188 / 201
王の施策への反応と対応
しおりを挟む
ズィレンデ・ズィリンダたち褐色肌の村へは私が話をしに行った。
褐色肌の村とベスツァフ達の村は一蓮托生だ。
片方に話が通れば、もう片方もそれに追随するだろう。
村の代表に話をしたい旨を伝えると、結界内に隠れている異形の村民も合わせて話をしたいと言われた。
みなが集まれるように、視覚情報を遮る結界を広い範囲に張る。
代表の呼びかけにぞろぞろと集まってくる村民。
ズィリンダと、ズィレンデは亡くなってしまったが双子の子や孫。
ベスツァフ。
バリエレ。
その他、訪れていない間に産まれたのだろう、新顔の子供もいる。
王の声明やその他行なっている施策について、ある程度の情報は仕入れていたようだ。
人間と魔物の共存を目指すという王の声明。
それを実現すべく作られた新しい町。
諍いを起こさないよう隠れ住んでいた自分たちだが、その必要もなくなるのかもしれない。
好きに町を行き来し、好きに買い物ができる。
そんな暮らしを送れるようになるのかもしれない。
そう小さな希望を抱いたが、かといってどうすればいいのかはわからない。
共存に否定派もまだまだ存在する中で、迂闊に村の存在を明かせはしない。
王に会えるわけもなく、兵士や官吏にさえ話をする機会もない。
そもそも、魔物との共存を目指していても、どちらとも言えない自分たちは共存に含まれないかもしれない。
今までと変わらず隠れ忍ぶ暮らしを、けれどその中で必死に情報収集をしていた。
そんな中でのゲルハルトの訪問だった。
「王が人と魔物の共存を目指して動いてるのはみな知ってるな?半端な見た目の俺らは含まれるのか、どうすればいいのか、みなで話し合ってたな?ゲルハルトから、それに関する話だからな?」
バリエレが集まった村民に口を開き、話す場を私に譲る。
褐色肌の村の代表よりも、バリエレの方が立場が上になるようだ。
なんてくだらないことが頭をよぎりつつ、説明をしていく。
王が声明を出してから今までの流れ。
孤児支援のため全町村に図書館を建てようとしていること。
その際、国所有の地図に漏れがないか調査をし、当然ながらこの村は入っていなかったこと。
「王は全ての町村を対象に施策を広げていきたいと考えている。ここはどうするのかを聞きに来た。王の施策を受け入れ、国の管理下に収まるか。受け入れずに隠れ忍んだままでいるのか」
挙手があり、発言するよう促す。
「俺らも、含まれるのか?“共存”の中に、人とも魔物とも言えない、半端な見た目の俺らも、含まれるのか?」
「ああ。同じような、混ざった見た目の者が普通に暮らせるようにする。それを目的に新しい共存の町を作ったんだ。望むなら、もう隠れ忍ぶ必要などない」
小さく歓声があがる。
外への興味を押し殺していた者も多いのだろう。
王の施策に対して肯定的な反応だ。
「うんうん。反応を見てれば大体わかるけど、決を採るな?」
王の施策に賛成か、否か。
反対者はいなかった。
「というわけだ、ゲルハルト。この結果を王の元に届けてくれるか?」
バリエレの言葉に頷く前に、言葉が挟まる。
「ちょっといいか?新しい町に、我々が移住することはできるのかな」
挙手しつつ問いかけるのはベスツァフだ。
魔法教育を行っていた間、質問は必ず挙手するようにと言っていたのが染みついているようだ。
「可能だ。むしろ歓迎するだろう」
最終的にダモンやジーグが問題なく暮らせるようにするにあたって、仲間が多いことは有利に働く。
人間に近しい見た目だが、一部異なっている体。
自分たちと似ているくせに、混じる異形。
場合によっては、魔物よりも受け入れがたい存在かもしれない。
しかし、人は慣れるものだ。
目に触れる機会が多いほど。
その種類が多いほど。
始めは受け入れがたい存在でも、だんだんと普通になっていく。
移住を拒む理由はない。
「我は移住したい。新しい町は王都に近いんだろ?人で賑わって、物資も豊富で、赤も黄も黒も交じった人が集まった、そんな王都の近くで暮らしてみたい」
物資調達を担って外の村にも出入りしていたベスツァフ。
他の村民よりも、手に入る情報量は多い。
その分外への興味も膨れ上がっていただろう。
共存を目指し、新たな町も作られ、隠れ暮らす必要も薄まった今。
環境を変えたいと思うのも当然だ。
ベスツァフだけでなく、他にも移住を希望する者は多数いた。
その数、村の約半数。
移住するのは構わない。
望むところだが、残った村民の生活が成り立たなくなってしまう。
ならいっそ全員で移住しようという案も出た。
しかし、バウムを一人置いてはおけないという反対意見が出る。
かつてバウムとして喋り動いていた木は、現在守り神のように大事にされていた。
小さく囲いを作り、その木がバウムだと解るようにし、折に触れては水や果物を供える。
バウムとよく話していた者は同じように木に話しかけ、そうでない者も村の安全を感謝する。
そんな風にバウムの木は大事にされていた。
それなのにこの地を離れることはできない。
バウムを一人寂しい思いはさせられない。
全員移住には反対の者がそう述べ、村民全員がバウムのことを慕っていたため反論もでない。
ならばと提案する。
移住したくない者は協力者がいる村に移ればいい。
そこなら比較的近いため、好きにバウムの所まで行ける。
王都から遠い地方の村ではあるが、他所との交流は活発だ。
そこでも十分今以上の豊かな暮らしを期待できる。
協力者がいるため、村にも多少は馴染みやすいだろう。
思いつきで話しているため、後で王に相談しなければならないが。
希望者は新たな町へ移住し、バウムの傍にいたい者は協力者がいる村へ行く。
この案で決着がつき、後日受け入れ態勢を整えてから移住することとなった。
褐色肌の村とベスツァフ達の村は一蓮托生だ。
片方に話が通れば、もう片方もそれに追随するだろう。
村の代表に話をしたい旨を伝えると、結界内に隠れている異形の村民も合わせて話をしたいと言われた。
みなが集まれるように、視覚情報を遮る結界を広い範囲に張る。
代表の呼びかけにぞろぞろと集まってくる村民。
ズィリンダと、ズィレンデは亡くなってしまったが双子の子や孫。
ベスツァフ。
バリエレ。
その他、訪れていない間に産まれたのだろう、新顔の子供もいる。
王の声明やその他行なっている施策について、ある程度の情報は仕入れていたようだ。
人間と魔物の共存を目指すという王の声明。
それを実現すべく作られた新しい町。
諍いを起こさないよう隠れ住んでいた自分たちだが、その必要もなくなるのかもしれない。
好きに町を行き来し、好きに買い物ができる。
そんな暮らしを送れるようになるのかもしれない。
そう小さな希望を抱いたが、かといってどうすればいいのかはわからない。
共存に否定派もまだまだ存在する中で、迂闊に村の存在を明かせはしない。
王に会えるわけもなく、兵士や官吏にさえ話をする機会もない。
そもそも、魔物との共存を目指していても、どちらとも言えない自分たちは共存に含まれないかもしれない。
今までと変わらず隠れ忍ぶ暮らしを、けれどその中で必死に情報収集をしていた。
そんな中でのゲルハルトの訪問だった。
「王が人と魔物の共存を目指して動いてるのはみな知ってるな?半端な見た目の俺らは含まれるのか、どうすればいいのか、みなで話し合ってたな?ゲルハルトから、それに関する話だからな?」
バリエレが集まった村民に口を開き、話す場を私に譲る。
褐色肌の村の代表よりも、バリエレの方が立場が上になるようだ。
なんてくだらないことが頭をよぎりつつ、説明をしていく。
王が声明を出してから今までの流れ。
孤児支援のため全町村に図書館を建てようとしていること。
その際、国所有の地図に漏れがないか調査をし、当然ながらこの村は入っていなかったこと。
「王は全ての町村を対象に施策を広げていきたいと考えている。ここはどうするのかを聞きに来た。王の施策を受け入れ、国の管理下に収まるか。受け入れずに隠れ忍んだままでいるのか」
挙手があり、発言するよう促す。
「俺らも、含まれるのか?“共存”の中に、人とも魔物とも言えない、半端な見た目の俺らも、含まれるのか?」
「ああ。同じような、混ざった見た目の者が普通に暮らせるようにする。それを目的に新しい共存の町を作ったんだ。望むなら、もう隠れ忍ぶ必要などない」
小さく歓声があがる。
外への興味を押し殺していた者も多いのだろう。
王の施策に対して肯定的な反応だ。
「うんうん。反応を見てれば大体わかるけど、決を採るな?」
王の施策に賛成か、否か。
反対者はいなかった。
「というわけだ、ゲルハルト。この結果を王の元に届けてくれるか?」
バリエレの言葉に頷く前に、言葉が挟まる。
「ちょっといいか?新しい町に、我々が移住することはできるのかな」
挙手しつつ問いかけるのはベスツァフだ。
魔法教育を行っていた間、質問は必ず挙手するようにと言っていたのが染みついているようだ。
「可能だ。むしろ歓迎するだろう」
最終的にダモンやジーグが問題なく暮らせるようにするにあたって、仲間が多いことは有利に働く。
人間に近しい見た目だが、一部異なっている体。
自分たちと似ているくせに、混じる異形。
場合によっては、魔物よりも受け入れがたい存在かもしれない。
しかし、人は慣れるものだ。
目に触れる機会が多いほど。
その種類が多いほど。
始めは受け入れがたい存在でも、だんだんと普通になっていく。
移住を拒む理由はない。
「我は移住したい。新しい町は王都に近いんだろ?人で賑わって、物資も豊富で、赤も黄も黒も交じった人が集まった、そんな王都の近くで暮らしてみたい」
物資調達を担って外の村にも出入りしていたベスツァフ。
他の村民よりも、手に入る情報量は多い。
その分外への興味も膨れ上がっていただろう。
共存を目指し、新たな町も作られ、隠れ暮らす必要も薄まった今。
環境を変えたいと思うのも当然だ。
ベスツァフだけでなく、他にも移住を希望する者は多数いた。
その数、村の約半数。
移住するのは構わない。
望むところだが、残った村民の生活が成り立たなくなってしまう。
ならいっそ全員で移住しようという案も出た。
しかし、バウムを一人置いてはおけないという反対意見が出る。
かつてバウムとして喋り動いていた木は、現在守り神のように大事にされていた。
小さく囲いを作り、その木がバウムだと解るようにし、折に触れては水や果物を供える。
バウムとよく話していた者は同じように木に話しかけ、そうでない者も村の安全を感謝する。
そんな風にバウムの木は大事にされていた。
それなのにこの地を離れることはできない。
バウムを一人寂しい思いはさせられない。
全員移住には反対の者がそう述べ、村民全員がバウムのことを慕っていたため反論もでない。
ならばと提案する。
移住したくない者は協力者がいる村に移ればいい。
そこなら比較的近いため、好きにバウムの所まで行ける。
王都から遠い地方の村ではあるが、他所との交流は活発だ。
そこでも十分今以上の豊かな暮らしを期待できる。
協力者がいるため、村にも多少は馴染みやすいだろう。
思いつきで話しているため、後で王に相談しなければならないが。
希望者は新たな町へ移住し、バウムの傍にいたい者は協力者がいる村へ行く。
この案で決着がつき、後日受け入れ態勢を整えてから移住することとなった。
0
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
心を失った彼女は、もう婚約者を見ない
基本二度寝
恋愛
女癖の悪い王太子は呪われた。
寝台から起き上がれず、食事も身体が拒否し、原因不明な状態の心労もあり、やせ細っていった。
「こりゃあすごい」
解呪に呼ばれた魔女は、しゃがれ声で場違いにも感嘆した。
「王族に呪いなんて効かないはずなのにと思ったけれど、これほど大きい呪いは見たことがないよ。どれだけの女の恨みを買ったんだい」
王太子には思い当たる節はない。
相手が勝手に勘違いして想いを寄せられているだけなのに。
「こりゃあ対価は大きいよ?」
金ならいくらでも出すと豪語する国王と、「早く息子を助けて」と喚く王妃。
「なら、その娘の心を対価にどうだい」
魔女はぐるりと部屋を見渡し、壁際に使用人らと共に立たされている王太子の婚約者の令嬢を指差した。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる