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198 初恋の芽と商売の芽
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「素晴らしい!なんて素晴らしいディナーでしょう!」
たいそう気に入ったらしいエライオが、ふるふると身を震わせて訊ねた。
「ミンチ肉に乗せてあった黄色いとろけたものは一体何ですか?」
「あれはチージュと言うのです」
ドレイファスが答えると、エライオは大袈裟なほど大きく褒めた。
「素晴らしかった!生まれてはじめて食べた味だった」
「気に入っていただけてよかったです」
ラスライト一家も、特にまだ痩せやつれたままのマイクロスは一生懸命に料理を口に運んでは瞼を擦っている。
「うま、美味い、なんて美味いんだろう」
「ああ、本当に。兄上、ほらこれも食べていいよ」
行儀が良いとはいえないが、エメリーズが最後に残してあった一切れのパッケークをマイクロスの皿に乗せてやろうとすると、ドレイファスが止めて。
「エズ、大丈夫だよ。マイクロス様とエズにおかわりを」
給仕に指示を出し、たんまりと食べさせることに成功した。
マイクロスが来たことで、ドレイファスの誕生日祝いがマイクロスの快気祝いのようになってしまった。しかしドレイファスは親しい人々の集まりの中、友人の兄の無事な姿を見ることができ、饗せたことに満足している。
「エズの兄上も料理喜んでくれてよかったなあ」
「ドレイファス様・・・ごめんなさい、ドレイファス様のお誕生日の祝いだったのに兄上が主役かのように」
エメリーズが眉を寄せて頭を下げると、ドレイファスは指を立ててチッチッと言いながら振ってみせた。
それが誰の真似か気づいたメイベルがルジーを睨み、お行儀悪いことを教えたルジーはバツが悪そうに目を反らしている。
「まず、エズ!ぼくのこと、何て呼ぶんだっけ?」
「え?あ!ド、ド・・ル」
ニッと笑ってこくんと頷くと、ドレイファスは先を続ける。
「本当は今日はぼくの誕生日じゃないんだ。せっかくみんなが集まるんだから、祝いの振る舞いもやればとお母さまがおっしゃっただけだからね。誕生日が近いから祝いの会やってしまおうということだよ」
「そ、そうなんですか?」
「うん、そうなんですかじゃなくて、そうなの?とかそうなんだ!って言うところじゃないかな?
まあ、だから余計な心配なんかいらないよ、安心して。ここにいるみんな、エズの兄上が無事帰還されたことを何よりもお祝いしたいはずだからね」
その言葉に含まれた優しさは皆に拡がり、沁み込んでいく。
いつか金髪碧眼の美しく心優しい公爵となる姿が、その場にいたすべての者の脳裡に浮かんでいた。
─本当にドレイファスは素直で優しいな。故に心配もある─
そう感じていたのはワルター・サンザルブ侯爵。
─まあそこは、世に長け始めたシエルドが補えるだろうが─
ワルターの自慢の次男坊は、小さな頃からローザリオの弟子となったことで11歳の侯爵令息とは思えないほど市井に通じている。妙に大人びて物事の裏を読み、シニカルで切れ味鋭くツッコんだり嫌味を言ったりするものだから、育て方を間違えたかとときどき少し心配になるほど。
世に圧倒的に少ない錬金術師は派閥関係なく貴族からの依頼が多く、必然として広い人脈を持つようになる。御多分に漏れず、ローザリオも社交界の噂には大変に耳聡い。
ドレイファスが多少世に疎くても、しっかり者のシエルドがノエミとともにそばにいればきっと大丈夫だと、まるで子を見守る親のような目でドレイファスを見つめていた。
「ではここからは親と子に分かれてしばらく歓談を。子らは果実をもらうとよい」
ドリアンの言葉で、参加していた大人たちはメイベルたちも皆応接間に、病み上がりのマイクロスやエーメ、ラライヤはドレイファスたちと食堂に向かった。
