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143 ボンディとルジーと
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一手間かけた新しい干し肉は、食べたみんなに好評だった。
ドレイファスは干し肉を食べ過ぎて夕餉を残してしまったが、特に誰にも見咎められなかった。
「ドル、どうしたの?お腹痛い?」
いや、トレモルは誤魔化されたりしない。
「大丈夫」
トレモルのいないところで食べたものについては、ちょっと言い辛いと思ったドレイファスが言い淀む。
「何、ドル?どうしたの?やっぱりアコピ先生に来てもらった方が」
プリスト・アコピは公爵家お抱えの治療師だ。
アコピを呼ばれたら一発で食べ過ぎがバレる、しかもマーリアルに筒抜けだ!
「いや、本当に大丈夫。庭でトモテラ食べちゃったんだ」
お肉大好きのトレモルには、肉の食べ過ぎとはどうしても言えないドレイファスだった。
「なんだ、そっか。夕餉はちゃんと食べられるくらいにしておきなよ」
お世話係を自認するトレモルは、ドレイファスの身の回りに細かく目を配っている。
ドレイファスの危険に繋がりそうだと思えば、すぐ注意もする。
大好きな親友だけど、ちょっぴり煙たいドレイファスであった。
湯浴みのあと、たぷたぷのお腹を抱えて早めに寝台に潜り込むと、満たされたせいかすぐに眠気に襲われる。
また夢に引き込まれていた。
白い帽子と白衣の人々がなにか作っているようだ!
肉を捌き、何かの液体に漬け込んでいる。
樽に肉がどんどん入れられていくのを見ていると、他の者が奥から樽を持ってくる。
ドスンと樽を置くと、中に手を入れて漬かって色が濃くなった肉を取り出した。
水気を切り、大きく張り出した庇の下に手慣れた速さで吊るしていく。
風に揺らされる様子が、吊るされたスライムを思わせた。
「おはようございます、ドレイファス様」
新しく来た侍女ハーバルに声をかけられて、目が覚める。
─夢・・・どんな夢だったっけ?
思い出そうとするが、ハーバルがやれ顔を洗えとか、髪とかせとかいろいろ言うので集中できない。
「ハーバル、ちょっとだけ黙って待っていて」
頼み込むように言うと、ハーバルは自分の口を押さえた。
「うん、ありがとう」
─何作ってたかな?何かぶら下がってた、ゆらゆら─
肉だ!
そうだ、肉を何かに漬けてから干してた!
どんな液だったかな。
漬け込んでいる液体の中味まではわからなかった。
「ボンディのところに行かなくちゃ」
まずは机に向かい、みた夢について記録するとそのメモを手に離れへ。
「あれ?レイドは?」
「今日はレイドは休みなんだ」
上から声が聞こえた。
「ルジーっ!おはようっ」
レイドたちとも仲よくなった、でもやっぱり護衛はルジーが一番好きなのだ。
うれしくてぴょんぴょんと跳ねてしまうドレイファスの頭を撫でてやるルジー。
ここにメイベルがいたら『尊い』と喜んだことだろう。
「離れに行くだろう?」
「そう、離れなんだけど畑の前にボンディのところに行きたい」
「何か作ってるのか?」
「そう、レイドに聞いてない?」
「引き継ぎには書かれてなかったなあ」
ボンディのところということは食べ物に違いないと、ルジーは久しぶりの護衛で、自分の引きの強さににんまりした。
「何作ってるんだ?」
「んー。まだよくわからないの」
そう、いつもそうだったと己のちっちゃなミスに気づく。
たぶん出来上がってしばらくしないと、名前もつかないのだ。
「干し肉?」
「え?干し肉?変わったものなのか?」
「違うのかな。でもけっこう美味しいよ」
わざわざこの世界にもある干し肉を、ボンディまで一緒になって作るとは思えない。例え干し肉だとしても何か特殊なものに違いないと、ルジーはそのアレンジに興味が湧いた。
