不死の魔法使いは鍵をにぎる

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突然の提案

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日中はマーツェとともに調査をし、夕方からは魔法教育、そして食事をとりながら翌日の行動について話し合う日々が続く。


魔物は活発化し、少しずつ動きづらくなってきている。
ユーゲンのときのように、マーツェはたびたび魔物退治をしたがり、別行動を取った方が動きやすいのではないかとも思い始めてきた。







そんなある日、魔法養育から戻ると卓を睨むようにじっと考えるマーツェが居た。

マーツェと再会してからは、夕食はマーツェが作ることになっている。
適当に野菜や肉を煮込んだスープであることが多く、特に可もなく不可もない料理。

しかし自分で食材を用意し食事を準備するより当然楽ができるので、マーツェに任せている。


本日も夕食はスープだ。
用意されているスープをよそい、卓につく。





「おかえり。順調か?魔法教育の方は」

「まあまあだな。知識についてはひとしきり教えた。技術は、始めの頃に比べたら進歩しただろう。まだまだ荒いけどな」

「…そう」



マーツェはすでに食べ終えているのか、食事の用意をする気配はなく、座ったまま私を見る。



「なあゲルハルト。魔王討伐しに行かないか?」

「却下だ」



スープを口に運びながら間髪入れずに断る。

様子が少し違うと思ったら、何を言い出すのだか。

一考もせず返答した私に軽くマーツェは眉を寄せ、「まあ想像してたけどさ。その返答」とぼやく。






「私は早く呪いを解きたい。魔王はいようがいなかろうがどうでもいい」

「どっちでもいいなら行こうよ。倒そうよ」

「なぜ私が苦労して倒す必要がある。そのうちどこぞの勇者が倒すだろう」

「それじゃ遅いよ。たくさんの人が亡くなる。たくさんの被害が出る。討伐されるまでに時間がかかりすぎるよ。私たちがいま行けばそれも抑えられる。被害は少なくなるでしょう?」

「死者の数も被害の程度もどうだっていい。人間がどうなろうとしったことか」

「どうしてそんなこと言うんだ?一度魔王を倒してる。死ねない体でもある。私たちは簡単に討伐できるはずだよ。一から勇者を目指す人たちよりも。ずっとね。幸か不幸かわからないけどさ」

「不幸だろう」











やたら食いついてくるマーツェに顔をしかめる。



ユーゲンのときにも似たような言い合いをしたな。
あの時は確か、治癒魔法を施すか否か、だった気がする。

意見が対立したものの、ユーゲンはすぐに引き返した。
治癒魔法を私が施すことはなく、ユーゲンは何か違う話をしていたはずだ。



苛立ちに舌打ちが出そうになる。



「なぜそこまでこだわる。今までは調査最優先で動いてただろう」

「今までとは状況が違うよ。お互いのことをちゃんと把握してる。勇者だったこと。呪われてること。死なないこと。それに今の私はそれなりに戦える。ノーラはてんで駄目。ユーゲンは魔法を使えない。シュワーゼは魔王が居なかった。状況が違うんだ」

「それでも昨日までは口にしなかっただろう」



マーツェの勢いが少し引いた。
悔し気に顔を歪めて、ポツリと言葉を落とす。





「…守れなかったんだ」
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