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呪われたエザリア

ロンメルンの試練

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 セインに連れられ、ロンメルン・ジーリーが隣りの部屋に行くと、ソファの上に置かれた座り心地の良さそうなクッションの上に、ふさふさの長毛白猫がふぁさっと尻尾で風を起こしている。


 ─これが噂の!─


 ロンメルンはイーブィと同じ轍を踏まないため、事前にしっかりと調べてきた。

 魔導師の自分でも信じがたいことだ、いや、魔導に携わるからこそ信じがたいことなのだ。
美しい猫の姿を目にしたイーブィは、それを聞いていたにも関わらず、有り得ないと笑ってしまった。
 賢明だったシュメーンは、堪えてみせたから今まだここにいる。

 シュメーン・イゾルは両親も魔導師で、感情を顔に出すのは弱味になると、徹底してポーカーフェイスを仕込まれていた。
 友人に囲まれたときは普通に笑うが、白猫をエザリアと紹介されたとき、身についたポーカーフェイスが発動して、イーブィが陥ったピンチを掻い潜ることができたのだ。



「は、はじめましてサリバー男爵令嬢エザリア様」

 猫に本気で挨拶をする自分が鏡に映っているのを見て、なんと滑稽なのかと溢れてしまいそうな笑いを噛み堪えたロンメルンは、尊大な態度でこくりと頷いた白猫が「ニャニャッ」と声を発し、自分を手招きしていることに気がついた。
 隣りに立つセインも頷いている。

 恐る恐るそばに寄ると、白猫が尻尾でロンメルンの手を撫でた。
と思うと、白猫はテーブルに飛び乗り、トントンと前足でテーブルを叩く。
視線をやったロンメルンは目を疑った。

『よろしく』

 目玉を落としてしまうのではないかと思うほど、大きく目を見開いたロンメルンは、それでもなんとか平常心を保つ。

 ふと、シュメーンが珍しくニコニコしながら拳を握ったり緩めたりして、どうやらロンメルンを応援しているらしい。

 ─そうか。おまえもこれを乗り越えたんだな─

 魔導師たちは、視線で何かを共有した。



「挨拶も済んだことだし、ジーリーさんでいいですか?それとも小隊長とお呼びします?」

 まるでふざけているようなセインに、苦笑したロンメルンは名を呼ぶように告げる。
シュメーンにも。

 こんなところで第二小隊長が護衛についていると知られる方が都合が悪いのだ。

「では遠慮なく呼ばせて頂きます。ロンメルン、僕たちのこともセインとエザリアと呼んで下さい。みんなもエザリアをお嬢様とかご令嬢と呼ぶのは止めてくださいね」

 そういえばジョルでさえエザリア嬢と呼んでいるが、それも外部に聞かれたら困ると気づく。

「じゃあ、まずはみんなでお茶にしましょう!」

 セインは丸テーブルにカップを6つ出し、焼き菓子と茶を用意した。
 カップに手を当てたセインが、氷魔法で茶を冷ましていることに気づいたロンメルンがガン見している。
 じっと見られていることを知ったセインが「これはエザリアのです。冷まさないと飲めないから」と照れくさそうに言った。
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