「よし、早く行こう」
大股で歩く護衛のルジーに、小走りでついて行く主のドレイファス。普通ならありえないだろうが、ドレイファスはルジーと歩くのが楽しくて、そんなことは気にしない。
「ボンディ!」
ルジーが厨房の外から呼ぶと、鍋とフライ返しを手にしたボンディが顔を出した。
「おお、ルジーじゃないか!久しぶりじゃないか?」
「五日ぶりだよ、それほどでもないだろ」
二人がふふっと笑うと、ドレイファスも交ざろうとつま先立ちであいだに割り込んだ。
「ドレイファス様も、昨日ぶりですね」
ボンディはちゃーんとわかっている、わざわざ大人ふたりの間に立った理由を。
「それで何かまた作ってるんだろう?食べさせてくれよ」
昨日作っておいた燻した干し肉を切って、みんなで食べる。
「なんか色が違、あ、肉が臭くない、うまい!」
「だろ?」
「なるほど、何か仕掛けがあるんだな」
ドレイファスがメモをボンディに差し出した。
すぐに目を通し、あっ!と小さく叫ぶと鍋に水と塩と少しのサトーを入れて、かき混ぜる。
「これでわかったの?」
不思議そうにドレイファスが訊ねると
「んー、絶対ではないけど、これかなってやつです」
いつもの閃きと天才的目分量らしい。
作ったばかりの液を二つに分け、一つには数種類のハーブも混ぜた。
そして干し肉と肉の切り身を漬けていく。
「おい、せっかく干してあるのまでもったいないだろう?」
「ああ、だがこれが一番試すには手っ取り早いんだ。一から干し肉を作るほどの時間は試作ではかけられんからな」
手を休めることなく、ルジーの問いに答えていく。
「どのくらい漬けておけばいいのかな。いくつか時間を変えてみるかな。あ!そうだ、ドレイファス様これから畑に行きますか?」
大切なことを思い出したボンディが、何かを書きとめてドレイファスに渡した。
「これは昨日ミルケラとコバルドにもらった木の名前のはずです。実は木によって香りが違う気がするので、もっといろいろな種類の木くずがほしいんです」
「これと違う木くず頂戴って言えばいいの?」
「これもほしいですが、違うのもほしいんです。届けてくれるように言ってくれますか」
主に使いを頼んでしまうボンディと、お使いを間違いなく果たそうと細かく確認するドレイファスの話が面倒くさくなったルジーが、メモをドレイファスから受け取り、
「じゃあ言っておいてやる」
そう話を終わらせた。
「夕方にはいくつかできているはずだから、またあとで寄ってください」
畑に向かうと、ミルケラがいた。
モリエールのスライム小屋の柱が折れているのを修理中のようだ。
「おはよう」
「ドレイファス様、おはようございます」
「どうしたの、これ?」
傾いたスライム小屋を見上げる。
「夜中にスローバードがぶつかって壊れたんですよ」
畑の作物を狙って下りようとし、誤って群れで激突したらしい。
よく見ると屋根の一部も破損していた。
そしてミルケラの目線の先に、スローバードが数羽横たわっている。
「死んでるの?」
「いや、生きてますよ。気を失ってるだけで」
「そうなんだ!どうするの?」
「まあ、普通なら食べちゃうんですけどね」
簡単に言ったミルケラに、とても大きな声で
「ええっ?」
反応したドレイファスは、決してうれしそうではない。
それを見たミルケラは微笑んで
「大丈夫、あれは食べません。群れで捕獲できるなんて滅多にないことだから羽を切って怪我を直して、鳥小屋で飼おうかと」
「にわとりと一緒に?」
「これからもうひとつ小屋を建てます。スローバードはけっこう獰猛だからニワトリと一緒じゃかわいそうだ」
そこまで聞いて、ようやくほっとした顔を見せた。
「そんな忙しいところ悪いんだが」
