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271 グゥザヴィ家の男たち
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ドレイファスの期待を背に、エイルは爆走した。
それこそ寝る間も惜しんで。
もちろんドレイファスが求めたわけではなく、エイルが楽しくて止められなくなっただけである。
花の絵を描きまくり、文字の字体を考え、元の絵ができたら木片を削り出す。仕上がったらインクをつけて紙に押し当て、出来に満足するまでくり返す。
そうやって気に入った字体や花の絵で一式作り上げると、ドレイファスに面会を申し込んだ。
僅か三日でエイルから声がかかったことにドレイファスは驚いたが、前に見た試作品から期待に胸が踊る。
「デーリン先生に一緒に見てもらいたいものがあるので、呼んで来てもらえないかな」
レイドを使いに出したあと、今日の学院での整理を手早く片付けて、ふたりが戻るのを待つ。
「ドレイファス様お呼びと伺いました」
「一緒に離れで見てほしいものがあって!」
とてもうれしそうな笑顔なので、デーリンはてっきり新しい植物を見つけたのかと思っていた。
しかし、ドレイファスの足が向かったのは作業場。
「ここですか?」
満面の笑みで振り返ったドレイファスが、デーリンを急かす。
「さあ早く!」
扉をノックして返事も待たずに開けると、エイルが振り向いた。
「出来たんだって?見せて」
準備万端整えていたエイルは、陽の射す窓際に置かれたテーブルにドレイファスを連れていき、出来上がった文字の押し型と、それよりかなり大きな花の押し型、そして、既にそれを押しまくった紙を見せた。
「わ、すごいな!すごくいい!」
飛びつくように見たドレイファスが、デーリンを見た。
「これは?」
「文字の押し型で、これは花の絵の押し型」
「押し型?ですか」
鏡文字が彫られた木片をエイルが手渡すと、受け取ったデーリンがまじまじと見つめる。
「・・・これ」
ドレイファスがインク瓶を開け、平筆をデーリンへ渡してやる。
「彫ってあるところにインクを塗って、紙に押し当ててみて」
結果は予想出来たが、自分でやってみたい気持ちに推され、言われたとおりに手を伸ばす。
木片の四隅に力が伝わるように意識し、ゆっくり紙から引きはがすと!
「ほお」
デーリンの感嘆の声が漏れる。
「こうやって文字の押し型をたくさん用意して、紙と同じ大きさの枠に文章のとおりにはめ込んで、インクを塗ってやれば、教科書の清書みたいなことをしなくても良くなると思うんだ。それに」
言いかけたドレイファスは、今度は自ら「ブランデイル」と押し型で綴りを揃えると、そのまわりを糸でぐるぐる巻いて文字面にインクを塗り、白い紙に押し当てて、そのそばにもう一つ、大きな押し型で花の模様を写しこんだ。
「エイル、すごいよ!本当に思った通りに出来る!これなんだけど、母上の菓子店の持ち帰り用の包装にしたらすごくいいと思うんだ。デーリン先生は」
「これはいいですね!これで包んであったらなんというか・・・とてつもなく高級なものに見えます!」
「じゃあ早速母上に」
「そうですね。・・・公爵家の中から少しずつ広める方が影響が少ないか」
デーリンの言葉にドレイファスの動きが止まった。
「何か問題があるかな」
「花の押し型はともかく、文字の押し型は清書屋の仕事を奪うことになるかと思いまして」
「・・・清書屋が仕事が無くなる?」
「はい、その可能性が大きいかと」
「それなら押し型の仕事を清書屋だった人たちにやってもらえばいいんじゃないかな」
至極シンプルにドレイファスが答える。
「・・・なるほど」
そう言われてみればそうだという気持ちと、プライドの高い清書屋たちがそんな簡単に押し型をやると言うだろうかという気持ちが、デーリンの中でせめぎ合う。
しかし、受け皿が用意されていれば、ただ奪われるよりずっと受け入れられやすいだろう。
特に貧しい学生たちにとっては、時間がかかり効率が悪い清書の手伝いより、はるかに良いはず・・・いや、効率が悪くダラダラやれるほうが長く日当がもらえて良いのだろうか?
