199 / 212
第8章 運命神の《ことわり》。
行く末。
しおりを挟む
みんな、しばらくの間は声を出す事も出来なかった。
ここにいるものは、それぞれアレキサンドライトに複雑な感情を抱いている。
サナとナルシの母親は魔導の塔に囚われていた。
エルフ達は、長の娘で「とおみ」の力を持つみうを囚われていた。
私は、猫達の力を狙われていた。
それは魔導の塔の連中がやった事で街の人達は関係ないと、頭では理解している。
だが。
アレキサンドライトに、軽い嫌悪感のようなものを感じていた事は否定できない。
しかし、滅べばいいとまでは思っていなかった。
『猫神が、近くの街のギルドに知らせたそうです』
今頃、各ギルドで連絡を取り合っているだろう。
いずれ起きるかもしれないという不安が、まさに的中してしまったのだ。
複数の大都市や国に同時に黒い霧が発生した場合は対応しきれるのか、という事は盛んに議論されていた事だ。
昨日は、アレキサンドライトと真珠国にほぼ同時に黒い霧が発生した。
「一度、ガーネットに帰る」
ナルシの言葉にサナが頷いた。
「《かあさん》にも、助けてもらった方がよさそうだね」
サナの言う《かあさん》とは、火の神様の事だろう。
「我々も森に帰る」
エルフ達もそう言った。
長達の判断をあおぎたいのだそうだ。
ガーネットと翡翠の森は大丈夫だろう。
けれど、ほかは?
特殊な都市ではあったが、魔法を使った防衛は出来ていたはずのアレキサンドライトが滅んだ。
元々、戦闘に向いていないオパール王国や神聖王国クリスタル、それに学園都市トパーズなどに黒い霧が発生した場合はどうなる?
『つかささんは、どうします?』
一度、クリスタルに戻ってきますか? と女神様が言った。
「……いや、私達はうろうろしてみる」
一人で考えたい事もあるしな。
『分かりました。猫さん達の写真や動画、ちゃんと送ってくださいね?』
無理やり出したような、明るい声で女神様が言う。
「うん、分かった」
女神様も気をつけて、と言って電話を切った。
「じゃあ、いったん解散だね」
槍をかつぎながらサナが笑った。
「みんな、気をつけて」
私の言葉に全員が静かに頷いた。
お稲荷さんが、姿勢を正した。
「皆様の無事を、お祈り申し上げます」
第8章 完
ここにいるものは、それぞれアレキサンドライトに複雑な感情を抱いている。
サナとナルシの母親は魔導の塔に囚われていた。
エルフ達は、長の娘で「とおみ」の力を持つみうを囚われていた。
私は、猫達の力を狙われていた。
それは魔導の塔の連中がやった事で街の人達は関係ないと、頭では理解している。
だが。
アレキサンドライトに、軽い嫌悪感のようなものを感じていた事は否定できない。
しかし、滅べばいいとまでは思っていなかった。
『猫神が、近くの街のギルドに知らせたそうです』
今頃、各ギルドで連絡を取り合っているだろう。
いずれ起きるかもしれないという不安が、まさに的中してしまったのだ。
複数の大都市や国に同時に黒い霧が発生した場合は対応しきれるのか、という事は盛んに議論されていた事だ。
昨日は、アレキサンドライトと真珠国にほぼ同時に黒い霧が発生した。
「一度、ガーネットに帰る」
ナルシの言葉にサナが頷いた。
「《かあさん》にも、助けてもらった方がよさそうだね」
サナの言う《かあさん》とは、火の神様の事だろう。
「我々も森に帰る」
エルフ達もそう言った。
長達の判断をあおぎたいのだそうだ。
ガーネットと翡翠の森は大丈夫だろう。
けれど、ほかは?
特殊な都市ではあったが、魔法を使った防衛は出来ていたはずのアレキサンドライトが滅んだ。
元々、戦闘に向いていないオパール王国や神聖王国クリスタル、それに学園都市トパーズなどに黒い霧が発生した場合はどうなる?
『つかささんは、どうします?』
一度、クリスタルに戻ってきますか? と女神様が言った。
「……いや、私達はうろうろしてみる」
一人で考えたい事もあるしな。
『分かりました。猫さん達の写真や動画、ちゃんと送ってくださいね?』
無理やり出したような、明るい声で女神様が言う。
「うん、分かった」
女神様も気をつけて、と言って電話を切った。
「じゃあ、いったん解散だね」
槍をかつぎながらサナが笑った。
「みんな、気をつけて」
私の言葉に全員が静かに頷いた。
お稲荷さんが、姿勢を正した。
「皆様の無事を、お祈り申し上げます」
第8章 完
115
お気に入りに追加
327
あなたにおすすめの小説
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!
神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話!
『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください!
投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる