不死の魔法使いは鍵をにぎる

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王の施策への反応と対応

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ズィレンデ・ズィリンダたち褐色肌の村へは私が話をしに行った。

褐色肌の村とベスツァフ達の村は一蓮托生だ。
片方に話が通れば、もう片方もそれに追随するだろう。



村の代表に話をしたい旨を伝えると、結界内に隠れている異形の村民も合わせて話をしたいと言われた。
みなが集まれるように、視覚情報を遮る結界を広い範囲に張る。


代表の呼びかけにぞろぞろと集まってくる村民。
ズィリンダと、ズィレンデは亡くなってしまったが双子の子や孫。
ベスツァフ。
バリエレ。
その他、訪れていない間に産まれたのだろう、新顔の子供もいる。





王の声明やその他行なっている施策について、ある程度の情報は仕入れていたようだ。

人間と魔物の共存を目指すという王の声明。
それを実現すべく作られた新しい町。


諍いを起こさないよう隠れ住んでいた自分たちだが、その必要もなくなるのかもしれない。

好きに町を行き来し、好きに買い物ができる。
そんな暮らしを送れるようになるのかもしれない。




そう小さな希望を抱いたが、かといってどうすればいいのかはわからない。
共存に否定派もまだまだ存在する中で、迂闊に村の存在を明かせはしない。
王に会えるわけもなく、兵士や官吏にさえ話をする機会もない。

そもそも、魔物との共存を目指していても、どちらとも言えない自分たちは共存に含まれないかもしれない。


今までと変わらず隠れ忍ぶ暮らしを、けれどその中で必死に情報収集をしていた。
そんな中でのゲルハルトの訪問だった。









「王が人と魔物の共存を目指して動いてるのはみな知ってるな?半端な見た目の俺らは含まれるのか、どうすればいいのか、みなで話し合ってたな?ゲルハルトから、それに関する話だからな?」



バリエレが集まった村民に口を開き、話す場を私に譲る。
褐色肌の村の代表よりも、バリエレの方が立場が上になるようだ。
なんてくだらないことが頭をよぎりつつ、説明をしていく。


王が声明を出してから今までの流れ。
孤児支援のため全町村に図書館を建てようとしていること。
その際、国所有の地図に漏れがないか調査をし、当然ながらこの村は入っていなかったこと。



「王は全ての町村を対象に施策を広げていきたいと考えている。ここはどうするのかを聞きに来た。王の施策を受け入れ、国の管理下に収まるか。受け入れずに隠れ忍んだままでいるのか」


挙手があり、発言するよう促す。


「俺らも、含まれるのか?“共存”の中に、人とも魔物とも言えない、半端な見た目の俺らも、含まれるのか?」

「ああ。同じような、混ざった見た目の者が普通に暮らせるようにする。それを目的に新しい共存の町を作ったんだ。望むなら、もう隠れ忍ぶ必要などない」



小さく歓声があがる。

外への興味を押し殺していた者も多いのだろう。
王の施策に対して肯定的な反応だ。



「うんうん。反応を見てれば大体わかるけど、決を採るな?」


王の施策に賛成か、否か。
反対者はいなかった。



「というわけだ、ゲルハルト。この結果を王の元に届けてくれるか?」


バリエレの言葉に頷く前に、言葉が挟まる。



「ちょっといいか?新しい町に、我々が移住することはできるのかな」



挙手しつつ問いかけるのはベスツァフだ。
魔法教育を行っていた間、質問は必ず挙手するようにと言っていたのが染みついているようだ。









「可能だ。むしろ歓迎するだろう」


最終的にダモンやジーグが問題なく暮らせるようにするにあたって、仲間が多いことは有利に働く。

人間に近しい見た目だが、一部異なっている体。
自分たちと似ているくせに、混じる異形。


場合によっては、魔物よりも受け入れがたい存在かもしれない。
しかし、人は慣れるものだ。

目に触れる機会が多いほど。
その種類が多いほど。


始めは受け入れがたい存在でも、だんだんと普通になっていく。
移住を拒む理由はない。







「我は移住したい。新しい町は王都に近いんだろ?人で賑わって、物資も豊富で、赤も黄も黒も交じった人が集まった、そんな王都の近くで暮らしてみたい」



物資調達を担って外の村にも出入りしていたベスツァフ。
他の村民よりも、手に入る情報量は多い。
その分外への興味も膨れ上がっていただろう。

共存を目指し、新たな町も作られ、隠れ暮らす必要も薄まった今。
環境を変えたいと思うのも当然だ。


ベスツァフだけでなく、他にも移住を希望する者は多数いた。
その数、村の約半数。



移住するのは構わない。
望むところだが、残った村民の生活が成り立たなくなってしまう。

ならいっそ全員で移住しようという案も出た。
しかし、バウムを一人置いてはおけないという反対意見が出る。









かつてバウムとして喋り動いていた木は、現在守り神のように大事にされていた。

小さく囲いを作り、その木がバウムだと解るようにし、折に触れては水や果物を供える。
バウムとよく話していた者は同じように木に話しかけ、そうでない者も村の安全を感謝する。

そんな風にバウムの木は大事にされていた。


それなのにこの地を離れることはできない。
バウムを一人寂しい思いはさせられない。



全員移住には反対の者がそう述べ、村民全員がバウムのことを慕っていたため反論もでない。


ならばと提案する。
移住したくない者は協力者がいる村に移ればいい。

そこなら比較的近いため、好きにバウムの所まで行ける。
王都から遠い地方の村ではあるが、他所との交流は活発だ。
そこでも十分今以上の豊かな暮らしを期待できる。

協力者がいるため、村にも多少は馴染みやすいだろう。
思いつきで話しているため、後で王に相談しなければならないが。



希望者は新たな町へ移住し、バウムの傍にいたい者は協力者がいる村へ行く。
この案で決着がつき、後日受け入れ態勢を整えてから移住することとなった。
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