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コイント家のソンドール
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本日五話更新します。
よろしくお願いします。
■□■
パートルム公爵嫡男のメイガーと、コイント子爵家嫡男のソンドールは実の兄弟である。
パートルム公爵夫妻、モリーズとポリーアの間には三人の男子が生まれた。
長男メイガー、そして双子のジュルガーとソンドールである。
それを聞きつけたポリーアの親戚、先代コイント子爵ジェムスから双子のどちらかを養子に貰えないかという話が来た。
だいぶ身分差があり、普通なら畏れ多くて考えもしない申入れだが、ジェムスは気にせずに頼みこんだ。
良く言えば由緒あるコイント子爵家の、ポリーアの再従兄弟に当たるナニエルとその妻ユミンには子がなかった。
ジェムスはナニエルが幼少に罹患した病に原因があると見て、離縁させることはせず、それなら少しでも良い家から子を貰い、繋がりを強めようと考えた。ダメ元で頼んだ話だったが、意外にも受け入れられてとんとんと進む。
長男メイガーは当然パートルム公爵の継承者だ。
次に生まれた双子のひとりは、家同士の取り決めによりシューリンヒ侯爵家令嬢と婚姻して、次期侯爵になると決められていた。
継ぐ爵位を持たぬ双子の片割れが子爵を継げるならと、公爵夫妻は考えていた。
子どもたちは顔立ちこそよく似ていたが、メイガーとソンドールは父モリーズと同じ黒目黒髪、ジュルガーはポリーアの金髪碧眼を受け継いでいた。
双子のどちらを手放すかとなったとき、深い意味もなく本当になんとなく、華やかな容姿を持つジュルガーを手元に置きたいとモリーズとポリーアは考え、コイント家にはソンドールが行くことになる。
ソンドールは幼少から物怖じしない性格で、ナニエルとユミンが迎えに来たときも玩具につられてさっさと馬車に乗り、泣くどころか窓から顔を見せることもなかった。
予想外のドライな様子に、モリーズとポリーアは、きっと初めから他所に行くべきこどもだったのだと割り切り、それ以降コイント家と関わりを持つのは避けることにした。
そう、ある事件が起きるまでは、ソンドールをコイント子爵家にやったことすら忘れていたと言ってもいい。
幼かったソンドールも実の家族を都合よく忘れ、コイント子爵夫妻のこどもと信じてすくすくと育っていた。
領地経営に才のないナニエルが子爵を継いでからは、コイント子爵は格段に貧しくなり、まだ領地の売買ができた時には一部を手放して窮地を脱出したこともあった。
領地売買が国の施策で禁止されると、騎士として働くナニエルの俸給で支えるように。
それを見ていたソンドールも、ごく当たり前にナニエルに手ほどきを受けながら騎士学校に通い、在学する誰より早く准騎士として採用され、卒業前でありながら正騎士になった。
父と同じように領地を支える力となった自分を誇らしく思っていたのだが、まわりからは切り売りされた挙げ句の小さすぎる領地と貧しさ、気迫あるソンドールの容姿は貴族の令嬢たちから敬遠され、見合いの話一つ持ち込まれることなく過ごしていた。
公爵である実父モリーズがコイント子爵家に頭を下げに来たのは、ソンドールが正騎士になって暫くした頃。
ソンドールの運命は大きく変わろうとしていた。
よろしくお願いします。
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パートルム公爵嫡男のメイガーと、コイント子爵家嫡男のソンドールは実の兄弟である。
パートルム公爵夫妻、モリーズとポリーアの間には三人の男子が生まれた。
長男メイガー、そして双子のジュルガーとソンドールである。
それを聞きつけたポリーアの親戚、先代コイント子爵ジェムスから双子のどちらかを養子に貰えないかという話が来た。
だいぶ身分差があり、普通なら畏れ多くて考えもしない申入れだが、ジェムスは気にせずに頼みこんだ。
良く言えば由緒あるコイント子爵家の、ポリーアの再従兄弟に当たるナニエルとその妻ユミンには子がなかった。
ジェムスはナニエルが幼少に罹患した病に原因があると見て、離縁させることはせず、それなら少しでも良い家から子を貰い、繋がりを強めようと考えた。ダメ元で頼んだ話だったが、意外にも受け入れられてとんとんと進む。
長男メイガーは当然パートルム公爵の継承者だ。
次に生まれた双子のひとりは、家同士の取り決めによりシューリンヒ侯爵家令嬢と婚姻して、次期侯爵になると決められていた。
継ぐ爵位を持たぬ双子の片割れが子爵を継げるならと、公爵夫妻は考えていた。
子どもたちは顔立ちこそよく似ていたが、メイガーとソンドールは父モリーズと同じ黒目黒髪、ジュルガーはポリーアの金髪碧眼を受け継いでいた。
双子のどちらを手放すかとなったとき、深い意味もなく本当になんとなく、華やかな容姿を持つジュルガーを手元に置きたいとモリーズとポリーアは考え、コイント家にはソンドールが行くことになる。
ソンドールは幼少から物怖じしない性格で、ナニエルとユミンが迎えに来たときも玩具につられてさっさと馬車に乗り、泣くどころか窓から顔を見せることもなかった。
予想外のドライな様子に、モリーズとポリーアは、きっと初めから他所に行くべきこどもだったのだと割り切り、それ以降コイント家と関わりを持つのは避けることにした。
そう、ある事件が起きるまでは、ソンドールをコイント子爵家にやったことすら忘れていたと言ってもいい。
幼かったソンドールも実の家族を都合よく忘れ、コイント子爵夫妻のこどもと信じてすくすくと育っていた。
領地経営に才のないナニエルが子爵を継いでからは、コイント子爵は格段に貧しくなり、まだ領地の売買ができた時には一部を手放して窮地を脱出したこともあった。
領地売買が国の施策で禁止されると、騎士として働くナニエルの俸給で支えるように。
それを見ていたソンドールも、ごく当たり前にナニエルに手ほどきを受けながら騎士学校に通い、在学する誰より早く准騎士として採用され、卒業前でありながら正騎士になった。
父と同じように領地を支える力となった自分を誇らしく思っていたのだが、まわりからは切り売りされた挙げ句の小さすぎる領地と貧しさ、気迫あるソンドールの容姿は貴族の令嬢たちから敬遠され、見合いの話一つ持ち込まれることなく過ごしていた。
公爵である実父モリーズがコイント子爵家に頭を下げに来たのは、ソンドールが正騎士になって暫くした頃。
ソンドールの運命は大きく変わろうとしていた。
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