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第6章 消えた村。

消えた村。

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 だったら力ずくだ。

「福助、全力で〈風魔法〉!」

「にゃ!」

 吹き飛ばしてやる。

 だが、風で吹き飛ばしたはずの霧は一瞬薄くなるだけで、またすぐに元の状態に戻ってしまう。

「福助、もう一度〈風魔法〉!」

「にゃ!」

「よつば、〈解除〉!」

 霧が薄くなった一瞬に、よつばに指示を出す。
 よつばが前足をちょいちょいと動かすと、霧は薄くなったままの状態をキープした。

「完全には消せないのか……」

 だが、何とか通り抜けられそうだ。

 念のため福助達をキャットハウスに戻し、私は布で口と鼻を覆った。

 霧の中を一気に駆け抜ける。

 霧に触れた瞬間、ねっとりとした嫌な感じがした。
 おぞましいとさえ感じた。

 霧を抜けると、そこはごく普通の光景だった。

 ただ、人の姿だけが見当たらない。

 畑仕事の途中だったのだろうか、農具が乱暴に放り出されている。
 近くの家をのぞくと、切りかけの野菜があり、テーブルには食器が並べられていた。

「せり、〈気配察知〉」

 りゅうたろうにも大きくなってもらい、何かあった時に備える。
 せりはぴくぴくとひげを動かしていたが、やがてしょんぼりとしっぽをたれた。

「誰もいないの?」

 荒らされた様子もない。
 魔物に襲われたわけでもなさそうだ。

 長老の家ものぞいてみよう。
 女神様の加護がある猫の置物は、長老の家にあると聞いている。

 長老の家も、ほかと同じだった。
 荒らされているわけでもなく、ただ、人だけがいない。

 奥の棚の前でせりが立ち止まった。
 とんとん、と地面を叩いて私を振り返る。

「どうしたの?」

 のぞき込むと、粉々になった何かの破片が散らばっていた。

 これ、まさか、猫の置物……?
 そうだとすれば、やはり何かあったのだ。
 女神様に助けを求める間もなく。

 村人は、どこに消えた?

 あの霧は、いったい何だ?

「にゃあ!」

 せりが珍しく大きな声で鳴いた。

 ん?

 せりの前に小さな動物の足跡があった。

 これは、猫の足跡……?

 りゅうたろうは大きくなっているし、見つけたものはせりの足跡よりも小さい。

 この村には家畜の鳥はいても、猫はいなかったはずだ。
 結界があるから動物が迷い込む事もない。

 そして、せりが反応したという事は。

「この足跡が関係ある……?」







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