「ううむ」
思わず漏れた自分の唸り声にデーリンはハッとした。碧い瞳が自分を見つめていたのだ。
「ええと、マーリアル様の菓子店の包装紙から世に出していくのが、今考えられる最良のスタートだと考えます。押し型技術が少しずつ広まれば、清書屋たちも時代が変わったと頭を切り替えてくれるかもしれません。手紙の清書や代書などの需要は残るでしょうし」
手書きの良さが求められるものであれば、依頼の数は少なくなっても清書屋の存在は求められるに違いない。
そう、たぶん。
とりあえず既存の職業と被ることの少そうなことから、ゆっくり周知知らしめていこうとデーリンは考えていた。
濁りガラスの作り手であるエイルが新たな押し型作りにかまけると、影響が如実に現れ始める。
公爵家からの納品数が少なくなったことにミルケラはすぐに気がついた。
「うん?おかしいな。スライ厶が狩れなかったのか」
植物と違い、スライムは狩りで採ってきてナンボのものだ。
「ちょっと様子を見てくるか」
以前のミルケラは、ひとりでふらりと馬に乗り移動していたのだが、ギルド長を務める合同ギルドが大きくなるにつれドリアンから身の安全を注意されるようになり、情報部からノージュが護衛につけられるようになった。
「ノージュ、これから公爵家の離れに行きたいんだが」
「いいぞ。すぐ出られる」
ノージュ・ファンダラはいつでも準備を怠らない男なのである。
ふたりで馬に乗り、公爵家へ向かう。年上だが気安いノージュと雑談を楽しみながら。
「そういえばマーリアル様が最近ミルケラに良さそうな令嬢を探してるらしいぞ」
「え?」
「いい人がいるなら、早めに言っておかないと、マーリアル様に話しを進められてしまうぞ」
ニヤニヤと言うノージュだが、まあそのとおり間違いはない。
「誰かいないのか」
「・・・いない」
実際ミルケラは忙し過ぎて、会う相手は木工職人や料理人、庭師と専門職の職人たちばかり、素敵な出会いなどまったくなかった。
「マーリアル様が見つけてくださるならむしろありがたいよ」
肩を竦めながらも豪快に笑う。人のよさそうな、腹に思うことなど何もないような。
しかしギルド長として公爵家と連なる貴族や、製作者の権利と売上を守ってきたミルケラは今や百戦錬磨。それをまったく顔に出すことなく笑う姿に、ノージュは舌を巻いた。
「あ、もし嫁さん候補の情報を耳にしたらこっそり教えてくれよ。心の準備だけしておくから」
そう言ってまた笑っているうちに、巨大な屋敷が見えてくる。
本館を通り過ぎて離れへ向かうと、エントランスからそのまま裏へ回って厩舎に馬を預け、エイルの元へ向かった。
作業場からエイルとコバルドの笑い声が漏れている。
ミルケラがノックをするとぴたりと止んだ。
「エイル」
部屋の外から声をかけると、中からミルケラをずっと若くしたようなエイルが顔を出した。
「ミルおじさん」
「ちょっといいか?」
「勿論!どうぞ」
数日ぶりだが、作業場の雰囲気が全く変わっていることにミルケラが気づく。
「ん?それは何だ」
「例のドレイファス様ので、文字の押し型ですよ」
「文字の押し型?」
「そう、こうやってインクつけて押すんです」
押し型と紙とインクを手渡され、ミルケラは早速試してみた。
平筆で押し型の文字面にインクを塗りたくり、紙にゆっくり押してみる。次に紙をゆっくり剥がしていくと!