ルジーが用件を伝え、ボンディのメモを渡すとちらりと目を走らせて
「なるほど、了解した。午後には持っていけると思うよ」
「じゃあそう伝えておこう」
寄るつもりはなかったが、もう一度ボンディの顔を見てから屋敷に戻ろうと予定を変え、水を撒き終えたドレイファスと厨房へ向かった。
「ボンディ」
「あれ?どうした」
「ミルケラから伝言。午後には持って来られるそうだ」
「ああ、わざわざありがとう」
何かを思い出した顔で、小さな紙包みを手渡してくれる。
「おまえのメイベルちゃんに土産だ」
「あ!メイベル元気にしてる?」
ボンディの土産が呼び水となり、ドレイファスがメイベルを気にし始めた。
「すごく元気だ」
「やめてから一度も会ってないよ。毎日遊びに来てってお願いしたのにぃ」
「ははっ。毎日はちょっと難しいが、余裕が出来たら顔出すように言っておくよ」
艷やかな金髪をもしゃもしゃと撫でくり回したルジーは約束する!と、背が伸びた主に笑いかけた。
ドレイファスがトレモルと学院に行っているあいだに、ミルケラは鳥小屋と木くずを、ボンディは燻した干し肉を作り上げ、主の帰宅を待ち受ける。
いつもならドレイファスとトレモルと護衛で戻ってくるのだが、今日はシエルドとアーサもくっついて来た。
例の新しい干し肉が気になっているシエルドが、公爵家に遊びに行くと言うから。
シエルドがそんなに食べ物に執着することは珍しい。確かに美味いのでよほど食べたいのだなとドレイファスは快諾して、馬車二台連ねて公爵家に戻ってきたのだが。
「この干し肉が、木くずの煙でもくもくされると味が変わるのはなぜ?木くずの種類が変わると匂いや味が変わるの?干し肉に作用しているのは煙だけなの?この煙には何か特別なものがあるの?」
シエルドがボンディを質問攻めにする。
答えきれないボンディは、まずただの干し肉を切ってシエルドに食べるよう勧め、次に燻しただけの初めの頃に作った干し肉二種類を食べさせた。
「味は違うのかな?匂いは間違いなく違うね。美味しくなってる!でも何で?」
ドレイファスは干し肉を食べ過ぎて夕餉を残してしまったが、特に誰にも見咎められなかった。
「ドル、どうしたの?お腹痛い?」
いや、トレモルは誤魔化されたりしない。
「大丈夫」
トレモルのいないところで食べたものについては、ちょっと言い辛いと思ったドレイファスが言い淀む。
「何、ドル?どうしたの?やっぱりアコピ先生に来てもらった方が」
プリスト・アコピは公爵家お抱えの治療師だ。
アコピを呼ばれたら一発で食べ過ぎがバレる、しかもマーリアルに筒抜けだ!
「いや、本当に大丈夫。庭でトモテラ食べちゃったんだ」
お肉大好きのトレモルには、肉の食べ過ぎとはどうしても言えないドレイファスだった。
「なんだ、そっか。夕餉はちゃんと食べられるくらいにしておきなよ」
お世話係を自認するトレモルは、ドレイファスの身の回りに細かく目を配っている。
ドレイファスの危険に繋がりそうだと思えば、すぐ注意もする。
大好きな親友だけど、ちょっぴり煙たいドレイファスであった。
湯浴みのあと、たぷたぷのお腹を抱えて早めに寝台に潜り込むと、満たされたせいかすぐに眠気に襲われる。
また夢に引き込まれていた。
白い帽子と白衣の人々がなにか作っているようだ!
肉を捌き、何かの液体に漬け込んでいる。
樽に肉がどんどん入れられていくのを見ていると、他の者が奥から樽を持ってくる。
ドスンと樽を置くと、中に手を入れて漬かって色が濃くなった肉を取り出した。
水気を切り、大きく張り出した庇の下に手慣れた速さで吊るしていく。
風に揺らされる様子が、吊るされたスライムを思わせた。
「おはようございます、ドレイファス様」
新しく来た侍女ハーバルに声をかけられて、目が覚める。
─夢・・・どんな夢だったっけ?
