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外伝 ズーミー編
第2話
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ソネイル子爵家は幸い、この火災で人的な被害は受けなかった。ズーミー以外は。
閉め切られた部屋からの出火で火災に気づくのが遅れたことと、人手を呼ぼうにも馬が盗まれていて屋敷にいた者でしか消火出来なかった不運もあり、丸ごと全焼してしまった。
さらに不運なことに、最新の耐火金庫などなかったため、金庫にしまっていた財産の殆どが燃えてしまったのだ。
「ズーミーはまだ見つからんのか?」
力なく肩を落としたソネイル子爵か使用人にたずねる。
失火元はもっとも激しく燃えたズーミーの部屋。床は焼け落ちて、外から扉に鍵をかけられていたズーミーは、逃げることも声を上げることも叶わず、その燃えかすのどこかに事切れているのだろうと思われていた。
まさか飛び降りるとは思えないほど、二階のバルコニーは高いところにあったから。
ズーミーには幸運なことに、たまたま折れた弓矢が部屋の窓の下に落ちており、裏口から侵入した泥棒を窓辺にいたズーミーが目撃して弓矢で襲撃され、その際にキャンドルが倒れて火災になったのだと考えられていた。
馬も泥棒に盗まれたと。
もしもズーミーが生きていて逃げたとしても、3頭もの馬は必要ないのだからと。
「私たちのせいだ、ズーミーを死なせてしまったのは・・・」
ソネイル夫妻とズーミーの兄は深い後悔に苛まれていた。
レインスル家の金を使ったのはズーミーだけではない。ズーミーを通して自分たちにも様々な贅沢をしてきたというのに、どうせ切り捨てるのだからとズーミーにすべてを負わせ、払わねばならない金もズーミーを高く売ることで回収しようとさえしたのだ。
「私たちは罪を償わなければならない」
ソネイル子爵家は爵位と領地のすべてを売り払って、その金をレインスル家に弁済し、共同事業もマイクスに売り渡すと申し入れる。
驚いたマイクスにもらいすぎだと幾ばくかを押し返され、それを元手に慣れぬ畑を耕し始めたソネイル一家。
苦労をいとわず、心を入れ替えた彼らをマイクスは見守った。
定期的に人をやっては、名は明かさずに支援の手を伸ばしているのだ。
「去年は酷かったですが、今年はどうやら豊作のようですよ」
「やっと農民らしくなりましたね」
そんな報告を受け、マイクスはソネイルの麦をほんの少しだけ高く買ってやるように、商会の使用人たちに指示を出したことをシューラには秘密にしている。
あの日ソネイル家を火事にして逃げ出したズーミーはというと。
今は隣国アレイソで護衛や人足をしている。
貧しいが、父に売られて自由や尊厳を失ったわけではない。好きで貧乏な平民を楽しんでいるのだ。
毎日泥と埃を被って力仕事をし、日銭を稼いでは酒を飲む。
ズーミーの顔の火傷は治らず、大きな引き攣れが残ってしまった。美貌の貴公子は見る影もない。今やギラギラと鋭い視線が目につくいっぱしの荒くれ者である。
それでも今の自分のほうが好きだと思えた。
ある日のこと。
仕事を終えたズーミーが、今夜の酒を飲む店を探して歩いていると暗がりで諍う声が聞こえた。
声のする方を覗き込むと、若い三一が身なりの良い青年に絡んでいる。
どうやら金を出せと脅しているようだ。
「おいおまえ」
無意識にズーミーは声をかけていた。
「なんだぁ、ああ?」
振り向きながら凄んだ若者は、頭一つ大きな、顔半分が引き攣れた男に睨まれて竦み上がる。
「あ、あの」
「なにをやってんだ?あ?」
わざと顔の上から覗き込んでやると、粋がった男は急に視線を左右に揺らし、あっ!と大きく叫ぶと脱兎の如く逃げ出した。
「なんだあいつ」
ズーミーが呆れていると、下の方から声がかかった。
「あの!ありがとうございました」
身なりは良いが小柄な若者である。
「絡まれてたのか?裏通りはああいうのがゴロゴロしてるんだ。気をつけな。そういえばあんた護衛はどうした?」
「はあ、あの・・・」
裏通りのちょっと怪しい店に行きたいが、親がつけた護衛がいると具合が悪いとき、護衛をまいて危険な目にあうのはよくあることである。
「しようがねえなあ、俺が近くまで送ってやるから一緒に帰れ」
「す、すみません、助かります」
「それで、どこに行けばいいんだ?」
「ボ厶トン商会です」
ボムトン商会はズーミーでもその名を聞いたことがある、アレイソの王都では中堅どころの商会だ。
「あっ!私はジュロイ・メイヤーと申します。貴方様のお名前を教えて頂けませんか」
「ソニー・・・だ」
「ソニーさんですか」
ズーミーは国を出てから、ソネイルを捩った名を名乗っている。
あれほど家族を恨み、屋敷が燃え落ちたと聞いてもほんの少しも心は痛まなかったというのに、アレイソに来て知り合った者に名を聞かれ、口から出たのはソニーだった。
「ではソニーさん、お礼をさせてください」
「いや、別にいらねえよ。声をかけただけだ」
ジュロイは首を振る。
「絡まれていた間、何人も通り過ぎていきました。声をかけてくださったのはソニーさんだけでしたよ」
ジュロイは心に決めたような顔をして、ズーミーの袖を掴み、ぐいぐい引きながら歩き始めた。
ボ厶トン商会につくとズーミーはそのまま帰ろうとしたが、そうは問屋が卸さない。
「おーい!お客様だ!私が襲われたのを助けてくださったんだ。おもてなしを頼むよ」
「ジュロイさん!こんな時間まで何処に行っていたんです?襲われたですって?モリスをまいたりするからそういう目にあうんですよ」
「まいたのではないよ、まさかモリスがついてこられないとは思わなかった。こう言っては何だが、モリスはそろそろドニス様の屋敷の門番にでもしてやったらどうだろうな?私にはもっと若くて体力のある護衛をつけてもらいたいんだが」
店の中から目を吊り上げた男が出てきてジュロイに注意したが、ジュロイはどこ吹く風だ。
そしてズーミーに向き直った。
良い教育を受けているらしく、その男もズーミーの顔の引き攣れに視線を止めたり気にする様子はない。
「此度は我が主人をお助けくださり、誠にありがとうございました」
「主人?あんたがか?」
「いやいや、ボ厶トン商会の主は別にいますよ。このチュロックは私の秘書なんです。こらチュロック、紛らわしい言い方をするなよ!」
「ああ、これは失礼致しました」
「それよりソニーさん!まずは茶でもどうですか」
ズーミーは半ば無理やりソファに座らされた。
─酒を飲みに行くはずが、茶とは─
大したことをしたとは思っていないズーミーは、うんざりし始めている。
しかしジュロイは退屈そうなズーミーをニコニコと見て、そして切り出した。
「ソニーさんは、剣術をなさるんですか?」
「ん?何故そんなことを」
「さっきの身のこなしを見て、そんな気がしたんですよ」
「どうだろうな。昔は騎士見習いをしていたこともあったが・・・」
「ほう、それはすごい。騎士には?」
「ああ、家が没落してそれどころではなくなった」
そう、ズーミーが没落させ、騎士見習いも辞めざるを得なくなったのだが。
「さきほどのちんぴらを追い払って下さった眼力、凄まじかったですよ」
「あんなの、相手が弱かっただけだ」
「私は体が小さいせいで甘く見られ、あのように脅されることが多いんです。だからものすごく強い護衛でなくとも、ちんぴらを追い払えるくらいの護衛で十分なんですが、ソニーさん!よかったらやってみませんか?」
「「・・・・ハ?」」
チュロックとズーミーが声を揃えた。
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馬も泥棒に盗まれたと。
もしもズーミーが生きていて逃げたとしても、3頭もの馬は必要ないのだからと。
「私たちのせいだ、ズーミーを死なせてしまったのは・・・」
ソネイル夫妻とズーミーの兄は深い後悔に苛まれていた。
レインスル家の金を使ったのはズーミーだけではない。ズーミーを通して自分たちにも様々な贅沢をしてきたというのに、どうせ切り捨てるのだからとズーミーにすべてを負わせ、払わねばならない金もズーミーを高く売ることで回収しようとさえしたのだ。
「私たちは罪を償わなければならない」
ソネイル子爵家は爵位と領地のすべてを売り払って、その金をレインスル家に弁済し、共同事業もマイクスに売り渡すと申し入れる。
驚いたマイクスにもらいすぎだと幾ばくかを押し返され、それを元手に慣れぬ畑を耕し始めたソネイル一家。
苦労をいとわず、心を入れ替えた彼らをマイクスは見守った。
定期的に人をやっては、名は明かさずに支援の手を伸ばしているのだ。
「去年は酷かったですが、今年はどうやら豊作のようですよ」
「やっと農民らしくなりましたね」
そんな報告を受け、マイクスはソネイルの麦をほんの少しだけ高く買ってやるように、商会の使用人たちに指示を出したことをシューラには秘密にしている。
あの日ソネイル家を火事にして逃げ出したズーミーはというと。
今は隣国アレイソで護衛や人足をしている。
貧しいが、父に売られて自由や尊厳を失ったわけではない。好きで貧乏な平民を楽しんでいるのだ。
毎日泥と埃を被って力仕事をし、日銭を稼いでは酒を飲む。
ズーミーの顔の火傷は治らず、大きな引き攣れが残ってしまった。美貌の貴公子は見る影もない。今やギラギラと鋭い視線が目につくいっぱしの荒くれ者である。