「おー、これはいいな」
ちょっぴり癖の強い字を書くミルケラは、美しく整った文字が写った紙を見て感嘆の声を上げた。
「これなら字があまり得意でなくとも、いちいち清書係に頼まなくても、きれいな手紙が用意できる」
「え!手紙?手紙をこれで書くんですか」
ミルケラの呟きにエイルが突っ込む。
「そうだ。清書係も忙しそうで頼みづらいことも多いし、ギルドからの手紙なんて文面はだいたい決まってるからな。途中まで何枚も作っておいて、必要最低限のことだけ書き加えるようにすれば、すごく効率的じゃないか!」
人が変われば、新しい用途を思いつくものだ。
「なるほど」
「それで、エイルはここのところこれにかかりきりだったということかな」
作業机に散らばったたくさんの押し型を手に取り、濁りガラスの納品数が少なくなった理由を理解する。
「ああ、それが・・・そうなんです」
言い訳をしようとしたが、しようがないことに気づいたエイルは素直に頭を下げた。
「ドレイファス様からも頼むと言われて、はりきってやっているんだよ」
コバルドが助け舟を出してやると、窓からの陽射しを受けたミルケラは目を細めながら訊ねる。
「エイルが頼まれている?」
「そうなんだ。最初は私にお声をかけてくださったんだが、エイルのほうが向いていたようでね。今はドレイファス様とエイルで毎日、ああでもないこうでもないと試作をくり返しているんだよ」
「そうだったのか」
納得の顔を浮かべた。
「・・・バル兄が濁りガラスに回ることは可能だろうか」
「そうせざるを得ないよな。もともと押し型は私に持ち込まれたものだったんだが、エイルが引き受けてくれたんだし」
ニッと口角を引き上げたエイル。
「じゃあバル兄頼むよ。今週中に濁りガラス300枚」
「えっ!?さ、さんびゃくまい?」
「冗談だ」
「ミルケラーっ!」
いつもは職人気質で口数の少ないコバルドとミルケラのやりとりに目を丸くしながらも、エイルは少々反省していた。押し型に夢中になりすぎ、頼まれていた仕事を引き継ぎもせずに忘れていたのだ。
最後まで責任を、事情により離れなければならない時はしっかりと引き継ぎを!
そう胸に刻むのだった。
■□■
いつもお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
一日遅れの更新で申し訳ないです。
期末の超繁忙期に突入しまして、来週の更新はおやすみとなります。また来月から頑張りたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
それこそ寝る間も惜しんで。
もちろんドレイファスが求めたわけではなく、エイルが楽しくて止められなくなっただけである。
花の絵を描きまくり、文字の字体を考え、元の絵ができたら木片を削り出す。仕上がったらインクをつけて紙に押し当て、出来に満足するまでくり返す。
そうやって気に入った字体や花の絵で一式作り上げると、ドレイファスに面会を申し込んだ。
僅か三日でエイルから声がかかったことにドレイファスは驚いたが、前に見た試作品から期待に胸が踊る。
「デーリン先生に一緒に見てもらいたいものがあるので、呼んで来てもらえないかな」
レイドを使いに出したあと、今日の学院での整理を手早く片付けて、ふたりが戻るのを待つ。
「ドレイファス様お呼びと伺いました」
「一緒に離れで見てほしいものがあって!」
とてもうれしそうな笑顔なので、デーリンはてっきり新しい植物を見つけたのかと思っていた。
しかし、ドレイファスの足が向かったのは作業場。
「ここですか?」
満面の笑みで振り返ったドレイファスが、デーリンを急かす。
「さあ早く!」
扉をノックして返事も待たずに開けると、エイルが振り向いた。
「出来たんだって?見せて」
準備万端整えていたエイルは、陽の射す窓際に置かれたテーブルにドレイファスを連れていき、出来上がった文字の押し型と、それよりかなり大きな花の押し型、そして、既にそれを押しまくった紙を見せた。
「わ、すごいな!すごくいい!」
飛びつくように見たドレイファスが、デーリンを見た。
「これは?」
「文字の押し型で、これは花の絵の押し型」
「押し型?ですか」
鏡文字が彫られた木片をエイルが手渡すと、受け取ったデーリンがまじまじと見つめる。
「・・・これ」
ドレイファスがインク瓶を開け、平筆をデーリンへ渡してやる。
「彫ってあるところにインクを塗って、紙に押し当ててみて」
結果は予想出来たが、自分でやってみたい気持ちに推され、言われたとおりに手を伸ばす。
木片の四隅に力が伝わるように意識し、ゆっくり紙から引きはがすと!