思い出そうとするが、ハーバルがやれ顔を洗えとか、髪とかせとかいろいろ言うので集中できない。
「ハーバル、ちょっとだけ黙って待っていて」
頼み込むように言うと、ハーバルは自分の口を押さえた。
「うん、ありがとう」
─何作ってたかな?何かぶら下がってた、ゆらゆら─
肉だ!
そうだ、肉を何かに漬けてから干してた!
どんな液だったかな。
漬け込んでいる液体の中味まではわからなかった。
「ボンディのところに行かなくちゃ」
まずは机に向かい、みた夢について記録するとそのメモを手に離れへ。
「あれ?レイドは?」
「今日はレイドは休みなんだ」
上から声が聞こえた。
「ルジーっ!おはようっ」
レイドたちとも仲よくなった、でもやっぱり護衛はルジーが一番好きなのだ。
うれしくてぴょんぴょんと跳ねてしまうドレイファスの頭を撫でてやるルジー。
ここにメイベルがいたら『尊い』と喜んだことだろう。
「離れに行くだろう?」
「そう、離れなんだけど畑の前にボンディのところに行きたい」
「何か作ってるのか?」
「そう、レイドに聞いてない?」
「引き継ぎには書かれてなかったなあ」
ボンディのところということは食べ物に違いないと、ルジーは久しぶりの護衛で、自分の引きの強さににんまりした。
「何作ってるんだ?」
「んー。まだよくわからないの」
そう、いつもそうだったと己のちっちゃなミスに気づく。
たぶん出来上がってしばらくしないと、名前もつかないのだ。
「干し肉?」
「え?干し肉?変わったものなのか?」
「違うのかな。でもけっこう美味しいよ」
わざわざこの世界にもある干し肉を、ボンディまで一緒になって作るとは思えない。例え干し肉だとしても何か特殊なものに違いないと、ルジーはそのアレンジに興味が湧いた。
「よし、早く行こう」
大股で歩く護衛のルジーに、小走りでついて行く主のドレイファス。普通ならありえないだろうが、ドレイファスはルジーと歩くのが楽しくて、そんなことは気にしない。
「ボンディ!」
ルジーが厨房の外から呼ぶと、鍋とフライ返しを手にしたボンディが顔を出した。
「おお、ルジーじゃないか!久しぶりじゃないか?」
「五日ぶりだよ、それほどでもないだろ」
二人がふふっと笑うと、ドレイファスも交ざろうとつま先立ちであいだに割り込んだ。
「ドレイファス様も、昨日ぶりですね」
ボンディはちゃーんとわかっている、わざわざ大人ふたりの間に立った理由を。
「それで何かまた作ってるんだろう?食べさせてくれよ」
昨日作っておいた燻した干し肉を切って、みんなで食べる。
「なんか色が違、あ、肉が臭くない、うまい!」
「だろ?」
「なるほど、何か仕掛けがあるんだな」
ドレイファスがメモをボンディに差し出した。
すぐに目を通し、あっ!と小さく叫ぶと鍋に水と塩と少しのサトーを入れて、かき混ぜる。
「これでわかったの?」
不思議そうにドレイファスが訊ねると
「んー、絶対ではないけど、これかなってやつです」
いつもの閃きと天才的目分量らしい。
作ったばかりの液を二つに分け、一つには数種類のハーブも混ぜた。
そして干し肉と肉の切り身を漬けていく。
「おい、せっかく干してあるのまでもったいないだろう?」
「ああ、だがこれが一番試すには手っ取り早いんだ。一から干し肉を作るほどの時間は試作ではかけられんからな」
手を休めることなく、ルジーの問いに答えていく。
「どのくらい漬けておけばいいのかな。いくつか時間を変えてみるかな。あ!そうだ、ドレイファス様これから畑に行きますか?」
大切なことを思い出したボンディが、何かを書きとめてドレイファスに渡した。
「これは昨日ミルケラとコバルドにもらった木の名前のはずです。実は木によって香りが違う気がするので、もっといろいろな種類の木くずがほしいんです」
「これと違う木くず頂戴って言えばいいの?」
「これもほしいですが、違うのもほしいんです。届けてくれるように言ってくれますか」
主に使いを頼んでしまうボンディと、お使いを間違いなく果たそうと細かく確認するドレイファスの話が面倒くさくなったルジーが、メモをドレイファスから受け取り、
「じゃあ言っておいてやる」
そう話を終わらせた。
「夕方にはいくつかできているはずだから、またあとで寄ってください」
畑に向かうと、ミルケラがいた。
モリエールのスライム小屋の柱が折れているのを修理中のようだ。
「おはよう」
「ドレイファス様、おはようございます」
「どうしたの、これ?」
傾いたスライム小屋を見上げる。
「夜中にスローバードがぶつかって壊れたんですよ」
畑の作物を狙って下りようとし、誤って群れで激突したらしい。
よく見ると屋根の一部も破損していた。
そしてミルケラの目線の先に、スローバードが数羽横たわっている。
「死んでるの?」
「いや、生きてますよ。気を失ってるだけで」
「そうなんだ!どうするの?」
「まあ、普通なら食べちゃうんですけどね」
簡単に言ったミルケラに、とても大きな声で
「ええっ?」
反応したドレイファスは、決してうれしそうではない。
それを見たミルケラは微笑んで
「大丈夫、あれは食べません。群れで捕獲できるなんて滅多にないことだから羽を切って怪我を直して、鳥小屋で飼おうかと」
「にわとりと一緒に?」
「これからもうひとつ小屋を建てます。スローバードはけっこう獰猛だからニワトリと一緒じゃかわいそうだ」
そこまで聞いて、ようやくほっとした顔を見せた。
「そんな忙しいところ悪いんだが」
ルジーが用件を伝え、ボンディのメモを渡すとちらりと目を走らせて
「なるほど、了解した。午後には持っていけると思うよ」
「じゃあそう伝えておこう」
寄るつもりはなかったが、もう一度ボンディの顔を見てから屋敷に戻ろうと予定を変え、水を撒き終えたドレイファスと厨房へ向かった。
「ボンディ」
「あれ?どうした」
「ミルケラから伝言。午後には持って来られるそうだ」
「ああ、わざわざありがとう」
何かを思い出した顔で、小さな紙包みを手渡してくれる。
「おまえのメイベルちゃんに土産だ」
「あ!メイベル元気にしてる?」
ボンディの土産が呼び水となり、ドレイファスがメイベルを気にし始めた。
「すごく元気だ」
「やめてから一度も会ってないよ。毎日遊びに来てってお願いしたのにぃ」
「ははっ。毎日はちょっと難しいが、余裕が出来たら顔出すように言っておくよ」
艷やかな金髪をもしゃもしゃと撫でくり回したルジーは約束する!と、背が伸びた主に笑いかけた。
ドレイファスがトレモルと学院に行っているあいだに、ミルケラは鳥小屋と木くずを、ボンディは燻した干し肉を作り上げ、主の帰宅を待ち受ける。
いつもならドレイファスとトレモルと護衛で戻ってくるのだが、今日はシエルドとアーサもくっついて来た。
例の新しい干し肉が気になっているシエルドが、公爵家に遊びに行くと言うから。
シエルドがそんなに食べ物に執着することは珍しい。確かに美味いのでよほど食べたいのだなとドレイファスは快諾して、馬車二台連ねて公爵家に戻ってきたのだが。
「この干し肉が、木くずの煙でもくもくされると味が変わるのはなぜ?木くずの種類が変わると匂いや味が変わるの?干し肉に作用しているのは煙だけなの?この煙には何か特別なものがあるの?」
シエルドがボンディを質問攻めにする。
答えきれないボンディは、まずただの干し肉を切ってシエルドに食べるよう勧め、次に燻しただけの初めの頃に作った干し肉二種類を食べさせた。
「味は違うのかな?匂いは間違いなく違うね。美味しくなってる!でも何で?」
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