それでも今の自分のほうが好きだと思えた。
ある日のこと。
仕事を終えたズーミーが、今夜の酒を飲む店を探して歩いていると暗がりで諍う声が聞こえた。
声のする方を覗き込むと、若い三一が身なりの良い青年に絡んでいる。
どうやら金を出せと脅しているようだ。
「おいおまえ」
無意識にズーミーは声をかけていた。
「なんだぁ、ああ?」
振り向きながら凄んだ若者は、頭一つ大きな、顔半分が引き攣れた男に睨まれて竦み上がる。
「あ、あの」
「なにをやってんだ?あ?」
わざと顔の上から覗き込んでやると、粋がった男は急に視線を左右に揺らし、あっ!と大きく叫ぶと脱兎の如く逃げ出した。
「なんだあいつ」
ズーミーが呆れていると、下の方から声がかかった。
「あの!ありがとうございました」
身なりは良いが小柄な若者である。
「絡まれてたのか?裏通りはああいうのがゴロゴロしてるんだ。気をつけな。そういえばあんた護衛はどうした?」
「はあ、あの・・・」
裏通りのちょっと怪しい店に行きたいが、親がつけた護衛がいると具合が悪いとき、護衛をまいて危険な目にあうのはよくあることである。
「しようがねえなあ、俺が近くまで送ってやるから一緒に帰れ」
「す、すみません、助かります」
「それで、どこに行けばいいんだ?」
「ボ厶トン商会です」
ボムトン商会はズーミーでもその名を聞いたことがある、アレイソの王都では中堅どころの商会だ。
「あっ!私はジュロイ・メイヤーと申します。貴方様のお名前を教えて頂けませんか」
「ソニー・・・だ」
「ソニーさんですか」
ズーミーは国を出てから、ソネイルを捩った名を名乗っている。
あれほど家族を恨み、屋敷が燃え落ちたと聞いてもほんの少しも心は痛まなかったというのに、アレイソに来て知り合った者に名を聞かれ、口から出たのはソニーだった。
「ではソニーさん、お礼をさせてください」
「いや、別にいらねえよ。声をかけただけだ」
ジュロイは首を振る。
「絡まれていた間、何人も通り過ぎていきました。声をかけてくださったのはソニーさんだけでしたよ」
ジュロイは心に決めたような顔をして、ズーミーの袖を掴み、ぐいぐい引きながら歩き始めた。
ボ厶トン商会につくとズーミーはそのまま帰ろうとしたが、そうは問屋が卸さない。
「おーい!お客様だ!私が襲われたのを助けてくださったんだ。おもてなしを頼むよ」
「ジュロイさん!こんな時間まで何処に行っていたんです?襲われたですって?モリスをまいたりするからそういう目にあうんですよ」
「まいたのではないよ、まさかモリスがついてこられないとは思わなかった。こう言っては何だが、モリスはそろそろドニス様の屋敷の門番にでもしてやったらどうだろうな?私にはもっと若くて体力のある護衛をつけてもらいたいんだが」
店の中から目を吊り上げた男が出てきてジュロイに注意したが、ジュロイはどこ吹く風だ。
そしてズーミーに向き直った。
良い教育を受けているらしく、その男もズーミーの顔の引き攣れに視線を止めたり気にする様子はない。
「此度は我が主人をお助けくださり、誠にありがとうございました」
「主人?あんたがか?」
「いやいや、ボ厶トン商会の主は別にいますよ。このチュロックは私の秘書なんです。こらチュロック、紛らわしい言い方をするなよ!」
「ああ、これは失礼致しました」
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ズーミーは半ば無理やりソファに座らされた。
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大したことをしたとは思っていないズーミーは、うんざりし始めている。
しかしジュロイは退屈そうなズーミーをニコニコと見て、そして切り出した。
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「ん?何故そんなことを」
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そう、ズーミーが没落させ、騎士見習いも辞めざるを得なくなったのだが。
「さきほどのちんぴらを追い払って下さった眼力、凄まじかったですよ」
「あんなの、相手が弱かっただけだ」
「私は体が小さいせいで甘く見られ、あのように脅されることが多いんです。だからものすごく強い護衛でなくとも、ちんぴらを追い払えるくらいの護衛で十分なんですが、ソニーさん!よかったらやってみませんか?」
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