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メイガー、乗り気になる
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ソンドールはメイガーの元へ向かっていた。
位の高い貴族や王族についてのあれこれを教えてもらうのは、メイガーが一番適任だ。
「今日はどうした?」
「兄上に相談があるんだ」
「おお、おまえの兄は頼りになるぞ、早速話を聞こう」
うれしそうに言う兄を見て、来てよかったと素直に思う。
そしてリーリルハから聞いたことを、都合よく端折って話し始めた。
「実はリルハがリュスティリア王女殿下に恩を着せられて」
「恩を着せられて?一体どういうことだ?」
「うん。ジュルガーとリルハが婚約破棄になったのは、王女殿下が催した交流会のせいで不貞相手と知り合ったからだと、最初は気にされていたそうなんだ。
だが今は、俺と上手くいっているのは自分のお陰だと言ってるらしい。王女殿下のお陰で不貞男と別れられたとね」
「リュスティリア王女殿下がそんなことを仰るのか?嘘だろう?」
聡明な方だと思っていたのに、意外と俗物で幻滅したと呟く兄。
「それを恩に着せて、メットリアのカジューン殿下と婚約できるように力を貸せと言われたそうなんだ」
「ええ?リュスティリア王女はカジューン殿下狙いだったのか!なるほど、シューリンヒ侯爵はメットリアのムイード公爵と親戚だものな」
「そうなんだ!すぐにわかるなんて兄上は流石だな」
手放しで褒められ、メイガーは鼻を高くしている。
「そこでだ。シューリンヒとパートルムが王女殿下の後ろ盾となり、そのムイード公爵家と話を主導して、リュスティリア王女殿下をメットリアに嫁がせるというのは可能だろうか?」
「その前にだ。王女殿下はクィード公爵家との縁組みが噂されているぞ。それにカジューン殿下には国内に婚約者がいるだろう!」
「そちらは今病に臥せっていて、どうやら余命幾ばくもないらしい」
「なにっ?どこからの情報だ?」
「王女殿下がリルハにそう言ったそうだ」
立ち上がったメイガーは、顎に手を添えたままうろうろと歩き回る。
何か考え込んでいるようだ。
「その話、決して漏らすなよ!リルハ嬢にも口止めを。ユードリン様にムイード公爵を紹介してもらうのは、王女殿下より私が先だ!これは面白くなってきた!」
メイガーは同じ公爵家でありながら、家格に差をつけられてきたクィード公爵家が好きではなかった。
しかしティンバーは飛び抜けて優秀で容姿も端麗。人格も評判よろしく、どうやっても張り合えるものではない。リュスティリア王女とティンバーの婚約は手堅く、クィード公爵家の影響力が増すのは避けられないものと考えていた、今までは。
しかし第二王女自身が何らかの理由で、あの完全無欠と言われるティンバーより隣国の王子を望んでいて、かつ王子の婚約が解消される見込みならば話は別である。
この縁組みを繋ぐことができれば、クィード公爵家にあけられた溝を埋めるどころか、家格差を逆転できるのではないか?
ソンドールに見られているとも知らず、窓ガラスに映るメイガーは、穏やかな気性とは裏腹の黒い笑みを浮かべていた。
位の高い貴族や王族についてのあれこれを教えてもらうのは、メイガーが一番適任だ。
「今日はどうした?」
「兄上に相談があるんだ」
「おお、おまえの兄は頼りになるぞ、早速話を聞こう」
うれしそうに言う兄を見て、来てよかったと素直に思う。
そしてリーリルハから聞いたことを、都合よく端折って話し始めた。
「実はリルハがリュスティリア王女殿下に恩を着せられて」
「恩を着せられて?一体どういうことだ?」
「うん。ジュルガーとリルハが婚約破棄になったのは、王女殿下が催した交流会のせいで不貞相手と知り合ったからだと、最初は気にされていたそうなんだ。
だが今は、俺と上手くいっているのは自分のお陰だと言ってるらしい。王女殿下のお陰で不貞男と別れられたとね」
「リュスティリア王女殿下がそんなことを仰るのか?嘘だろう?」
聡明な方だと思っていたのに、意外と俗物で幻滅したと呟く兄。
「それを恩に着せて、メットリアのカジューン殿下と婚約できるように力を貸せと言われたそうなんだ」
「ええ?リュスティリア王女はカジューン殿下狙いだったのか!なるほど、シューリンヒ侯爵はメットリアのムイード公爵と親戚だものな」
「そうなんだ!すぐにわかるなんて兄上は流石だな」
手放しで褒められ、メイガーは鼻を高くしている。
「そこでだ。シューリンヒとパートルムが王女殿下の後ろ盾となり、そのムイード公爵家と話を主導して、リュスティリア王女殿下をメットリアに嫁がせるというのは可能だろうか?」
「その前にだ。王女殿下はクィード公爵家との縁組みが噂されているぞ。それにカジューン殿下には国内に婚約者がいるだろう!」
「そちらは今病に臥せっていて、どうやら余命幾ばくもないらしい」
「なにっ?どこからの情報だ?」
「王女殿下がリルハにそう言ったそうだ」
立ち上がったメイガーは、顎に手を添えたままうろうろと歩き回る。
何か考え込んでいるようだ。
「その話、決して漏らすなよ!リルハ嬢にも口止めを。ユードリン様にムイード公爵を紹介してもらうのは、王女殿下より私が先だ!これは面白くなってきた!」
メイガーは同じ公爵家でありながら、家格に差をつけられてきたクィード公爵家が好きではなかった。
しかしティンバーは飛び抜けて優秀で容姿も端麗。人格も評判よろしく、どうやっても張り合えるものではない。リュスティリア王女とティンバーの婚約は手堅く、クィード公爵家の影響力が増すのは避けられないものと考えていた、今までは。
しかし第二王女自身が何らかの理由で、あの完全無欠と言われるティンバーより隣国の王子を望んでいて、かつ王子の婚約が解消される見込みならば話は別である。
この縁組みを繋ぐことができれば、クィード公爵家にあけられた溝を埋めるどころか、家格差を逆転できるのではないか?
ソンドールに見られているとも知らず、窓ガラスに映るメイガーは、穏やかな気性とは裏腹の黒い笑みを浮かべていた。
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