209 / 212
最終章 望む世界。
魔王。
しおりを挟む
「うなぁぁぁぁおぅぅぅぅぅ!!」
くぅが怒り狂っている声がする。
くぅの怒りによる〈威嚇〉で、世界が震えている。
せっかく、運命神の《ことわり》を燃やしたのに。
魔王と化したくぅが、世界を滅ぼしてしまう。
今のくぅなら世界を燃やし尽くすのに十日もかからないだろう。
ダメだよ、くぅ。
「キ……ング……、〈空間……転、移〉……」
どうにか、声を絞り出す。
息が出来ない。
「にゃう……」
「くぅを……、みん、なを……つれて、いきな……さい……」
どこか遠くに。
猫達が、自由に走り回れる場所に。
あんた達が、望む場所に。
もう、この世界に《ことわり》は存在しないのだから。
「は、や……く……」
ああ、もうダメだ。
何も見えない。
ふっ、と意識が浮上した。
背中に硬いものが当たる感触がした。
これは、床か?
目を開けると、石造りの天井が見えた。
もしかして、女神様の神殿?
キングが連れてきたのか?
「……」
ダメだ。身体中が重くて、胸が苦しい。
痛みは感じないが、起き上がる事ができない。
ぬっ、と福助の顔のドアップが目の前に現れた。
「うわ……っ!?」
ああ、いや、そういう事か。
現在の状況を理解した。
私の胸の上に、福助がどっかりと座って顔をのぞき込んでいるのだ。
首だけを動かして確認すると、右腕はチャビが、左腕はりゅうたろうが、それぞれ枕にして眠っている。
足の上ではせりとキングが丸くなっている。
さっきから髪の毛にイタズラしているのは、多分おこんだろう。
珍しく、よつばも手の届く位置で眠っている。
……動けないわけだ。
トータル何キロだと思っているのよ、あんた達!!
「はいはい、起きて。どいてね」
猫達をどかして起き上がる。
身体に痛みはない。
チャビが〈回復〉させてくれたのか。
死にかけていたはずだがな。
「ありがとう、チャビ」
チャビを撫でると、嬉しそうにごろごろとのどを鳴らしながら頭をこすり付けてきた。
ん? そういや、くぅはどうした?
「にゃお!」
声に振り返ると、何故かくぅが仁王立ちでふんぞり返っていた。
どうした?
よく見ると、くぅは白っぽい人魂のようなものを踏みつけていた。
………………。
あれ、もしかして、それって……。
いや、まさかな。
周りをよく見てみると、見たことのある構造の神殿だった。
ただし、もっとぼろぼろだったはずだが。
中央には、フードをかぶり本を手にした男性の白い像が立っている。
ああ、やっぱり……。
くぅが踏みつけているそれ、運命神なんだな? そうなんだな!?
くぅが怒り狂っている声がする。
くぅの怒りによる〈威嚇〉で、世界が震えている。
せっかく、運命神の《ことわり》を燃やしたのに。
魔王と化したくぅが、世界を滅ぼしてしまう。
今のくぅなら世界を燃やし尽くすのに十日もかからないだろう。
ダメだよ、くぅ。
「キ……ング……、〈空間……転、移〉……」
どうにか、声を絞り出す。
息が出来ない。
「にゃう……」
「くぅを……、みん、なを……つれて、いきな……さい……」
どこか遠くに。
猫達が、自由に走り回れる場所に。
あんた達が、望む場所に。
もう、この世界に《ことわり》は存在しないのだから。
「は、や……く……」
ああ、もうダメだ。
何も見えない。
ふっ、と意識が浮上した。
背中に硬いものが当たる感触がした。
これは、床か?
目を開けると、石造りの天井が見えた。
もしかして、女神様の神殿?
キングが連れてきたのか?
「……」
ダメだ。身体中が重くて、胸が苦しい。
痛みは感じないが、起き上がる事ができない。
ぬっ、と福助の顔のドアップが目の前に現れた。
「うわ……っ!?」
ああ、いや、そういう事か。
現在の状況を理解した。
私の胸の上に、福助がどっかりと座って顔をのぞき込んでいるのだ。
首だけを動かして確認すると、右腕はチャビが、左腕はりゅうたろうが、それぞれ枕にして眠っている。
足の上ではせりとキングが丸くなっている。
さっきから髪の毛にイタズラしているのは、多分おこんだろう。
珍しく、よつばも手の届く位置で眠っている。
……動けないわけだ。
トータル何キロだと思っているのよ、あんた達!!
「はいはい、起きて。どいてね」
猫達をどかして起き上がる。
身体に痛みはない。
チャビが〈回復〉させてくれたのか。
死にかけていたはずだがな。
「ありがとう、チャビ」
チャビを撫でると、嬉しそうにごろごろとのどを鳴らしながら頭をこすり付けてきた。
ん? そういや、くぅはどうした?
「にゃお!」
声に振り返ると、何故かくぅが仁王立ちでふんぞり返っていた。
どうした?
よく見ると、くぅは白っぽい人魂のようなものを踏みつけていた。
………………。
あれ、もしかして、それって……。
いや、まさかな。
周りをよく見てみると、見たことのある構造の神殿だった。
ただし、もっとぼろぼろだったはずだが。
中央には、フードをかぶり本を手にした男性の白い像が立っている。
ああ、やっぱり……。
くぅが踏みつけているそれ、運命神なんだな? そうなんだな!?
178
お気に入りに追加
390
あなたにおすすめの小説

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる