒に保護してよー」と泣きながら、この作品を書き上げました。
ホットランキングも登場させていただき、皆様に感謝しております。
今後も恋愛・ファンタジーあたりで作品を公開していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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メクリム王国では二つの宗教が信仰されている。
ひとつは今王家と反目するコルグス教。
メクリムの辺境にあるコルグス山に神が降臨したという伝説に基づき、その地に大神殿を。
そして国内には中~小規模な神殿を建て、信者から布施を集めている。
神官たちは大なり小なり治療魔法が使える者が多く、貴族たちに支持されたことでどんどんと力を拡げたコルグス教は、長い年月を過ごすうちに、神のみ名のもとに増長してしまった。
もうひとつは土着というのだろうか。
大神殿などの大仰な施設も組織もない。
彼らが敬う神は、その土地であり、海や山や湖、川や大気。または火であったり闇であったりと、ようは身近にある大自然のすべてが信仰の対象である。
地域の民がそれぞれに建てた教会で、教会員が奉仕活動をしているが、残念ながら神殿のように治療魔法が使える者は殆どいない。
その代わり、地域の草むしりから家の補修、収穫の手伝いなど、皆で力を合わせ、神の庭である土地を守っている。
エザリア・サリバーを解呪してほしいという国王の依頼は、呪いに対応する力を持つコルグス教になされたが。
大神殿長を動かすなど例え国王であろうととんでもないと、副神殿長チルマの一存で断りの回答を送り返していた。
圧倒的な治療魔法の遣い手として大神殿長まで駆け上がったワーシュリンは、実はコルグス教を正道に戻したいと考えている。
それに対し、貴族からも頭を下げられるほどの地位に甘んじ、権威主義に染まった副神殿長一派は王族より神に仕える自分たちが上だと。
コルグス教に腐敗を感じる者も実際いるのだが、既得権益を手放すことはなかなかできず、ワーシュリンの力がなければ、あっという間にチルマに支配されてしまうことだろう。
但しその事情を知る者は上層部だけ。
セメンティスとチューグは、神殿に魔導具が持ち込めるか不安だったが、蓋を開けてみれば、守衛はいても魔術や呪術に対する守りは施されていなかった。
自分たちの地位を神殿外部から脅かすものがいるとは考えもしないようだ。
信徒を装い、参拝に紛れて神殿内に魔導具を取り付けて。
とはいえ奥深くには忍び込めそうにないと、魔導師団で副団長を務めるメスト・ソルンが神殿の庭から建物を見上げていたところ、神殿内から視線を感じた。
と思うと気配が消える。
ワーシュリンである。
執務室からふと外を見ると、怪しげな動きをする男を発見した。
しかし見ていても不思議と悪意を感じない。
その矛盾が気になり、ひとつも見逃さないよう凝視していたのだ。
神殿にはチルマの手の者が多く、見張られているのはワーシュリンも気づいているが、何故か声をかけねばならないという予感がした。
部屋を出て早足で庭を目指すと、緊張感を漂わせた男が木陰に身を潜めていた。
「其の方」
気配もなくいきなり声をかけられて、思わず「ひゃい」と答えてしまったメスト。
「ふっ」
その慌てぶりは間者ではなかろうと、ワーシュリンは笑いをふくんだ。
一応間者なのだが。
「庭で何をしているのだね?」
メストは答えに窮した。ペラペラと適当に答えればいいのに、何故かそれができないのだ。
嘘は許さないとワーシュリンが心理的な圧力をかけていた。
「あ、あ、神殿の内部をさ、さ、さぐ・・っぐぅっ」
言ってしまいたくなるのを、なんとか堪えるメストに、ワーシュリンは何故か吹き出す。
サッと周囲に目配りをすると、メストの袖を掴み、引き寄せた。
「こちらへきたまえ」
裏庭の物置小屋に連れて行かれ、メストの緊張は一気に高まる。
庭の片隅にある物置だというのに、埃ひとつない不思議な物置に、メストは思わず見回していた。
「まあそこに座りなさい。私は大神殿長を務めるワーシュリンだ。名は?」
「大神殿長・・さま?」
「さまはいらん。して、名は?どこの者か答えたまえ」
ワーシュリンに答えたまえと言われた瞬間、メストは今度こそ抗うことができなくなった。
「国王陛下にそのようなことを?それは大変な失礼をしました」
すべて聞かれるままに話してしまったメストは、その答えに心底驚かされていた。
「え?」
「知らなかったとは言え、掌握していないことも私の手落ち」
「知らなかった?」
「さよう」
ワーシュリンはメストの目を覗き込んだ。
─まずい!─
第六感がメストの目をなんとか逸らそうとするのだが、まるで頭の中を覗かれているようだ。
「ふうむ。国王陛下と私は利害が一致しているようだ。服に隠した魔導具を取り付けるのを私が手伝ったら、副神殿長一派だけを一掃する手を貸してもらえるだろうか?
