202 / 212
最終章 望む世界。
望みどおりに。
しおりを挟む
キングの〈空間転移〉で森へやってきた。
まだ夕暮れ前で時間がある。
テントを張って、少し休んでおこうかな。
「ん?」
猫達が、目をきらきらさせながら私を見上げていた。
「いいよ、行っておいで」
そう言うと、猫達は我先にと森の中に駆け出していった。
「あんまり遠くまで行かないでよ!」
とは言ったものの、ムダだろうな。
仕方がない。
こういうのは久しぶりだからねぇ……。
まぁ、この森にいる魔物くらいなら私だけでもなんとかなるだろうし。
さて、私もテントの中でゆっくりするとしますか。
コーヒーを淹れ、お気に入りの焼き菓子を用意する。
一口飲んで、息をついた。
コーヒーは、以前女神様が猫達のご飯をあちらの世界から仕入れる時に、おまけとしてくれたものだ。
今は女神様も大変なようだから、猫達のご飯を手に入れてくれるだけでもありがたい。
「…………」
状況が大きく変わった。
国や都市がこぞってドワーフ達の造る武器や魔道具を求め、それが元で大小さまざまなもめ事が起こっているらしい。
サナやナルシはそれに巻き込まれるような形になっていて、今は身動きが出来なくなっている。
エルフは長達の意思により、前と同じように、いや、前よりも他種族との交流をしなくなっていた。
自分達の住む翡翠の森を守る事を最優先とし、遊撃部隊の派遣も見送るようになった。
このままでは、いずれ……。
私は大きく息を吐き出した。
人々は断絶し、やがてゆっくりとこの世界は衰退していくのだろう。
残るのは歯向かう心をへし折られた人々だ。
そして、彼らは「全てを運命だと思って受け入れる」ようになる。
運命神の望みどおりに。
「…………」
むかつく。すっげぇ、むかつく。
何が運命神だ。
単に、世界が自分の思い通りにならないのが気に入らないだけの話だろうが!
ほかの神様達が直接手出しが出来ないのをいいことに、むりやり自分の望みどおりの世界を創ろうとしているのだ。
一人でやってろ、ばか神!
ミーコさんは、運命神の《ことわり》を書きかえる猫を探していて、うちの猫達を見つけた。
「……やってやろうじゃないの」
私と猫達が、運命神の《ことわり》を書きかえてみせる。
運命神の思い通りになんか、させてやるもんか!
まだ夕暮れ前で時間がある。
テントを張って、少し休んでおこうかな。
「ん?」
猫達が、目をきらきらさせながら私を見上げていた。
「いいよ、行っておいで」
そう言うと、猫達は我先にと森の中に駆け出していった。
「あんまり遠くまで行かないでよ!」
とは言ったものの、ムダだろうな。
仕方がない。
こういうのは久しぶりだからねぇ……。
まぁ、この森にいる魔物くらいなら私だけでもなんとかなるだろうし。
さて、私もテントの中でゆっくりするとしますか。
コーヒーを淹れ、お気に入りの焼き菓子を用意する。
一口飲んで、息をついた。
コーヒーは、以前女神様が猫達のご飯をあちらの世界から仕入れる時に、おまけとしてくれたものだ。
今は女神様も大変なようだから、猫達のご飯を手に入れてくれるだけでもありがたい。
「…………」
状況が大きく変わった。
国や都市がこぞってドワーフ達の造る武器や魔道具を求め、それが元で大小さまざまなもめ事が起こっているらしい。
サナやナルシはそれに巻き込まれるような形になっていて、今は身動きが出来なくなっている。
エルフは長達の意思により、前と同じように、いや、前よりも他種族との交流をしなくなっていた。
自分達の住む翡翠の森を守る事を最優先とし、遊撃部隊の派遣も見送るようになった。
このままでは、いずれ……。
私は大きく息を吐き出した。
人々は断絶し、やがてゆっくりとこの世界は衰退していくのだろう。
残るのは歯向かう心をへし折られた人々だ。
そして、彼らは「全てを運命だと思って受け入れる」ようになる。
運命神の望みどおりに。
「…………」
むかつく。すっげぇ、むかつく。
何が運命神だ。
単に、世界が自分の思い通りにならないのが気に入らないだけの話だろうが!
ほかの神様達が直接手出しが出来ないのをいいことに、むりやり自分の望みどおりの世界を創ろうとしているのだ。
一人でやってろ、ばか神!
ミーコさんは、運命神の《ことわり》を書きかえる猫を探していて、うちの猫達を見つけた。
「……やってやろうじゃないの」
私と猫達が、運命神の《ことわり》を書きかえてみせる。
運命神の思い通りになんか、させてやるもんか!
130
お気に入りに追加
390
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】五度の人生を不幸な出来事で幕を閉じた転生少女は、六度目の転生で幸せを掴みたい!
アノマロカリス
ファンタジー
「ノワール・エルティナス! 貴様とは婚約破棄だ!」
ノワール・エルティナス伯爵令嬢は、アクード・ベリヤル第三王子に婚約破棄を言い渡される。
理由を聞いたら、真実の相手は私では無く妹のメルティだという。
すると、アクードの背後からメルティが現れて、アクードに肩を抱かれてメルティが不敵な笑みを浮かべた。
「お姉様ったら可哀想! まぁ、お姉様より私の方が王子に相応しいという事よ!」
ノワールは、アクードの婚約者に相応しくする為に、様々な事を犠牲にして尽くしたというのに、こんな形で裏切られるとは思っていなくて、ショックで立ち崩れていた。
その時、頭の中にビジョンが浮かんできた。
最初の人生では、日本という国で淵東 黒樹(えんどう くろき)という女子高生で、ゲームやアニメ、ファンタジー小説好きなオタクだったが、学校の帰り道にトラックに刎ねられて死んだ人生。
2度目の人生は、異世界に転生して日本の知識を駆使して…魔女となって魔法や薬学を発展させたが、最後は魔女狩りによって命を落とした。
3度目の人生は、王国に使える女騎士だった。
幾度も国を救い、活躍をして行ったが…最後は王族によって魔物侵攻の盾に使われて死亡した。
4度目の人生は、聖女として国を守る為に活動したが…
魔王の供物として生贄にされて命を落とした。
5度目の人生は、城で王族に使えるメイドだった。
炊事・洗濯などを完璧にこなして様々な能力を駆使して、更には貴族の妻に抜擢されそうになったのだが…同期のメイドの嫉妬により捏造の罪をなすりつけられて処刑された。
そして6度目の現在、全ての前世での記憶が甦り…
「そうですか、では婚約破棄を快く受け入れます!」
そう言って、ノワールは城から出て行った。
5度による浮いた話もなく死んでしまった人生…
6度目には絶対に幸せになってみせる!
そう誓って、家に帰ったのだが…?
一応恋愛として話を完結する予定ですが…
作品の内容が、思いっ切りファンタジー路線に行ってしまったので、ジャンルを恋愛からファンタジーに変更します。
今回はHOTランキングは最高9位でした。
皆様、有り難う御座います!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる