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パートルム家の家族会議

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「ワンダ様がいらした?」

パートルム公爵家は隣国に視察に向かったはずの嫡男メイガーも呼び戻されて、家族会議の真っ最中だった。
そこに呼んでいなかったワンダがやって来たので、執事が慌てて出迎えに走っていた。

「まずいぞ、何故母上がいらしたんだ」
「え?父上はお祖母様に知らせてなかったんですか?」

こんな大事を?とメイガーの口調が非難している。

「方向性が決まってからお知らせするつもりだったのよ」

公爵夫人ポリーアがワンダを苦手に思う夫の援護をしたのだが、それをちょうど入ってきたワンダに聞かれてしまい、怒りを買うことになってしまう。

「方向性って何?ジュルガーがリーリルハ嬢を蔑ろにした上に、不貞をしていたというのは本当なの?こんな、これが本当なら私はチュリーネに顔向けが出来ないじゃないっ!ねえっ、本当なのっ?どうなのっ?答えなさいよ!」

癇癪を起こした祖母を面倒くさそうにメイガーが見ている。

「ざ、残念ながら真実です」
「なんてこと!なんてことをしてくれたのよ!ジュルガーは何処?」
「部屋で謹慎させています」
「呼びなさい」
「いや、今は」
「呼びなさいって言ってるのよっ!」

「落ち着いてくださいお祖母様、今はリュスティリア王女殿下の調査が来ていて、私たちは席を外さなければならないんです」

仕方なくメイガーが助け舟を出した。

「リュスティリア王女殿下の調査?何よそれ」

しかし助け舟かと思われたそれは、導火線となってしまう。

「・・・ジュルガーの今回のその、不貞と言われているそれは、リュスティリア王女殿下が開催された交流会がきっかけで知り合ったそうで、リーリルハ嬢とも親しい王女殿下が大変気にされ、度々ジュルガーにその言動を注意していたそうなんです。しかし、ジュルガーの態度が改まらず、連れ歩いた相手が王女殿下に不敬を働いて・・・」
「はっ?はあっ?おまえたちはそれを知っていたの?」
「いや、あの、その、ええっ」
「はっきりせいっ!」

小柄な老女とは思えない大声で怒鳴りつけられ、皆思わず身を竦めた。

「は、はい。先日マーテルラ侯爵夫人とトラブルがあったことを知り、私たちも注意を重ねておりました」
「甘かったのではないの?シューリンヒ家の金を自分の遊興費や不貞相手のドレスに使っていたらしい」

ワンダは、送られてきた匿名の手紙を投げつける。
床に散らばった手紙を拾い、目を通した家族たちは顔色を失くして項垂れ、立ち尽くすのだった。
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