さすればコルグス教は本来の教義に立ち返り、暮らしに困る民への治療奉仕などに従事すると約束しよう」
「そ、それは私の一存では」
「ああそうだな。では確認してくるといい。但し私は副神殿長の一派に見張られているんだ。今のように私が執務中、奴らが治療中の時でもなければ、奴らに気づかれずに私に接触するのは難しいだろう」
そう言うと、紙とペンを出して何かをかきつけ、メストに手渡す。
「そこに連絡を。私の弟で今のコルグス教を憂いているひとりでもある」
扉についた小さな蓋を開けて辺りを確認して。
「よし、今なら誰もいない。庭を大回りすると信徒用の遊歩道に出る。そこから外に出るように」
そう告げてメストを物置から放り出した。
それからのメストは魔導師団にすっ飛んで帰り、大神殿長ワーシュリンとの出会いを興奮しながら報告。
「おいメスト!おまえそれ、見つかっちまっただけだろうがっ!大神殿長が本当に副神殿長と反目していればいいが、そうでなかったらどうする?」
「いや、団長も大神殿長に会えばわかりますよ。何ていうか、あの方は嘘は言いません」
「ん?心酔してるのか?」
「違いますよ。見張られているって言ってましたし、連絡係に実弟を教えてくれました。ほら」
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「まったくおまえというやつは。セメンティスの手の者ならこんなヘマしないと思うぞ」
「いや団長、あの方ならきっと誰が忍んでも必ず見つけ出しますよ!絶対に!賭けてもいい」
「あーわかったわかった。で、大神殿長は今のコルグスのやり方をよく思わず、金儲けに熱心な副神殿長一派を一掃したいんだな」
「そう仰ってました」
「それが本当ならな、渡りに船なんだが。セメンティスのところに行ってくる」
メストの失態をセメンティスに報告しなければならないと、チューグは城の奥にある秘密の通路から暗部の控室へと向かっていた。
「気が重いな」
「何だ?何があった?」
突然背後から声をかけられて、チューグは飛び上がった。
壁のはずが扉のように開き、セメンティスが顔を出していたのだ。
「驚いたか?隠し扉だよ。ところで私に何か用かね」
「ああ。神殿のことで報告と相談だ」
「メストも笑えるな、確か相当意気込んで行ったと思ったが」
「ああ、お恥ずかしい限りだ。ところで大神殿長の話だが」
「うむ。メストの話には信憑性がある。というのも、こちらが調べた中でも大神殿長が孤立しているという話があったんだ」
「ほお!」
「その弟について調査は?」
「出したが」
「うちが重ねて調べても?」
「構わん」
ふたりは互いのやることをしっかり確認しあった。
それからのセメンティスは流石の素早さで、魔導師団ではとても太刀打ちできないと、チューグは張り合うのを止めた。
しかもセメンティスの手下が調べ上げたそれは、精度も高く詳細。暗部の仕事はこういうものと見せつけるような報告書に、メストは恥ずかしそうに顔を赤く染めていた。
国王の音頭の元、視察に出ていた副神殿長が拘束されたのはそれから十日も経たないうちのことだ。
手っ取り早く不敬罪である。
国王から大神殿長宛ての親書を勝手に開けたばかりか、勝手な回答をしたことで国王の意向を踏み躙ったと。
「なーんかこじつけ臭いな」
チューグがくすりと笑ったが、セメンティスはすましたものだ。
「不敬罪などこんなものさ。そんなことで不敬に問われるのか?とよく訊ねられるが、陛下が思えばそうなるんだよ。こじつけではない、陛下こそがルールだからな」
「まあ、これで副神殿長という旗頭を失くした一派は、ワーシュリンが片付けることだろう」
「うむ。大神殿長の名で、陛下に謝罪があったそうだぞ」
「早いな」
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日当たりの悪い暗部の執務室で、セメンティスがホイと報告書を投げて寄越す。
さらりと目を通したチューグは満足そうに頷いた。
書状を受け取っていない大神殿長の罪は、当然問われることはなく。
今後コルグス教は驕りを捨て、メクリム王国と王家、国民のために奉仕すると陛下に申し入れたと書かれていた。
このあと、醜聞を盾に副神殿長派に強権を発動したワーシュリンは、残った神官たちに、信じる神がどれほどの高みにいても、仕える我らは皆ただの人の子に過ぎないと説いて心根を改めさせる。
メクリムの王家と民のため、真摯な奉仕活動を行うコルグス教として、生まれ変わったのだった。
■□■
いつもお読みいただき、ありがとうございました。
これにて閑話も含めた完結となります。
現在、ゆるふわファンタジー「神の眼を持つ少年です」(日曜更新)と、ちょっぴりサスペンス要素ありの恋愛ジャンル「あなたを忘れたい」(毎日更新)を更新中です。
作者のページをご覧いただくと、上記更新中以外のすべて、完結済でサクっと最後まで一気読みして頂けるものがございます。
GWにいかがでしょうか(´∀`*)ウフフ
あとがきになりますが。
昨年暮れ、地元で地域猫活動されている方が、手術すると野良の母猫を連れて行った時、取り残された子猫たちがごろごろ・・・。寒波の襲来などもあり、急遽私が保護することとなりまして。
うちのねこたんたちに加え、子猫たちの食べること食べること・・・。
さらに風邪引いたの去勢だのと、医療費倍増で財布がますます軽くなる中、「子猫も一緒に保護してよー」と泣きながら、この作品を書き上げました。
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いつも感想ありがとうございます。
つっこみどころ満載ですみません(*ノω・*)テヘ
この辺のエピソードは、金と休みとメンツが何よりも大切な、昔の上司をモデルに書いております㊙
女魔道士がアレじゃあ、、、
魔道士団ってポンコツの集まりなんじゃ、、
だから
スルスルと逃げられてんじゃなかろーか、、
役に立たない魔道士はいらないねぇ、、うん
『いらない』
って言ってやれ!