「もうお腹いっぱいだけど、まだ何か出てくるの?」
シエルドが腹をぱんぱんと叩くと、剣の稽古に明け暮れるボルドアとトレモルは大食漢の様相を見せる。
「まだまだ全然足りないくらいだよ!」
「うん、あの二倍でも食べられる!」
凄まじい食欲を見せて、ドレイファスをびっくりさせた。
「えっ!トリィいつもご飯足りなかったの?」
「あ、いや、二倍はちょっと大袈裟に言っただけで」
焦って言い訳をしたトレモルにエーメが笑うと、つられて皆で笑いだした。
食堂には離れからボンディが来ていて、すでにレッドメルやペリルがてんこ盛りに積まれている。
「この季節でもまだレッドメルが食べられるのか?さすが公爵家だな」
マイクロスの驚きの声にラライヤが振り返ると。
長い睫毛をふわりふわりとゆっくり瞬きをするマイクロスは、痩せて未だ病み上がりだが、それ故に顔に射し込む影がなんとも大人びて寂しそうで、何故かラライヤは胸がギュッと痛む気がした。
「さあ、マイクロス兄様も座ってください!」
人懐こく、ドレイファスが兄様呼びをすると、シエルドたちもそれに続いて椅子を引いてやったり背中にクッションを入れてやったりと至れり尽くせり。
それを見たラライヤは何故かちょっとムッとして、マイクロスの隣りの椅子を引いて陣取り、積まれた果実を手ずから皿に取り分けてマイクロスに渡してやった。
それを見たルートリアの驚いたこと。
何しろラライヤは、自分はいずれ女侯爵になる身なのだからと貴族の令嬢がやるような、例えば刺繍ですらしないのだ。
家の食堂でだって給仕任せ、ナプキンだって首に巻いてもらうほど。
ラライヤが言うには、それを仕事にする者がいるのだから自分が手を出せば仕事を奪うことになると。
ナプキンを首に巻くくらい、自分でやっても使用人が仕事を失うことなどないと思うが、とにかくラライヤは徹底して使用人がやるべきことには手は出さない性格なのだ。
それなのに!
マイクロスのためにレッドメルを皿に乗せて渡してやるなんて、一体どういうことだろうか?
「ルーティ、どうしたの?」
様子がおかしいことに気づいて、小さな声でドレイファスが訊ねてきたが、ラライヤがいるので何も言えない。
一生懸命に目で合図をして、なんだかわからないけど今はダメということだけ察したドレイファスは、軽く頷いて「あとでね」と離れて行った。
ルートリアはその後もラライヤから目が離せずにいる。
マイクロスの皿が空になりそうになると、さっと次のレッドメルを入れてやって。
口元に果汁が滲み出しているのを見つけると、自分のハンカチを渡していた。
─大変だわ!ララ姉様、熱でもあるのじゃないかしら!─
そう、確かに熱があった。
ルートリアは気づかなかったのだが、噂大好きのボルドアにはわかる特別な熱。
「ラライヤ様ってマイクロス様のことアレなんじゃないか?」
ぐるりと首が回り、ルートリアはボルドアにきゅーっと吸い寄せられるように近寄った。
「ボルディ様、今なんて?」
「うん、ラライヤ様ってマイクロス様が好きなんじゃないかってさ」
「ええっ?何言っているの?今日初めて会ったばかりよ!しかも結構年上ではなくて?」
「そんなの関係ないよ、聞いたことない?一目逢ったその日から恋の花咲くこともあるってやつ」
あまりに驚いたルートリアだが、そう聞いて見てみれば、確かにそのようにしか見えなくなってくるのだから不思議だ。
ラライヤは上目遣いでマイクロスをちらちらと見つめては、頬を赤らめ、時折小さくため息をつく。
─ララ姉様、本当に?─
お開きになるまで、まったくルートリアの視線に気づかずに、マイクロスに世話を焼き続けたラライヤだった。
大人たちはというと。
まず、フォンブランデイル家とサンザルブ家で共同開発したチージュとビネの商品化について、御用達ラベルに紋を入れることを希望するか。もちろん全家が希望したので、その際受け取る利益や出資について話していく。