「ほお」
デーリンの感嘆の声が漏れる。
「こうやって文字の押し型をたくさん用意して、紙と同じ大きさの枠に文章のとおりにはめ込んで、インクを塗ってやれば、教科書の清書みたいなことをしなくても良くなると思うんだ。それに」
言いかけたドレイファスは、今度は自ら「ブランデイル」と押し型で綴りを揃えると、そのまわりを糸でぐるぐる巻いて文字面にインクを塗り、白い紙に押し当てて、そのそばにもう一つ、大きな押し型で花の模様を写しこんだ。
「エイル、すごいよ!本当に思った通りに出来る!これなんだけど、母上の菓子店の持ち帰り用の包装にしたらすごくいいと思うんだ。デーリン先生は」
「これはいいですね!これで包んであったらなんというか・・・とてつもなく高級なものに見えます!」
「じゃあ早速母上に」
「そうですね。・・・公爵家の中から少しずつ広める方が影響が少ないか」
デーリンの言葉にドレイファスの動きが止まった。
「何か問題があるかな」
「花の押し型はともかく、文字の押し型は清書屋の仕事を奪うことになるかと思いまして」
「・・・清書屋が仕事が無くなる?」
「はい、その可能性が大きいかと」
「それなら押し型の仕事を清書屋だった人たちにやってもらえばいいんじゃないかな」
至極シンプルにドレイファスが答える。
「・・・なるほど」
そう言われてみればそうだという気持ちと、プライドの高い清書屋たちがそんな簡単に押し型をやると言うだろうかという気持ちが、デーリンの中でせめぎ合う。
しかし、受け皿が用意されていれば、ただ奪われるよりずっと受け入れられやすいだろう。
特に貧しい学生たちにとっては、時間がかかり効率が悪い清書の手伝いより、はるかに良いはず・・・いや、効率が悪くダラダラやれるほうが長く日当がもらえて良いのだろうか?
「ううむ」
思わず漏れた自分の唸り声にデーリンはハッとした。碧い瞳が自分を見つめていたのだ。
「ええと、マーリアル様の菓子店の包装紙から世に出していくのが、今考えられる最良のスタートだと考えます。押し型技術が少しずつ広まれば、清書屋たちも時代が変わったと頭を切り替えてくれるかもしれません。手紙の清書や代書などの需要は残るでしょうし」
手書きの良さが求められるものであれば、依頼の数は少なくなっても清書屋の存在は求められるに違いない。
そう、たぶん。
とりあえず既存の職業と被ることの少そうなことから、ゆっくり周知知らしめていこうとデーリンは考えていた。
濁りガラスの作り手であるエイルが新たな押し型作りにかまけると、影響が如実に現れ始める。
公爵家からの納品数が少なくなったことにミルケラはすぐに気がついた。
「うん?おかしいな。スライ厶が狩れなかったのか」
植物と違い、スライムは狩りで採ってきてナンボのものだ。
「ちょっと様子を見てくるか」
以前のミルケラは、ひとりでふらりと馬に乗り移動していたのだが、ギルド長を務める合同ギルドが大きくなるにつれドリアンから身の安全を注意されるようになり、情報部からノージュが護衛につけられるようになった。
「ノージュ、これから公爵家の離れに行きたいんだが」
「いいぞ。すぐ出られる」
ノージュ・ファンダラはいつでも準備を怠らない男なのである。
ふたりで馬に乗り、公爵家へ向かう。年上だが気安いノージュと雑談を楽しみながら。
「そういえばマーリアル様が最近ミルケラに良さそうな令嬢を探してるらしいぞ」
「え?」
「いい人がいるなら、早めに言っておかないと、マーリアル様に話しを進められてしまうぞ」
ニヤニヤと言うノージュだが、まあそのとおり間違いはない。
「誰かいないのか」
「・・・いない」
実際ミルケラは忙し過ぎて、会う相手は木工職人や料理人、庭師と専門職の職人たちばかり、素敵な出会いなどまったくなかった。
「マーリアル様が見つけてくださるならむしろありがたいよ」
肩を竦めながらも豪快に笑う。人のよさそうな、腹に思うことなど何もないような。
しかしギルド長として公爵家と連なる貴族や、製作者の権利と売上を守ってきたミルケラは今や百戦錬磨。それをまったく顔に出すことなく笑う姿に、ノージュは舌を巻いた。
「あ、もし嫁さん候補の情報を耳にしたらこっそり教えてくれよ。心の準備だけしておくから」
そう言ってまた笑っているうちに、巨大な屋敷が見えてくる。
本館を通り過ぎて離れへ向かうと、エントランスからそのまま裏へ回って厩舎に馬を預け、エイルの元へ向かった。
作業場からエイルとコバルドの笑い声が漏れている。
ミルケラがノックをするとぴたりと止んだ。
「エイル」
部屋の外から声をかけると、中からミルケラをずっと若くしたようなエイルが顔を出した。
「ミルおじさん」
「ちょっといいか?」
「勿論!どうぞ」
数日ぶりだが、作業場の雰囲気が全く変わっていることにミルケラが気づく。
「ん?それは何だ」
「例のドレイファス様ので、文字の押し型ですよ」
「文字の押し型?」
「そう、こうやってインクつけて押すんです」
押し型と紙とインクを手渡され、ミルケラは早速試してみた。
平筆で押し型の文字面にインクを塗りたくり、紙にゆっくり押してみる。次に紙をゆっくり剥がしていくと!
「おー、これはいいな」
ちょっぴり癖の強い字を書くミルケラは、美しく整った文字が写った紙を見て感嘆の声を上げた。
「これなら字があまり得意でなくとも、いちいち清書係に頼まなくても、きれいな手紙が用意できる」
「え!手紙?手紙をこれで書くんですか」
ミルケラの呟きにエイルが突っ込む。
「そうだ。清書係も忙しそうで頼みづらいことも多いし、ギルドからの手紙なんて文面はだいたい決まってるからな。途中まで何枚も作っておいて、必要最低限のことだけ書き加えるようにすれば、すごく効率的じゃないか!」
人が変われば、新しい用途を思いつくものだ。
「なるほど」
「それで、エイルはここのところこれにかかりきりだったということかな」
作業机に散らばったたくさんの押し型を手に取り、濁りガラスの納品数が少なくなった理由を理解する。
「ああ、それが・・・そうなんです」
言い訳をしようとしたが、しようがないことに気づいたエイルは素直に頭を下げた。
「ドレイファス様からも頼むと言われて、はりきってやっているんだよ」
コバルドが助け舟を出してやると、窓からの陽射しを受けたミルケラは目を細めながら訊ねる。
「エイルが頼まれている?」
「そうなんだ。最初は私にお声をかけてくださったんだが、エイルのほうが向いていたようでね。今はドレイファス様とエイルで毎日、ああでもないこうでもないと試作をくり返しているんだよ」
「そうだったのか」
納得の顔を浮かべた。
「・・・バル兄が濁りガラスに回ることは可能だろうか」
「そうせざるを得ないよな。もともと押し型は私に持ち込まれたものだったんだが、エイルが引き受けてくれたんだし」
ニッと口角を引き上げたエイル。
「じゃあバル兄頼むよ。今週中に濁りガラス300枚」
「えっ!?さ、さんびゃくまい?」
「冗談だ」
「ミルケラーっ!」
いつもは職人気質で口数の少ないコバルドとミルケラのやりとりに目を丸くしながらも、エイルは少々反省していた。押し型に夢中になりすぎ、頼まれていた仕事を引き継ぎもせずに忘れていたのだ。
最後まで責任を、事情により離れなければならない時はしっかりと引き継ぎを!
そう胸に刻むのだった。
■□■
いつもお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
一日遅れの更新で申し訳ないです。
期末の超繁忙期に突入しまして、来週の更新はおやすみとなります。また来月から頑張りたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
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