不死の魔法使いは鍵をにぎる

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一先ずの決定

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マーツェの言葉に、ヘフテも同じ方向へと目標を変える。



「王様のうそを、教える…」

「うん。大事なことだ。呪いを解くにも。仲良くできる場所を探すためにも。…何から取り掛かろうね。ゲルハルトはどう思う?」

「そうだな。まずは王の、王城の情報は必要だろう。王城の書物をばらまくにも、王に声明を出させるにも、王城に入り込む必要がある」

「うん。王都で情報を集めよう。王がどんな人か。王城はどういう空気か。知り合えるといいね。城内で働いてる人とか。その親族とか」







そこまで言って、マーツェの口がふと止まった。




「…親族か。100年ちょっとだっけ?シュワーゼの時から。ギリギリ繋がれるかな。兄さんの子孫とか」

「ああ、ブルデの孫は生きてるかもな。三つ子のうるさいのが爺さんになってるはずだ」

「へえ。孫まで産まれてるんだ。三つ子か。そういう細い糸を辿るべきかな。あの一家なら王城勤務してそうだしね。うん。使わない手はないね」












問題となるのは、ただ情報を流し、王に声明を出させればいいわけではない、という点だ。

人間と魔物の共存を目指す。
最終目標はこれである。

魔法で誓った内容に組み込まれている。


ただ単純に、魔王を生み出したのは王であり、魔物だけに非があるわけではない、と書物をばらまいたところで、人間は信じない。
書物をばらまいた私たちを王への反乱者、魔王の手先として排除にかかるだろう。

それでは新たな火種を生むだけだ。
現在ある溝はさらに深くなる。

誓いに対する内容違反になり、罰が下ってしまう。



知っている歴史は間違っているのかもしれない、という下地をまず作る必要がある。


そのためには何をすればいいのか。











「一朝一夕でできることじゃないし。とにかく必要なのは情報だ。情報収集しつつ考えてこ」




私とマーツェはかつての知り合いの親族との交流を図りつつ、情報を集める。
ヘフテとダモンはその辺の子供らと遊びつつ、聞き耳を立てる。
拠点とする宿屋に集まり、夕餉を取りつつ情報共有と話し合い。


一先ずはそういうことで話がついた。




何日も続けて宿屋に泊まる金は無いため、代わりに技術を提供することになった。
マーツェが交渉した結果である。

夕餉前の時間に、勇者や兵士の怪我を治す。
治療のために人が集まり、併設した食堂が潤うだろうという魂胆だ。

情報集めもついでにできる。



情報収集に関して、ヘフテとダモンにはあまり期待していない。
思惑がばれないように聞き出す技術など、あの年で持ち合わせていないだろう。

とにかく様々な人と仲良くなること。
聞き出す必要はないが、周りで聞こえる話はなるべく聞き、覚えてくること。

それを2人の目標に据えた。


仲良くできる場所を手に入れるために必要なことだと話をした後だ。
ヘフテは張り切っている。






一朝一夕で成し遂げられることではないが、かといっていつまでも時間はかけられない。
マーツェと私はともかく、ヘフテとダモンの時間は有限である。



「実現できるといいね。2人が生きてる間に」



ぼそりと述べたマーツェの言葉に頷きつつ、調査へと出かけた。
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