「実はビネが無ければチージュは作れないのだが、ビネは仕込んでからできるまで時間がかかる。故に、商品化するためにはまずビネをある程度作り貯めてからチージュという流れになるな」
「ちなみにビネはアプルが材料らしいぞ」
ワルターが口を挟む。
「アプル?うちの土地でよく採れるところがある!」
ダルスラ・ロンドリン伯爵が嬉しそうに声をあげ、皆の視線がダルスラに集まる。
「そうか!ではロンドリンから買い付けることにしよう」
領地にアプルの木がたくさんあるのも間違いないが、実はダルスラ自身が持つ山にアプルの木がたくさん自生している。
継続してビネを作るなら、それが安定した収入となりえるとダルスラはもう一歩踏み込んだ。
「あの、ロンドリンにビネの工房を作ると言うのはどうでしょうな?」
「はいっ!」
新参者のメイベルが割り込んで手を挙げた。
「私共のサイルズ領でもアプルが採れますわ、ぜひ幾ばくかでもお買い上げくださいませんでしょうか」
「そうか、メイベルのところも採れたな。他にアプルが採れるところは?」
誰も反応しない。
「ではロンドリンとサイルズで試作をそれぞれ行ってから合同ギルドの工房をどちらか、または双方に作るのはどうだ?」
「なるほど!もちろん私はそれで」
「私もです」
ドリアンが他の者を見回し、異を唱える者がいないことを確認すると頷いて。
「ではまずビネがある程度の量出来上がったら、チージュの工房について改めて相談しよう。ビネの出来や量によってチージュにも影響があるだろうからな」
メイベルは初めて参加したドレイファス団の集まりで成果を得られ、拳を握りしめた。
何しろ、公爵夫妻の次にドレイファスを熱烈に愛しているのは自分とルジーだと自負がある。次期男爵としてドレイファスの役に立てることなら、何でも取り組んでみたいと意気込んでいた。
たいそう気に入ったらしいエライオが、ふるふると身を震わせて訊ねた。
「ミンチ肉に乗せてあった黄色いとろけたものは一体何ですか?」
「あれはチージュと言うのです」
ドレイファスが答えると、エライオは大袈裟なほど大きく褒めた。
「素晴らしかった!生まれてはじめて食べた味だった」
「気に入っていただけてよかったです」
ラスライト一家も、特にまだ痩せやつれたままのマイクロスは一生懸命に料理を口に運んでは瞼を擦っている。
「うま、美味い、なんて美味いんだろう」
「ああ、本当に。兄上、ほらこれも食べていいよ」
行儀が良いとはいえないが、エメリーズが最後に残してあった一切れのパッケークをマイクロスの皿に乗せてやろうとすると、ドレイファスが止めて。
「エズ、大丈夫だよ。マイクロス様とエズにおかわりを」
給仕に指示を出し、たんまりと食べさせることに成功した。
マイクロスが来たことで、ドレイファスの誕生日祝いがマイクロスの快気祝いのようになってしまった。しかしドレイファスは親しい人々の集まりの中、友人の兄の無事な姿を見ることができ、饗せたことに満足している。
「エズの兄上も料理喜んでくれてよかったなあ」
「ドレイファス様・・・ごめんなさい、ドレイファス様のお誕生日の祝いだったのに兄上が主役かのように」
エメリーズが眉を寄せて頭を下げると、ドレイファスは指を立ててチッチッと言いながら振ってみせた。
それが誰の真似か気づいたメイベルがルジーを睨み、お行儀悪いことを教えたルジーはバツが悪そうに目を反らしている。
「まず、エズ!ぼくのこと、何て呼ぶんだっけ?」
「え?あ!ド、ド・・ル」
ニッと笑ってこくんと頷くと、ドレイファスは先を続ける。
「本当は今日はぼくの誕生日じゃないんだ。せっかくみんなが集まるんだから、祝いの振る舞いもやればとお母さまがおっしゃっただけだからね。誕生日が近いから祝いの会やってしまおうということだよ」
「そ、そうなんですか?」
「うん、そうなんですかじゃなくて、そうなの?とかそうなんだ!って言うところじゃないかな?
まあ、だから余計な心配なんかいらないよ、安心して。ここにいるみんな、エズの兄上が無事帰還されたことを何よりもお祝いしたいはずだからね」
その言葉に含まれた優しさは皆に拡がり、沁み込んでいく。
いつか金髪碧眼の美しく心優しい公爵となる姿が、その場にいたすべての者の脳裡に浮かんでいた。
─本当にドレイファスは素直で優しいな。故に心配もある─
そう感じていたのはワルター・サンザルブ侯爵。
─まあそこは、世に長け始めたシエルドが補えるだろうが─
ワルターの自慢の次男坊は、小さな頃からローザリオの弟子となったことで11歳の侯爵令息とは思えないほど市井に通じている。妙に大人びて物事の裏を読み、シニカルで切れ味鋭くツッコんだり嫌味を言ったりするものだから、育て方を間違えたかとときどき少し心配になるほど。
世に圧倒的に少ない錬金術師は派閥関係なく貴族からの依頼が多く、必然として広い人脈を持つようになる。御多分に漏れず、ローザリオも社交界の噂には大変に耳聡い。
ドレイファスが多少世に疎くても、しっかり者のシエルドがノエミとともにそばにいればきっと大丈夫だと、まるで子を見守る親のような目でドレイファスを見つめていた。
「ではここからは親と子に分かれてしばらく歓談を。子らは果実をもらうとよい」
ドリアンの言葉で、参加していた大人たちはメイベルたちも皆応接間に、病み上がりのマイクロスやエーメ、ラライヤはドレイファスたちと食堂に向かった。
「もうお腹いっぱいだけど、まだ何か出てくるの?」
シエルドが腹をぱんぱんと叩くと、剣の稽古に明け暮れるボルドアとトレモルは大食漢の様相を見せる。
「まだまだ全然足りないくらいだよ!」
「うん、あの二倍でも食べられる!」
凄まじい食欲を見せて、ドレイファスをびっくりさせた。
「えっ!トリィいつもご飯足りなかったの?」
「あ、いや、二倍はちょっと大袈裟に言っただけで」
焦って言い訳をしたトレモルにエーメが笑うと、つられて皆で笑いだした。
食堂には離れからボンディが来ていて、すでにレッドメルやペリルがてんこ盛りに積まれている。
「この季節でもまだレッドメルが食べられるのか?さすが公爵家だな」
マイクロスの驚きの声にラライヤが振り返ると。
長い睫毛をふわりふわりとゆっくり瞬きをするマイクロスは、痩せて未だ病み上がりだが、それ故に顔に射し込む影がなんとも大人びて寂しそうで、何故かラライヤは胸がギュッと痛む気がした。
「さあ、マイクロス兄様も座ってください!」
人懐こく、ドレイファスが兄様呼びをすると、シエルドたちもそれに続いて椅子を引いてやったり背中にクッションを入れてやったりと至れり尽くせり。
それを見たラライヤは何故かちょっとムッとして、マイクロスの隣りの椅子を引いて陣取り、積まれた果実を手ずから皿に取り分けてマイクロスに渡してやった。
それを見たルートリアの驚いたこと。
何しろラライヤは、自分はいずれ女侯爵になる身なのだからと貴族の令嬢がやるような、例えば刺繍ですらしないのだ。
家の食堂でだって給仕任せ、ナプキンだって首に巻いてもらうほど。
ラライヤが言うには、それを仕事にする者がいるのだから自分が手を出せば仕事を奪うことになると。
ナプキンを首に巻くくらい、自分でやっても使用人が仕事を失うことなどないと思うが、とにかくラライヤは徹底して使用人がやるべきことには手は出さない性格なのだ。
それなのに!
マイクロスのためにレッドメルを皿に乗せて渡してやるなんて、一体どういうことだろうか?
「ルーティ、どうしたの?」
様子がおかしいことに気づいて、小さな声でドレイファスが訊ねてきたが、ラライヤがいるので何も言えない。
一生懸命に目で合図をして、なんだかわからないけど今はダメということだけ察したドレイファスは、軽く頷いて「あとでね」と離れて行った。
ルートリアはその後もラライヤから目が離せずにいる。
マイクロスの皿が空になりそうになると、さっと次のレッドメルを入れてやって。
口元に果汁が滲み出しているのを見つけると、自分のハンカチを渡していた。
─大変だわ!ララ姉様、熱でもあるのじゃないかしら!─
そう、確かに熱があった。
ルートリアは気づかなかったのだが、噂大好きのボルドアにはわかる特別な熱。
「ラライヤ様ってマイクロス様のことアレなんじゃないか?」
ぐるりと首が回り、ルートリアはボルドアにきゅーっと吸い寄せられるように近寄った。
「ボルディ様、今なんて?」
「うん、ラライヤ様ってマイクロス様が好きなんじゃないかってさ」
「ええっ?何言っているの?今日初めて会ったばかりよ!しかも結構年上ではなくて?」
「そんなの関係ないよ、聞いたことない?一目逢ったその日から恋の花咲くこともあるってやつ」
あまりに驚いたルートリアだが、そう聞いて見てみれば、確かにそのようにしか見えなくなってくるのだから不思議だ。
ラライヤは上目遣いでマイクロスをちらちらと見つめては、頬を赤らめ、時折小さくため息をつく。
─ララ姉様、本当に?─
お開きになるまで、まったくルートリアの視線に気づかずに、マイクロスに世話を焼き続けたラライヤだった。
大人たちはというと。
まず、フォンブランデイル家とサンザルブ家で共同開発したチージュとビネの商品化について、御用達ラベルに紋を入れることを希望するか。もちろん全家が希望したので、その際受け取る利益や出資について話していく。
「実はビネが無ければチージュは作れないのだが、ビネは仕込んでからできるまで時間がかかる。故に、商品化するためにはまずビネをある程度作り貯めてからチージュという流れになるな」
「ちなみにビネはアプルが材料らしいぞ」
ワルターが口を挟む。
「アプル?うちの土地でよく採れるところがある!」
ダルスラ・ロンドリン伯爵が嬉しそうに声をあげ、皆の視線がダルスラに集まる。
「そうか!ではロンドリンから買い付けることにしよう」
領地にアプルの木がたくさんあるのも間違いないが、実はダルスラ自身が持つ山にアプルの木がたくさん自生している。
継続してビネを作るなら、それが安定した収入となりえるとダルスラはもう一歩踏み込んだ。
「あの、ロンドリンにビネの工房を作ると言うのはどうでしょうな?」
「はいっ!」
新参者のメイベルが割り込んで手を挙げた。
「私共のサイルズ領でもアプルが採れますわ、ぜひ幾ばくかでもお買い上げくださいませんでしょうか」
「そうか、メイベルのところも採れたな。他にアプルが採れるところは?」
誰も反応しない。
「ではロンドリンとサイルズで試作をそれぞれ行ってから合同ギルドの工房をどちらか、または双方に作るのはどうだ?」
「なるほど!もちろん私はそれで」
「私もです」
ドリアンが他の者を見回し、異を唱える者がいないことを確認すると頷いて。
「ではまずビネがある程度の量出来上がったら、チージュの工房について改めて相談しよう。ビネの出来や量によってチージュにも影響があるだろうからな」
メイベルは初めて参加したドレイファス団の集まりで成果を得られ、拳を握りしめた。
何しろ、公爵夫妻の次にドレイファスを熱烈に愛しているのは自分とルジーだと自負がある。次期男爵としてドレイファスの役に立てることなら、何でも取り組んでみたいと意気込んでいた。
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